Vol.062 常設展目玉資料!初市の宝船 ( R5.7.18 文責:原澤 )
今回は、新博物館の常設展示の目玉資料の一つである、初市の宝船を紹介します。宝船については、当連載コラムの中でも何回か紹介してきていますが(Vol.015 市民公開による文化財修復 (2021.09.24 更新)、Vol.029 職人の心意気(2022.8.5更新))、ここでは、初市の宝船の歴史に触れつつ、修復され新たな装いになった宝船について紹介します。
さて、この宝船ですが、今でも城下町で続けられている「あめ市※」の際に、本町5丁目が明治時代から昭和初期にかけて町に飾ったものです。全長5メートル、高さ4メートル、幅2メートルの大きさを誇る豪華な宝船と七福神人形は、平成5年(1993)に松本市立博物館に寄贈され、長く商都松本の象徴として常設展示室で展示されてきました。
※あめ市の名称は、時代により「初市」とも呼ばれた。資料名は使用された当時の祭りの呼び方である「初市」を使っている。
宝船は、初市の神輿行列の際に本町5丁目の練り物として江戸時代後期に造営されました。その後幕末の火災で焼失し、明治時代中期に再建されました。明治時代には、高さ約2メートル程の櫓に上に飾り、初市のなかでもひときわ目を引く飾り物だったとされています。
今回の宝船の修復は、作られた当時の状態にできるだけ近づけようとの考えから、船体の漆塗りもきれいに塗りなおしていただき、帆や旗、七福神人形は現存する資料をもとに、新たなものを制作してもらいました。帆柱は、以前の博物館の常設展示では天井の高さが足りなかったため、短いものと交換し展示していましたが、新しい博物館の常設展示では元々使われていた帆柱を使い展示できるようになりました。当時の初市の際に飾られていたきらびやかで迫力のある姿を再現できていると思います。
開館した際にはぜひ注目して見ていただき、当時の商都松本のにぎわいを感じてもらいたいと思います。