Vol.051 市民学芸員のフィールドワーク( R5.5.2 文責:本間)

 市民学芸員の皆さんは、博物館を母体に活動し、松本の魅力を発見し学んだり発信したりしています。ここでは、そんな市民学芸員の皆さんのフィールドワークの様子を紹介したいと思います。

 1 旧町名の会(仮題)

旧町名について学び、発信していくために結成された「旧町名の会(仮題)」では、4月1日に常法寺小路・観音小路のフィールドワークを行いました。

 (1)常法寺小路

山伏の寺、常法寺がこの通りの東側下々町の角にあったことに由来する小路です。

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ア 子育地蔵(摂取院跡)

江戸時代中頃、信濃の良寛さんといわれて慕われた、摂取院の和尚さんの徳を偲んで集まった浄財で造られたお地蔵様です。

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イ 宝栄寺

明治7年の大火で本堂は類焼しましたが、城主の信仰が厚く再建されました。明治の廃仏毀釈で廃寺にならずに残った数少ない寺院の一つです。

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(2)観音小路

和泉町から分岐する二つの小路の一つ。和泉町より大安楽寺の観音堂に通じる道であったので、この名称になりました。

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 ア 大安楽寺

真言宗の寺。観音霊場信濃百番。三十三番礼所めぐりの第一番札所となっており、歴代城主の祈願所でした。

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イ 岡宮神社

県下でも有数の歴史を誇る神社。江戸時代には、北深志の総鎮守として松本歴代藩主から信仰されました。

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2 犀川通船の会

山国信州での物資輸送は、中馬などの陸上交通が主でしたが、江戸時代も中頃になると、多量の物資を輸送する通船が登場しました。
犀川通船もその一つです。犀川通船について学び、発信していくために結成された「犀川通船の会」では、4月2日に犀川通船の船着き場をめぐるフィールドワークを実施しました。

 (1) 木戸(安曇野市)

現在の木戸簡易郵便局付近。木戸の船着き場があったと思われます。

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(2)山清路(生坂村)

現在の山清路公園内。 山清路の船着き場があったと思われます。

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3 おわりに

各フィールドワークを実施後、市民学芸員の皆さんから、「楽しかった」「勉強になった」という感想がありました。
フィールドワークを通じて、楽しみながら松本の魅力を発見することができたと思います。
今後は、今回発見した魅力や楽しさを、市民学芸員の皆さんと共に発信していきたいと思っています。

 

Vol.050 身近な自然を訪ねて(R5.4.25 文責:内川)

これまで松本市の自然については分館の山と自然博物館で発信をおこなってきました。リニューアルオープンを契機に総合博物館として、本館でも積極的に取り組んでいきたいと考えています。普段は山と自然博物館のあるアルプス公園の自然を観察し紹介しているのですが、市街地である本館の近くにはどんな生き物がいるのでしょうか。

ある日、博物館の軒下で、大きな昆虫を見つけました。

マダラガガンボ

比較のために十円玉を置いて撮影してみました。

 

これはマダラガガンボ(もしくはその仲間)で、幼虫は水辺の植物の根を食べて育つようです。こんな市街地で見かけるのは意外でしたが、おそらく博物館のすぐ近くを流れる女鳥羽川から飛んできたのでしょう。他にも川辺で見られる昆虫をたくさん見つけることができました。トビケラもカワゲラも幼虫期間を水の中で過ごす昆虫です。

カゲロウの仲間

四柱神社にいたカゲロウの仲間。昆虫の中ではかなり原始的な種類で不完全変態の昆虫です。

トビケラの仲間

旧開智学校跡のサクラの樹にいたトビケラの仲間。カワゲラとは違い幼虫から蛹を経て成虫になる完全変態の昆虫です。

 

 

昆虫がいるということは、それを食べるために野鳥たちも集まってきます。ちょうど子育ての時期ですので、巣を作る姿やエサを集める姿が見られました。

セグロセキレイ

セグロセキレイは珍しい鳥ではありませんが、川辺に依存する鳥です。

セグロセキレイ(ビルの上)

沢山の餌を加えてビルの上へ。付近に巣があるのでしょう。

ハクセキレイ

よく似たハクセキレイは市街地でもよく見られます。

ツバメ

泥がたまった場所でツバメのつがいが巣材を集めていました。

ツバメの巣

すぐ近くで営巣するようです。

川という環境があることで、川独特の生き物同士のつながりが生まれます。それは自然があまり豊かでない市街地でも変わりません。今回はそのつながりに着目して紹介をしましたが、他にも様々な生物を見つけることができました。開館後は博物館を拠点に、このような身近な自然も紹介していければと考えています。

Vol.049 思いを巡らせ、語り合う場所(R5.4.18 文責:宮下)

開館まで半年を切り、新しい博物館では展示をはじめ様々な準備が佳境に入ってきました。各所に必要なものが据えられ、私たち職員も館の姿が実感できるようになってきました。

さて、今回のコラムでは、より具体的になってきた館内から、訪れた人が博物館を通じて体感したことに思いを巡らせたり、誰かと意見を交流できるような場所についてご紹介します。

 1 エントランスホールのベンチシート

建物東側(大名町通り側)の入り口を入ると、建物の1階から3階まで連なる吹き抜けのエントランスホールが広がります。このエントランスホールには、2階へと続く階段がありますが、その片側半分は階段の形を利用したベンチシートになっています。野球場の観客席のように段々になったシートは、ホールに設けられた映像コンテンツを見るのに最適。見上げれば市民と共同で製作したてまりモビールが見えるなど、広々した空間が感じられる場所です。

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2 探求の井戸

3階常設展示室の中程に、「探求の井戸」というコーナーがあります。ここには、古くから松本城下の人々に利用されてきた「源智の井戸」をモチーフとした白い8角形のイスが3基設置されています。観覧者は、展示資料を周りに置くこの井戸の縁へ座り、井戸端会議を楽しむように展示について語り合えます。また、井戸の中には、それぞれメッセージが沈んでおり、ちょっと意外な問いかけがなされています。

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3 一階北側の通路

1階の北側には、市民交流スペースという、ベンチや丸テーブルが据えられた場所があります。講堂の北側にある動線から奥まったところにある通路ですが、スペースの北側のガラス窓は天井まで届き、空の高さが感じられる空間になっています。

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紹介したもののほかに、コラムvol.41で紹介した松本民芸家具のあるドリンクコーナーなど、随所にイスやテーブルが設けられています。館内には、時に一人で、時に誰かと気持ちよく過ごせる場所がきっとあるはず。開館の際には、ぜひお気に入りの場所を探してみてください。

Vol.048 松本城ボールコースター(R5.4.11文責:高木)

新年度が始まりました。10月の新博物館オープンを目指して、引き続きこのコラムを続けていきます。今日はアソビバ!の松本城ボールコースターについてです。

 ボールコースター全体

アソビバ!の西側に、中町の土蔵、馬場家住宅、松本城、旧開智学校校舎という松本の4つの特徴的な建物をモチーフにした造作を設置しました。それぞれの空間が小さな遊び場になっていて、松本城の中はボールコースターになっています。正面の5つの入口に木のボールを入れると、鈴を鳴らしたり、武者走りのような通路を走ったり、階段のシロフォンを鳴らしたりして、最後は石垣のところに落ちてきます。松本城を守るための防御設備だった石落としから石が落ちてくるようなイメージです。ボールを入れてから落ちてくるまで目を離せません。大人でも楽しめるボールコースターです。

このコースターをデザインし、模型を作って検討してくれたのは、てまりモビールのアートプロデュースをしてくれた小松宏誠さんです。てまりモビールでも模型を作って細やかに設計してくれましたが、今回も私たちの想像を上回る、さすが美術家という楽しい、美しい、設計をしてくれました。

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松本城の格子窓をイメージした中央の黒い格子部分は後ろからライトがあたるようになっていて、走り抜けていくボールの影が美しく映り幻想的です。軽やかな音が気持ちいいシロフォンの階段も城内の階段を思わせます。赤い欄干はもちろん月見櫓のイメージです。木のボールを自分だと思って見ると、城内を駆け抜けるサムライになったようでワクワクします

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先日、育休中の職員が、つたい歩きを始めた1歳3か月の男の子を連れて訪ねてきてくれました。ママに抱っこされて入れたボールが、お城の中を転がっていく様子に大喜び。松本城ボールコースターを気に入ってくれた様子です。

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さらに、一番下に設けた入口に自分自身で立ってボールが入れられるとわかると、もう夢中です。しっかりと立って、背伸びして、何度も何度もボールを入れていました。自分でできたという喜びに溢れたその姿に、見ている私たちも感動しました。

博物館がオープンすれば毎日でもこんなシーンに出会えるでしょう。松本城ボールコースターはアソビバ!の人気アイテムになりそうです。

Vol.047 松本山雅FCからグッズを寄贈いただきました(R5.3.31文責:千賀)

松本市をホームタウンとするサッカーJ3の松本山雅FCからグッズを寄贈いただきました。

博物館と松本山雅FCとの連携は今回が初めてです。スポーツをとおして市民を熱くし松本ににぎわいを生み出している松本山雅FCは、今やクラフトや音楽と並ぶ松本の新しい文化となっています。博物館では、歴史や伝統行事だけでなく、今の松本の姿や市民の活動、そして松本の新しい文化も紹介していきたいと考え、松本山雅FCにご相談したところ、グッズを寄贈いただくことになりました。

寄贈式には、地元出身の田中隼磨エグゼクティブアドバイザーに出席いただき、伊佐治裕子教育長から感謝状を贈呈しました。田中さんからは、「小さい頃から博物館には何度も来ていた。博物館がスポーツクラブと連携することはこれまでにない取り組みで非常に楽しみ。利用しやすい施設となっており遠方から知人が来たときはぜひ博物館を案内したい」とのお話がありました。

感謝状 隼磨

今回寄贈いただいたグッズは、開館後に子ども体験ひろばの体験アイテムとして活用させていただく予定です。子ども体験ひろばを視察した田中さんは、てまりのルーツが蹴鞠であることにちなみ、松本てまりでの蹴鞠に挑戦。サッカーボールとは勝手が違うと思いきや、なんなくできてしまうところに元日本代表選手の技術を感じました。「開館した際にはぜひ1日館長として皆さんをお迎えしたい」とありがたいお申し出もいただき、今からとても楽しみです。

蹴鞠

 

隼磨看板

博物館というと、「いつ行っても変わらない」「古いことばかりで面白くない」という方も多いかと思いますが、新しい博物館では、どんどん新しいことに挑戦して従来の博物館のイメージを打ち破りたいと考えています。時には失敗することもあるかもしれませんが、博物館のチャレンジを温かい目で見守っていただけると幸いです。

Vol.046 新博物館が令和5年10月7日にオープンします!(R5.3.28 文責:岡)

「新博物館が令和5年10月7日にオープンします!」
これはこのコラムのタイトルでもありますが、ここ数か月私を悩ませた文章でもあります。今回のコラムでは、この3月に発行された新博物館のオープン告知ポスターについて、その製作過程を少しだけお伝えしたいと思います。

そもそもこのポスターは、「新博物館のオープンを周知すること」を主題に製作が始まりました。ですが、できるだけ新しい博物館に興味を持っていただけるような、魅力のあるポスターにしたいとも考えていました。

そこでまずはデザインの方向性を考えるところから始めました。どうすれば博物館に興味を持ってもらえるか、人目を惹くポスターとは何か、情報の取捨選択をどうすればいいか、そもそも何を見せるべきかなど勘案しつつ、他施設のポスターも参考にしながら、大まかなデザインの方向性を決めるよう心掛けました。また、ポスターの主役には常設展示される資料を据えたいと考えていたので、学芸員とも相談しながら掲載資料を選別しました。

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当初の構想から逸れてしまわないよう意識しながら、
何をどう掲載したらいいのか、おおまかな色味はど
うするか…など、検討します。

次はこの大まかな案をもとに、デザイナーとの打ち合わせをしました。やはりプロの手が入ると、文字の配置ひとつ取っても情報の伝わりやすさが大きく変わっていきます。

デザイナーから受け取ったサンプルは、職員の意見も聞きつつ、実寸大の見本も掲示しながら、文章や色味、写真の位置など、何度も何度も確認し、修正します。

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職員により入れられた校正。このような校正を何度も
繰り返して、完成を目指します。

最初の構想から約2か月の試行錯誤を経て、最終的に完成したものが以下のポスターです。使用されている写真は常設展示室にある城下町ジオラマを、とある角度からカメラマンの方に撮影していただいたものです。このジオラマは城下町を再現しているものとしては日本最大級のもので、実際に見ていただくと、その迫力に圧倒されること間違いなしです。新しい博物館を訪れた際は、このポスターの写真が、ジオラマのどこから何を撮影したものなのか、現在の松本市内のどこにあたって、どんな共通点相違点があるのか、想像しながら見てみると新たな発見があるかもしれません。 

新たな松本市立博物館がオープンするまでいよいよ半年ほどとなりました。現在更新されているこのコラムも含め、博物館の情報を目にして足を運びたいと思った方々のご期待に沿えるよう、身を引き締めて準備をしていきたいと思います。

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ウィンドーギャラリーより ―本藍による型染め 浜染工房―

 新博物館の開館は令和5年10月を予定しておりますが、それまでできる取り組みとしてウィンドーギャラリーの展示に力を入れています。
これまでに「松本まるごと博物館」を構成する松本市立博物館分館の紹介のほか、四賀地区召田薬師堂の仏像、本郷小学校3年2組の皆さんが作ったてまりなどをお借りして展示してきました。
また、多くの職人さんたちから資料・作品をお借りし、松本のものづくりをご紹介しています。

 今回、浜染工房さんから藍染めの作品をお借りしウィンドーギャラリーに展示しましたのでご紹介します。

 浜染工房は明治44年(1911)創業で、現在3代目と4代目が「藍の型染め」の技術を受け継ぎ今に伝えています。
藍染めは飛鳥時代に中国より伝わり、一般的に庶民に親しまれるようになったのは木綿の衣服が普及する江戸時代で、松本でも江戸時代後期に山辺を中心に藍が栽培されていました。当時は絞り染めが特産物であったようです。
明治時代後期以降の化学染料の普及もあり、現在では高度な技術を要する型染め職人はわずかしかいません。

細かい文様が彫り込まれた渋紙の型紙。昔は型紙を彫る専門職人がいましたが、今は濱さんが彫っています。

細かい文様が彫り込まれた渋紙の型紙。昔は型紙を彫る専門職人がいましたが、今は濱さんが彫っています。



 
染め方により様々な青を表現することができます。 藍には虫・ヘビ除けの効果があります。

染め方により様々な青を表現することができます。
藍には虫・ヘビ除けの効果があります。



 

 藍染めの染料である蒅(すくも)は「生きている」ため、温度を一定に保ったり攪拌したり毎日の手入れが必要です。手入れの仕方により発色が変わってしまうと濱さんに伺いました。

 
藍甕には藍の発酵による「藍の華」が咲きます。

藍甕には藍の発酵による「藍の華」が咲きます。

 今回お借りしたものの中には鹿革を藍染めしたゾウのキーホルダーとペンケースがあります。近年、県内・市内でもニホンジカによる被害が増え、捕獲されるシカが毎年一定数います。ジビエとしてだけでなく革も有効利用できないかとの思いから、現在は試作段階ですが新たな作品が生み出されています。

 藍による繊細な濃淡は、甕覗き、水色、浅葱色、縹(はなだ)色、紺、褐(かち)色、茄子紺など四十八色とも表現されます。古くから日本人に愛され、明治時代には「ジャパン・ブルー」として外国人を魅了しました。

 浜染工房では新しい感性で時代に合った作品を作り出しながら、藍の型染めの伝統を守り続けています。

「浜染工房」「藍のかおり工房」にて。 藍染めは時を経るごとに青に深みが出てきます。

「浜染工房」「藍のかおり工房」にて。
藍染めは時を経るごとに青に深みが出てきます。



 
ウィンドーギャラリーの藍染め作品を ぜひご覧ください。

ウィンドーギャラリーの藍染め作品を
ぜひご覧ください。



 

Vol.045 多くの人がつながる博物館 (R5.3.20 文責:福沢)

新しい松本市立博物館は、来館者が利用しやすく、特に市民にとって身近に感じられる博物館を目指しています。

多くの市民が関わることができる博物館であることが、「市民が身近に感じる博物館」のひとつではないかと考えています。そのため、博物館建設工事中や展示製作業務中から建設工事現場の親子見学会や、松本てまりプロジェクトなどの事業を実施し、施設の整備段階から市民に関わっていただくことを大切に考えてきました。

また、施設整備事業でも、市内の業者、ものづくりに携わる職人や技術者、アーティストといった皆さんが参画することを大事にしてきました。

建物の建設工事中には施工業者の協力により、漫画家の高橋ヒロシさん、エッセイスト・漫画家の鈴木ともこさんのイラストで仮囲いアートとして飾ることができました。

展示製作ではイラストレーターで絵本作家・野外技術研究家のスズキサトルさんや、イラストレーターの古荘風穂さんに松本を紹介する展示や子ども向け展示室の壁面グラフィックや体験アイテムの制作に携わっていただきました。

スズキサトルさんに松本の魅力を詰め込んだイラストを描いていただきました。

映像コンテンツにはHAPPY DAYZ PRODUCTIONSの映像家 井上卓郎さんに参加いただき、多くの市民の皆さんに撮影にご協力いただきました。

てまりモビールはワークショップ参加の市民の皆さんや信州大学の学生、市内で活躍する作家が作ったてまりを、戦後の民芸運動に礎がある柳沢木工所が制作した木工フレームに乗せることで完成しました。

また、松本の特徴の一つである木工芸に触れてほしいと思い、子ども向け展示室にはグレイン・ノートの木工家の皆さんの子ども椅子を、1階のカフェコーナーには松本民芸家具を設置しています。

井上卓郎さんには様々な松本の姿、松本の美しさを発信する映像を制作していただきました。

子どもの時から松本の木工芸に触れてほしいため、グレイン・ノートの5名の木工家の椅子を揃えました。

博物館は学びの場です。

ただ展示を観るだけでなく、市民・来館者の皆さんには「参加」「体験」「ともに活動する」といった博物館に関わっていただくことを通して学ぶことができる博物館でありたいと考えます。

今までの博物館整備事業にも多くの方に関わっていただきましたが、これからもさらに多くの方がつながる博物館として開館できるように、10月に向けて準備を加速させていきます。

Vol.044 学都松本フォーラム2023に参加しました (R5.3.14 文責:吉澤)

松本市は開智学校などに代表されるように、古くから学問を大切にする街であることから「学都」と呼ばれています。この「学都」にちなみ、松本市では市民の学びの場を広げる「学都松本フォーラム」を毎年開催しています。今回で第10回を迎えるフォーラムに、松本市立博物館から3つの講座を担当させていただきました。

 七夕人形作りワークショップ(2月26日(日)開催)

松本地域では、家ごとに人形を飾る伝統的な七夕行事が現在でも見られます。今回は、松本の七夕について学びながら、その伝統文化の特徴である「七夕人形」を折り紙で作りました。

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当日はたくさんのご家族に来ていただきました。子どもたちの活発に楽しんで取り組む姿が印象的でした。

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講座では、市民学芸員さんに講師を務めていただきました。松本の七夕は月遅れの8月7日に行われることや、彦星・織姫のほかに「カータリ」の人形を飾ることなど、地元の年中行事の特徴を分かりやすく解説してくれました。市民から市民へ、学びの輪が広がり、とても可愛らしい七夕人形ができました。今年の七夕で飾ってもらえると嬉しいですね!
このような講座を通して、松本の魅力的な伝統文化に触れるきっかけづくりができればと思います。

ぶらり松本~城下町編~(2月26日(日)開催)

松本の城下町は、清らかな水がいたるところから湧き出しています。今回のまち歩きでは、そんな「松本の湧き水」をテーマに松本城・城下町の成り立ちを解説しました。

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講師は「ブラタモリ」でお馴染みの学芸員です。番組で紹介しきれなかったイチ推しスポットも案内させていただきました。収録時の裏話に皆さん興味津々です。

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江戸時代に描かれた松本城下絵図と見比べながら、現在の松本市街地を巡りました。千歳橋から縄手通りに繋がるこの場所にはかつて松本城の大手門があり、まさに城の玄関口でした。

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松本の湧き水は、城郭の堀などの防衛設備だけでなく、城下町でも生活用水や醸造にも利用されました。水と松本の切り離せない関係性について学ぶまち歩きになりました。

 なつかし写真deまちあるき(3月4日(土)開催)

松本市立博物館は写真資料も多く所蔵しています。今回のまち歩きでは、明治から昭和にかけて撮られた写真をたどりながら松本市街を巡り、街の歴史を振り返りました。

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目の前の景色と昔の写真を見比べながら、街並みの変化を感じていただきました。こちらは昭和52年の六九商店街入口の写真です。参加者の方々から「懐かしい!」の声があがりました。

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四柱神社の入口に掛かっている「御幸橋」は明治13年の明治天皇御巡幸にあわせて創建されました。橋にも「明治十三年」の文字が刻まれています。ぜひ探してみてください!

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街並みの変化を通じて、松本の歴史を身近に感じていただけたら幸いです。写真当時の街並みを知る参加者の方々からも様々なお話を聞かせていただき、職員も大変勉強になりました。

Vol.043 ウィンドーギャラリー借用展示品紹介(R5.3.7 文責:本間)

ウィンドーギャラリーでは、さまざまな逸品を借用して展示しています。
ここでは、どのようなものを展示しているのか紹介していきたいと思います。

 1 真田十勇士 (伊藤 叡香 氏)

伊藤叡香氏の和紙人形制作は、「綺麗な千代紙や染め紙などを、素材としてどうしたら活用できるか」という思いから始められました。毎年新しいテーマで人形を制作しており、「紙舘 島勇」でも展示を行っています。現在展示している紙人形は、NHK新大型時代劇「真田太平記」を題材に制作されたもので、真田十勇士を威風堂々表現した大作です。

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2 松本押絵雛・松本姉様人形(べラミ人形店)

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・松本押絵雛
べラミ人形店では、昔の松本押絵雛をもとにして復活させた制作技法を用いて押絵雛を作り続けています。

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押絵雛写真パネル

押絵雛写真パネル

・松本姉様人形
女の子の遊び道具として紙や布で作られた「姉様人形」は、日本髪の美しさを見せるため後姿を正面にしています。地域ごとにさまざまな姉様人形がありますが、松本の姉様人形は、前掛けをしているのが特徴です。

松本姉様人形

松本姉様人形

後ろ姿

後ろ姿

前

3 木工芸品(有限会社 柳沢木工所)

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・信州紬ストラップ付 からまつネームホルダー
と金具は使用せず、ネームホルダー本体には「信州からまつ材」、ストラップ部分には「信州紬(伊那紬)」と「絹糸」を使用しています。ネームホルダー本体は、名刺入れとしても活用可能です。第38回長野県伝統工芸品展 第1回新作展で特別賞を受賞しました。

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・ 林音ーRinneー
木製スマホスピーカーに、木曽漆器の塗りたて技法による仕上げを施しています。木の種類によって音の大きさが変わります。木製・軽量・手のひらサイズなので持ち運びに便利であり、スマホスタンドとしても使用できます。

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・どこでもハンドル
当時3歳だった乗り物大好きな息子さんの、「ぼくも運転がしたい!だからハンドル作って!」という一言で誕生したものです。これさえあれば、どこでも運転手に大変身できます。
「グッドデザイン」「グッド・トイ」賞を受賞しました。

 

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・東大寺あんどん
木工家・黒田辰秋氏が東大寺にある照明器具をアレンジして電気スタンドにしたものが元になっています。

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・椅子
信州のからまつで作った椅子です。カルカヤの草の根を水にさらした後に、干してから束ねた道具である「浮き造り」を用いて、木材の表面をこすって仕上げています。
浮き造り仕上げをすると、木目による陰影が強調され、木の表情が豊かになります。見た目が美しく仕上がるのが特徴です。

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4 野溝ほうき(關 正幸 氏)

芳川地区の住民有志らでつくる団体「芳川地域づくり協力隊」が、地元の伝統産業の「野溝ほうき」を編む作業に励んでいます。本年度は、材料となる植物の栽培に初めて挑戦し、種まきや草刈り、穂の収穫や乾燥も手掛けました。

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ウィンドーギャラリーを、多くの皆さんにご利用いただきたいと思っています。
松本の逸品をお持ちの皆様、ぜひ博物館までお声かけください!