生き物の写真を募集します!
松本市立博物館では令和6年7月より、松本市に生息している様々な生き物をテーマとした企画展を予定しています。
そこで、市民の皆さんに、松本市内で見つけた生き物の写真を募集します。昆虫や花、鳥など、どんな生き物でも結構です。撮影機材や時期も問いません。「意外なところでこんな生き物を見つけた」「気になる生き物がいた」など、松本市内で見つけたいろんな生き物の写真を下記申込みフォームからお送りください。
ご応募された写真は夏期企画展で使用させていただきます。たくさんのご応募をお待ちしております。
諸注意
・ペットや園芸植物などの写真はご遠慮ください。
・展示への使用の際にサイズ変更・トリミング等の編集をさせていただく場合があります。
・場合によっては写真の展示を見送らせていただく場合があります。
応募フォーム(4月1日より)
https://logoform.jp/form/N7tm/520517
Vol.84 浮世絵展関連事業を終えて part2 ( R6.3. 14 文責:小林 )
松本市立博物館開館記念特別展第2弾「至極の大衆文化 浮世絵 ―酒井コレクション―」は3月3日(日)をもって開催を終了しました。多くの皆さまにご来館いただきありがとうございました。
今回は、特別展の後期展示期間中(2月10日~3月3日)に開催しましたいくつかの関連事業の様子をお伝えします。
1 浮世絵の摺り体験講座【令和6年2月10日(土)午後1時30分~4時30分、2月11日(日)午前9時~正午・午後1時30分~4時30分、2月12日(月・祝)午前9時~正午・午後12時45分~3時10分】
現代の浮世絵彫り師としてご活躍されている朝香元晴氏を講師にお迎えして、浮世絵の摺り作業を体験していただく講座を開催しました。
講座の前半は、朝香氏に浮世絵の彫り(1ミリに3〜4本有る美人画の髪の毛の生え際の彫り)作業を実演いただき、至極の彫り技術に皆さん息をのんで見入っているご様子でした。博物館に展示されている浮世絵を鑑賞しただけでは気づくことができない彫りの精巧さ、繊細さを感じることができる時間になったかと思います。
講座の中盤から、いよいよ摺り作業を体験していただきました。今回は、一般的な浮世絵のサイズ(大錦判)ではなく、ポストカード大(小判)の版木を使い、摺り作業を行いました。伝統的な木版画の摺り作業と同様に、刷毛で顔料をつけ、和紙を版木に載せ、馬連で擦って色を摺り込んでいきます。とても難しい作業に、はじめは皆さんも悪戦苦闘していましたが、次第にコツをつかみ、きれいな浮世絵が完成しました。体験してみてこそ、浮世絵を作り上げる楽しさやたいへんさが感じられたかと思います。
今回の講座が、伝統的な浮世絵木版画に興味を持ち、後世へと継承していく一助になれば嬉しいです。
2 親子で楽しむ版画講座【令和6年2月18日(日)午後2時~4時】
版画家の田嶋健氏を講師にお迎えして、親子で版画を楽しむ講座を開催しました。今回は、田嶋氏が考案された修正液を使って手軽に制作できる版画を体験していただきました。冒頭に田嶋氏からレクチャーをしていただき、インクや版画用のプレス機を駆使して版画を作り上げていきます。皆さん思い思いの色を使って、自主的に制作されている姿が印象的でした。親子で版画という文化に親しんでいただくきっかけになったと思います。
3 浮世絵信州名所めぐり旅【令和6年2月25日(日)午前9時~午後4時30分】
江戸時代の終わりに流行した「浮世絵風景画」に描かれる長野県内の名所古跡を訪れ、浮世絵や長野の魅力を知っていただく講座を開催しました。当日は朝から雪が舞い開催が危ぶまれましたが、幸い雪が強まることなく、予定通り実施することができました。
講座の最初は、明治時代の錦絵や新版画と通称される昭和時代の浮世絵に描かれる松本城周辺を散策しました。当時と現在の松本市街を見比べ、考察することで、街並みや人々の営みの移り変わりを見ることができたと思います。
松本市街の散策が終わり、市のバスに乗車して、一路長和町へと向かいました。バスの出発後は、浮世絵の概要をはじめ、道中の名所などのバスガイドをさせていただきました。バスガイドは私自身もはじめての経験でとても緊張しましたが、参加者の皆さんがあたたかく聞いてくださったおかげで、リラックスして楽しくお話することができました。
およそ1時間の乗車で、長和町に到着しました。長和町には、中山道の宿場のひとつ、長窪宿(長久保宿)と和田宿があり、いずれも歌川広重・渓斎英泉が描いた浮世絵のシリーズ作品「木曽街道六拾九次之内」に描かれています。「長和の里歴史館」を訪れ、学芸員の方から長和町の歴史や長窪宿・和田宿のお話をしていただきました。また、滅多に見ることができないバックヤード・収蔵庫も見学させていただき、参加者の皆さんだけでなく、私たち博物館職員も興味津々でした。長和の里歴史館を出て、バス内で「木曽街道六拾九次之内 長久保」の説明をし、道の駅「マルメロの駅ながと」でお昼休憩を取りました。
午後のはじめは、和田峠を越え、先述の「木曽街道六拾九次之内」に描かれる下諏訪宿(正しくは下之諏訪宿)にある「宿場街道資料館」を訪れました。職員さんから色々なお話を伺い、下諏訪宿をはじめ、諏訪地域のことについて学びを深める時間になりました。
下諏訪町を出発し、今回の名所めぐり旅の最後に、葛飾北斎が「冨嶽三十六景 信州諏訪湖」を描いたとされる場所を訪れました。諸説があり、実際にその場所で描いたと断定することはできませんが、皆さん葛飾北斎に思いを馳せながら見学されているご様子でした。悪天候による視界の悪さで諏訪湖をきれいに眺めることはできませんでしたが、実際にその場所を訪れることなく、イマジネーションを働かせて風景を描くことが多かった浮世絵師の気持ちを感じていただく機会になったと思います。
今回の講座をとおして、本を読むだけでは学ぶことができない奥深い知識を得ることができ、学芸員としても貴重な経験になりました。悪天候の中、大勢の皆さんにご参加いただきありがとうございました。
Vol.83 浮世絵展関連事業を終えてpart1 R6.2.27 (文責:小林)
現在、松本市立博物館では開館記念特別展第2弾として、「至極の大衆文化 浮世絵 ―酒井コレクション―」を開催中です。会期は、3月3日(日)までとなっておりますので、この機会にぜひご覧ください。
さて、本展では浮世絵が庶民に親しまれた大衆文化であったことを体験していただくため、ワークショップや講演会などの関連事業を開催しました。今回は、前期展示期間中(1月13日~2月4日)に開催したいくつかの関連事業の様子をお伝えします。
1 遊ぶ浮世絵体験「浮世絵で遊ぼう!」【令和6年1月14日(日)午後2時~午後4時】
浮世絵は、大人だけではなく、子どもたちの間でも楽しまれていました。創意工夫を凝らした数々の「遊べる浮世絵」の内、今回は元祖ペーパークラフトとも言える「立版古(たてばんこ)」を体験していただきました。「立版古」とは、描かれた人や自然万物を切り取り、組み立てて遊ぶ浮世絵です。この講座では、日本浮世絵博物館所蔵の「和田合戦とうろふ」という作品をコピーしたものを使用しました。
まずは、鎌倉時代の和田合戦で活躍した武士たちや背景の木々をパーツごとに切り取っていきます。これが一番難しい工程ですが、参加された皆さんの集中力と器用さは圧巻で、正確に、素早く切り取っていく姿が印象的でした。
続いて、それぞれのパーツを自立させるためのベースを作りました。上手く自立させるため、パネルや厚紙の切れ端を駆使して、それぞれのパーツに合ったベースに仕上げていきます。
最後に、背景の木々と合戦の主人公となる武士たちを思い思いに並べていきます。博物館職員が製作した見本を参考にして作る方もいれば、1対複数人の合戦場面を作る方もおり、参加された皆さんの個性が出ていて、とても楽しかったです。
「立版古」の体験を通して、浮世絵の大衆性の一端に、少しでも触れていただく機会になったかと思います。厚紙に自分の好きな絵を描き、切り取って遊べば、現代版の「立版古」を作ることができますので、ご自宅でトライしてみてはいかがでしょうか。
2 和紙の「行燈(あんどん)」作り講座【令和6年1月20日(土)午前9時~正午】
松本市地球温暖化防止市民ネットワーク(通称:エコネットまつもと)の皆さまを講師にお招きして、浮世絵にも描かれることが多い「行燈」作りを通して、環境や浮世絵について学ぶ体験講座を開催しました。冒頭に地球温暖化と浮世絵について勉強した後、落ち葉を使って好きな模様にデザインしたり、可愛らしい絵をあしらって、夜の風情を演出する「行燈」を作り上げました。参加された皆さんが製作された「行燈」は、1月26日(金)午後5時~8時に開催された「博物館のキャンドルナイト」にて展示され、松本市街の夜を照らしました。寒空の中、多くの方々にご来館いただきありがとうございました。
3 講演会「浮世絵の魅力と楽しみ方」【令和6年1月21日(日)午後1時30分~3時】
本展覧会で特別協力をいただきました日本浮世絵博物館で学芸員を務める五味あずさ氏を講師にお招きして、浮世絵鑑賞における楽しみ方を中心に、講演をしていただきました。日本浮世絵博物館や同館が所蔵する酒井コレクションについての概要にはじまり、浮世絵木版画、版本、肉筆画という浮世絵の形態や作品それぞれの鑑賞方法、楽しみ方など様々な視点でお話がありました。講演会を通して、浮世絵への興味関心が高まり、一層楽しく鑑賞できる機会になったことと存じます。会場を埋めつくすたくさんの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
4 ワークショップ「浮世絵の絵本を作ろう!」【令和6年1月28日(日)午前9時~11時】
松本市在住で、絵本作家・イラストレーターとしてご活躍されている、まつしたさゆり氏を講師にお招きし、浮世絵風の絵本を作りました。浮世絵は、江戸時代初期、版本(絵入りの本)に描かれた挿絵が、一枚絵として独立し、成立したと言われています。その点で、絵本と浮世絵の関係を切り離すことができません。今回の講座は、現在多くの人々に愛されている絵本の制作を通して、大衆文化・浮世絵の親しみやすさを感じていただける時間になったと思います。
滅多に聞くことができないプロの絵本作家さんのデザインや技法のお話に、参加された皆さんも聞き入っていらっしゃる様子でした。講師の先生が浮世絵に描かれる遊女や歌舞伎役者をもとに描いた線画に、みな思い思いの色を塗り、空いたページに絵本の物語を書いていきます。カラフルな色画用紙とマスキングテープで製本し、素敵な絵本が完成しました。最後に、講師の先生から参加された皆さんの作品を一点ずつご講評いただきました。一人一人の柔軟な発想による絵本の数々を読みながら、みなの笑顔があふれる素晴らしいひと時でした。
5 浮世絵メイク講座【令和6年1月28日(日)・2月4日(日)午前10時~午後6時】
特別展チケットの半券を、ナワテ通り商店街にある「和装いろは」に持っていくと、浮世絵に描かれる遊女の和風メイクを体験できるという講座を行いました。具体的には、浮世絵美人画の顔出しパネルで写真を撮ったり遊女風の着物を着たり、メイクを体験していただきました。自分が美人画のモデルになることで、当時の浮世絵師に思いを巡らす機会になったと思います。今回体験していただいたような当時の髪型、メイクが反映された浮世絵美人画が、現在の日本のファッション誌に影響を与えている部分もあるかもしれません。
6 江戸のおもちゃ作り講座【令和6年2月4日(日)午後1時30分~4時30分】
和紙の「行燈」作り講座と同じく、エコネットまつもとの皆さまを講師にお招きして、江戸時代に親しまれたおもちゃを作りながら、環境や浮世絵について学ぶ講座を開催しました。地球温暖化や江戸時代のエコについてのお話を聞いた後、「極楽とんぼ」「からくり屏風」「立体知恵の輪」を製作しました。工作と遊びの体験を通して、楽しく勉強する機会になりました。
以上、特別展の関連事業開催の模様をお伝えしました。次回も、「関連事業を終えてpart2」として、後期展示期間中(2月10日~3月3日)に開催した関連講座の様子をお届けします。
令和6年度企画展「収蔵品展 戸田家臣団―松本藩最後の武士団―」
当館移転後初となる収蔵品展です。150年以上にわたり松本藩を支え続けた戸田家臣団の軌跡とともに、当館自慢の資料をぜひご覧ください。
会期
令和6年4月20日(土)~6月17日(月)
閉室日・毎週火曜日
会場
松本市立博物館 2階特別展示室
開館時間
午前9時~午後5時
(入館は午後4時30分まで)
観覧料
大人
1,000円(800円)
大学生・市内在住の70歳以上の方
700円(600円)
高校生以下
無料
※()内は団体20名以上の料金
※本展観覧券で3階常設展もご覧いただけます。
展覧会概要
昨年10月に移転した松本市立博物館が建つ松本城三の丸は、かつて松本藩主に仕えた武士たちが暮らした「武家地」にあたります。
江戸時代、松本藩の陰には国や藩主を支える家臣たちがいました。当館では、最も長く松本藩主をつとめた大名・戸田家のほか、その家臣たちに由来する資料を多く収蔵しています。
本展では当館収蔵資料を中心に、松本藩主・戸田家に仕えた個性的な家臣たちが「家臣団」として1つにまとまり、主君とともに激動の時代を生きた姿を紹介します。
第1章 引っ越し大名戸田家
戸田家は全国でも指折りの転封回数を誇る「引っ越し大名」でした。転封により、各地から家臣が登用され、戸田家臣団が形成されました。
第2章 戸田家臣団
戸田家に仕えた家臣たちは、実にバラエティに富んでいます。彼らは、それぞれの役割や特徴を持ちながらも、主君を支える「家臣団」として組織的にまとまりました。
第3章 発掘調査で見る家臣の暮らし
近年、市街地の開発に伴う発掘調査によって、松本城三の丸の武家地の様子が明らかになりつつあります。三の丸各地で行われた発掘成果から、家臣たちの息遣いが現代によみがえります。
第4章 激動の幕末
江戸時代末期、慌ただしい社会情勢に翻弄され、戸田家臣たちも各地の警固や戦闘に駆り出されました。戸田家臣団が直面した幕末・維新の動乱の軌跡をたどります。
第5章 その後の家臣
廃藩置県によって戸田家による松本統治が終わりを迎え、家臣たちもそれぞれの場所で新たな生活を送りました。彼らの想いや営みが後世の私たちにもたらしたものに迫ります。
関連イベント
記念講演会「松本藩主の謎と真実―松平丹波守を知っていますか―」
講師 山本英二氏(信州大学人文学部教授)
日時 5月18日(土)午後1時30分~3時
会場 松本市立博物館 講堂
定員 80名
料金 無料
申込み LoGoフォーム(下記URL)より5月12日(日)までにお申込みください。
https://logoform.jp/form/N7tm/511521
※申込み多数の場合は抽選となります。
抽選となった場合の可否は13日(月)までにメールにてお知らせします。
武家地散策「家臣たちが暮らした場所」
内容 企画展担当学芸員によるまち歩き講座を行います。
日時 ①5月25日(土)午前10時~正午
②5月26日(日)午前10時~正午
場所 松本市立博物館 ポケットパークにて集合・解散
定員 各回10名
料金 無料
持ち物 飲み物、動きやすい服装
申込み LoGoフォーム(下記URL)より5月19日(日)までにお申込みください。
https://logoform.jp/form/N7tm/512150
※申込み多数の場合は抽選となります。
抽選となった場合の可否は20日(月)までにメールにてお知らせします。
甲冑着付け体験
日時 ①4月27日(土)~29日(月)
午前10時~午後3時
②5月3日(金)~6日(月)
午前10時~午後3時
会場 松本市立博物館 交流学習室
料金 無料
申込み 不要
ギャラリートーク
日時 ①4月20日(土)午後2時~3時
②5月11日(土)午後2時~3時
③6月16日(日)午後2時~3時
料金 観覧料
申込み 不要
お問い合わせ
松本市立博物館
TEL 0263-32-0133
FAX 0263-32-8974
Vol.082 浮世絵展 展示作品紹介 ( R6.2.9 文責:本間)
現在、松本市立博物館では開館記念第2弾特別展として、「至極の大衆文化 浮世絵 ―酒井コレクション―」を開催中です。
本展覧会は3月3日(日)まで開催します。
現代では国内外で芸術して高く評価されている浮世絵。しかし、江戸時代には大衆文化として多くの庶民に親しまれていました。そのため、可愛らしくて面白く、親しみやすいものが描かれています。
江戸時代の人々と同じ目線から見ることで、浮世絵の魅力を再認識して欲しいと思い、「大衆文化」というテーマで展示を企画しました。
展示作品は、日本浮世絵博物館(松本市島立)の「酒井コレクション」を借用しました。これは、日本三大浮世絵コレクションの一つといわれる貴重なものです。
ここでは、展示資料の一部を紹介します。
1 東洲斎写楽「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」
三代目大谷鬼次演じる江戸兵衛が、前のめりの姿勢で見栄を切る場面。写楽の作品の中でも、よく知られています。皆さんも見たことがあるのではないでしょうか。
2月19日までの展示ですので、お早めにお越しください!
2 歌川国芳「桜下衝立に倚る美人図」
2月21日以降に展示する、歌川国芳の肉筆画です。肉筆画とは絵師が直筆で描いた1点ものであり、希少価値が高い作品です。
3 月岡芳年「猫鼠合戦」
猫と鼠の対決を合戦に見立てたシリーズのうちの一図。
上図では、鼠が犬張り子に乗って猫と戦います。猫は犬が苦手で、恐れている様相が見受けられます。下図では、猫の仕掛けにかかってしまった鼠たちの様子が分かります。(3月3日まで展示予定)
4 歌川芳藤「小猫をあつめ大猫とする」
「寄せ絵」と呼ばれる作品。大勢の猫が集まって、一匹の猫を形成しています。
本作品以外にも、寄せ絵を何点か展示中です。ぜひお越しいただき、現物をご覧ください。
(3月3日まで展示予定)
ここで紹介したのはほんの一部であり、面白くて可愛らしい作品を多数展示しています。
皆様のご来館をお待ちしております!
Vol.081 浮世絵の体験コーナーあります ( R6.01.23 文責:前田 )
当館ではただいま新館オープン記念第2弾の特別展「至極の大衆文化 浮世絵 ―酒井コレクション―」を絶賛開催中です。松本市島立にある日本浮世絵博物館が所蔵する酒井コレクションの中から、前・後期あわせておよそ90点の浮世絵が新博物館でご覧いただけます。だれしも一度は目にしたことのある葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」といった超有名作品はもちろん、一流浮世絵師によるこの世に一点しかない貴重な肉筆画も展示しています。さらに今回の特別展は、担当学芸員が浮世絵にまつわる楽しい体験イベントをたくさん企画しました。詳しくはこちらをご覧ください。
既にお知らせしているこれらの関連事業のほかに、消しゴムはんこを使って多色摺りが体験できるコーナーも設けました。これは、色ごとに作った版にスタンプパッドで色をのせ、一枚の紙に摺り重ねることでカラフルな絵に仕上げるという、浮世絵木版画の技法を簡単に再現するものです。
|
今回消しゴムはんこのモチーフとしたのは、前期出展作品となる歌川国芳「流行猫の曲鞠」の一部で、花を生けながら鞠を操る猫のワンカットです。いつも子猫2、3匹を懐に抱きいれていたという大の猫好きだった浮世絵師の国芳。こちらの作品も、擬人化させた猫の曲芸をする絶妙なポージングが、ポップな着物の柄や背景の黄色と相まって、なんとも魅力的な作品です。
消しゴムはんこ初心者の私がおそれ多いことですが、こちらの国芳の猫を体験用版画にすべく、版の制作に取りかかりました。まずは画像からトレースして、消しゴムの版に写し、あとは彫刻刀で線の部分を残すように、線のきわや余白部分を彫っていきます。この彫りの作業、浮世絵の世界では分業になっていて「彫師」という職人が担当しました。本来の木製の板と比べると消しゴムは柔らかいのでサクサク彫ることはできるのですが、ネコのひげや花びらといった細かい部分では技量がないため非常に苦戦しました。本物の作品はどうなっているのかと改めてよく見ると、ネコのひげは毛先にいくほどに細くなっており、花弁も一枚いちまいハッキリと表されています。しかもこれを硬い木の板上に彫リ出すなんて!職人の技巧にしばしば感嘆の声をあげながら、ようやく完成することができました。
案の定、消しゴム版に残されたひげはずいぶんさみしい数となり、全体的にだいぶ簡略化されておりますが、ご来館の折には体験コーナーで色を重ねて楽しんでいただけると嬉しいです。
|
|
ところで皆さんは浮世絵作品のどんなところに注目してご覧になりますか?描かれている題材や大胆な構図に魅かれたり、作品がうまれた時代背景に興味のある方もいらっしゃるでしょう。私の場合、作品のやや斜め横から観察し、木版画ならではの紙の凹凸や着色具合などに目を凝らします。すると仕上げの段階を担った職人「摺師」の意図が探れる角度がきっとあります。色がないのに紙に模様を浮き出させる「空摺り」や、きらきらとした雲母(きら)摺りなどの技法を見つけると、時空を超えて職人たちと会話をしているようで楽しいものです。展覧会に足を運び、実作品を間近で見ないと味わえない醍醐味の一つかもしれません。
この冬は博物館での特別な体験をとおして、浮世絵の世界にどっぷり浸ってみるのはいかがでしょうか。
参考文献 : 『江戸猫 浮世絵 猫づくし』 稲垣進一・悳俊彦 著/東京書籍 発行
Vol.080 今週末はあめ市です ( R.6.1.11 文責:吉澤)
新松本市立博物館では、開館後初の年明けを迎えました。
本年もたくさんの来館者の方々にお会いできることを心待ちにしております。
さて、今週末の1月13日(土)・14日(日)は新春の松本を彩る行事、あめ市が開催されます。
江戸時代のあめ市は、1月10日・11日の初市にあわせて天神(現在の深志神社)の境内にまつられている市神様を町に迎え、今年の商売繁盛を祈りながら、人々に塩を売るお祭りでした。当時の賑わいが伺える資料に、『善行寺道名所図会』という江戸時代のガイドブックがあります。本町の初市を表した絵図には、通りを埋め尽くすほどの人が描かれています。
お祭りの賑わいにあわせ、町の商店では大売り出しを行い、多くのあめ屋も通りに出店を構えて、
あめを販売しました。その様子から「あめ市」と呼ばれるようになったと言われています。松本市立博物館では、3階常設展示室にて松本のあめ市に関連する資料をご覧いただけます。
常設展示の目玉のひとつである宝船は、松本城下町の本町5丁目の町人たちがあめ市のみこし行列の練り物として造営し、江戸時代後期から昭和初期まで使われました。新博物館での展示に合わせ、明治時代に再建された宝船本体を修復し、七福神人形と帆の複製品を制作しています。
また、常設展示室前の広場では、1月28日(日)まで時計博物館からの出張パネル展示「あめ市のいまむかし」を開催しております。あめ市にお越しの際は、ぜひ松本市立博物館にもお立ち寄りいただき、あめ市の歴史もお楽しみください!
Vol.079 松本のお年取り準備 ( R.5.12.27 文責:武井)
いよいよ年の瀬が迫ってきました。
2023年最後のコラムである今回は、松本のお年取り準備に関する年中行事を、『松本市史』を中心に見ていきたいと思います。
1 松迎え
12月に入ると、正月を迎えるための準備が始まります。そのうち最初の行事が松迎えです。松迎えは、正月に飾る松を切り出したり買い求めたりする行事です。
かつては12月13日に行われていた行事ですが、近年では少し後ろ倒しになり、年末までに迎える家が多かったようです。山が近いところでは28日か30日に山へ入り松を切り出しました。
一方、山が近くにないマチ部では、縄手などに露店が出たり、山辺方面から松を売りに来る人がおり、そこで松を買い求めたといいます。近年は松を売り出すスーパー等も登場し、重宝されたようです。ちなみに、今年も縄手通りには松や注連縄を売る露店が軒を連ねていました。
こうして迎えた松は、28日か30日に飾られました。29日や31日に松に飾るのは縁起が悪いとされました。飾る場所は、玄関、床の間、便所、神棚、仏壇、勝手、土蔵、蚕室、馬小屋、井戸などが一般的だったようです。
この松は正月の神に供える縁起ものであると同時に、正月の神の依代とも考えられました。そのため、松迎えは神迎えでもある、という説もあります。
飾られた松は小正月のころに外され、三九郎で焼かれます。
2 ススハライ・ススハキ
いわゆる大掃除のことで、松迎えが済んだ後に行われました。
かつては多くの家に囲炉裏があったため、家の大掃除=煤払いでしたが、現在では煤を払うという意識は薄れています。
こちらも古くは12月13日に行われていましたが、生活様式の変化等の影響を受け、年末あたりに実施されることが多くなっています。
12月13日は正月準備開始の日であるとともに、1年の厄をはらう祓いの日であったとされ、ススハライも単なる大掃除でなく、かつては神聖な行事の一つであったといわれています。
3 餅つき
餅は重要な年中行事や人生儀礼に欠かせない食べ物で、もちろん正月にも欠かすことができません。
29日はクモチといって、「苦が重なる」ので、餅をつくには縁起が悪いとされ、28日か30日に行われました。一方で、「苦をつき抜く」とか「フク(二九)餅」などといって、あえて29日につく家もあったようです。
現代では、餅屋に頼んで餅をついてもらう「賃餅」や、スーパー等で既製品を購入する家庭も増えていますが、家族や親戚一同で集まり餅をつくのが恒例行事だという方も多いのではないでしょうか。
数多くある年末年始の年中行事の中から、『松本市史』で取り上げられている3つを紹介しました。現代では、独自のイベントを行う家があったり、仕事があるので何もしないという家もあるでしょう。
このように人々の暮らしが多様化している現代だからこそ、過去の暮らしの中で育まれてきた年中行事を振り返り、過去から現代、未来へと連綿と続く人の営みに思いを馳せるのも楽しいですよ。
それではよいお年をお迎えください!
松本市立博物館臨時開館のお知らせ
1 日時
令和6年1月1日(祝) 午前10時~午後3時
2 開館箇所
1階(子ども向け展示室を除く。)
※2階・3階の展示室等は、ご覧いただけません。
3 開館内容
⑴ フリースペースの一般利用
⑵ 売店・カフェを営業します。
4 その他
⑴ 講堂等の予約による貸室利用は行いません。
⑵ 隣接する東洋計器大手門駐車場(市営駐車場)は1月1日閉場しています。自動車でお越しの際は近隣のコインパーキング等をご利用ください。
「松本城野鳥観察会」開催のお知らせ
松本市立博物館では「松本城野鳥観察会」を開催します。
日 時 令和6年2月10日(土)午前9時30分~午前11時00分
場 所 松本市立博物館・松本城公園(集合:松本市立博物館講堂)
講 師 松本市立博物館職員
内 容 松本城の堀で見られるカモの仲間を中心に松本城で見られる野鳥についての講義のあと、
実際にお城の周りを回りながら野鳥を観察する、初心者向けの観察会です。
参加料 無料
持ち物 野外を歩きやすい服装、筆記用具、雨具、帽子、あれば双眼鏡など
定 員 15名(応募多数の場合抽選になります)
申込み 令和6年1月6日(土)9時からこちらの申込フォームより