Vol.070 展示資料の背景( R5.9.12文責:内川 )

常設展示室の「ともにある山」のコーナーには美ヶ原の鉄平石が展示されています。

鉄平石

溶岩が冷え固まる際に板のように割れたもの(板状節理)です。

溶岩が固まったものということは、当然その昔火山の噴火があったということです。かつて日本列島を二つに分けていたフォッサマグナで知られるように、松本市周辺はその昔海でした。そして、クジラの化石が発掘された四賀周辺の地質は海底に泥や砂が堆積してできたものですが、美ヶ原周辺の地質はそれらに加えて海底火山の噴出物が堆積したものです。美ヶ原・四賀地質図

ただし、美ヶ原上部の地質や鉄平石はこの時できたものではありません。今から200万年ほど前に地上で噴火した溶岩が冷え固まったものです。

  …なんて話は展示室ではいっさい解説されていません。

「ともにある山」のテーマのとおり、私たち人が、この板状の形の岩を屋根材として利用していたということが書かれています。この他にも北アルプスの山々やそこから流れ出る梓川にも壮大な大地の歴史があり、そうやって形作られた自然があるからこそ我々人の営みがあります。しかしながら、スペースやテーマなどが限られる中、そういった話を全て解説するという訳にはいかず、展示を作成する難しさを感じます。

ほかの資料についても、展示では詳しい背景が語り切れません。そういった内容については、このコラムような別媒体や展示替えで発信していければと思います。