Vol.105 重要文化財馬場家住宅の紹介(その1) ( R7.3.7 文責:石井)
馬場家住宅は、松本市内田地区のほぼ中央に位置し、標高約690m、眼下に松本平が広がり、北アルプスを遠望する立地にあります。屋敷は四方を道路・水路で区切られ、敷地は全体で約12,300㎡です。
平成の保存修理工事に先立つ史料整理で発見された明治28年(1895)の家相図に基づき、工事では明治28年時点の時代設定で復元されました。
![]() 家相図 |
![]() 家相図に基ずく配置図 |
屋敷は敷地の西側を通る旧道に面しており、この旧道から後退して表門・門長屋を構え、両脇に塀が延びています。宅地西側を除く三方は土塁により囲まれています。表門を入ると、正面に主屋、右に中門・塀、左に旧灰部屋が前庭を囲んでいます。主屋の北側には旧ひきや部屋があり、主屋の南側は庭園となっています。主屋背後に文庫蔵、さらに後方に隠居屋・奥蔵があり、隠居屋南側の一番高いところに茶室があります。
これらの建物群を取り巻く形で、ケヤキほかの大樹によって屋敷林が形成され、遠方からも屋敷の輪郭を伺うことができます。なお、屋敷の北西にある祝殿境内にあるケヤキは「内田のケヤキ」として松本市特別天然記念物に指定されています。
今回は、主屋を紹介します。
![]() 主屋正面
|
桁行18.8m、梁間16.4m、一部二階、切妻造、妻入、鉄板葺(元は板葺)です。旧小屋部材にある墨書から、嘉永4年(1851)の再建と判明しています。
妻を正面に向け、妻の壁に格子窓をつけ、棟に「雀おどし」と呼ばれる棟飾りつけるなど、県内西南部地域にみられる「本棟造り」の典型例です。
本棟造りの特徴を3点あげると、板葺きであること、妻(写真で見える屋根の下の三角形の部分)を見せる切妻造であること、妻のある方に入口があることです。
間取りは中央に広いオエ、その上手にカミオエ、これらの手前に接客空間であるゲンカン・ザシキ、ザシキの前方にカミセッチン、ユドノが張り出す構成です。幕末~近代の松本平の本棟造りに共通する間取りとなっています。
![]() |
この図は、痕跡調査などに基づく間取りの変遷です。
イロリは当初オエにありましたが、明治14年頃にカッテの板の間が増築され、そこに設置されました。
ナガシが増築されたり、ウマヤがなくなったりとその時々の必要により改築が繰り返されてきたことが分かっています。
オエ:家族や近所の人たちが囲炉裏の周りを囲んで話をしたり、食事をしたところ
カミオエ:普段使う座敷
ザシキ:婚礼や法事の時にしか使わない本座敷
コザシキ:主人の居間
イリカワ:畳敷きの縁側。板敷きはロウカと呼び区別される
(その2)では表門や門長屋を紹介予定です。
※図はすべて『松本市重要文化財馬場家住宅第Ⅰ期修理工事報告書』(松本市教育委員会、平成8年)
より引用
(その2)では表門や門長屋を紹介予定です。
※図はすべて『松本市重要文化財馬場家住宅第Ⅰ期修理工事報告書』(松本市教育委員会、平成8年)より引用