Vol.007 縁の下の力持ちは美しい。(R3.4.12 文責:三木)

 いつもは「建設地の様子から」で工事現場についてご覧いただいていますが、今回は展示コラムに出張し、建築工事の様子を紹介してみたいと思います。
 新博物館は『鉄筋コンクリート』の建物ですが、『鉄筋』は完成すれば隠れてしまう事から、一般の方が普段目にすることはないと思います。そこで今回は、建物を中から支える『鉄筋』に焦点をあててみました。

 基礎施工
 建物基礎の鉄筋を組み立てている様子です。鉄筋の太さの違いに注意しながら、設計図通りに組み立てるのはまさに職人技。
 水道や空調の管が通るための穴の位置も、この時点で正確に設置しなければなりません。

 基礎職人
 鉄筋の一本の長さは、運搬の都合上長くても5mほどですが、博物館の基礎はもっと長いので、鉄筋をつなげて一本化します。
 専用のガスバーナーで鉄筋を1,000℃以上に加熱し、一体化します。専門用語で『ガス圧接』と言います。

 基礎施完成
 建物基礎鉄筋が組みあがった状態です。見えなくなるのが残念なほどの出来栄えです。
 この後、型枠を組み上げコンクリートを流し込み『鉄筋コンクリート』の基礎となっていきます。 

 この工事現場では、鉄筋工事以外にも1年間で延べ7,000人以上の職人さんが活躍されています。今後も工事のいろいろな様子をお知らせしますので、お楽しみに!

Vol.006 人の思いを共有する(R3.4.2 文責:堀井)

 松本市立博物館は移転新築のため、3月31日をもって閉館(一時休館)しました。Vol.000のコラムでは、この地での歩みを振り返るミニパネル展示を紹介しました。どんな「思い出の花」が咲いたのでしょうか。

パネル展終了時の全景 満開!!

パネル展終了時の全景 満開!!

 

 多くの皆様の協力で、日々進化する展示が実現できました。ありがとうございました。実はこのインスタレーション、新博物館の常設展示に取り入れるための実験的な取組みでした。
 その名は「ユアオピニオン」。博物館の展示を「館から来館者へ」の一方向のものから、「来館者から館へ」「来館者から来館者へ」という、双方向・交流に発展させていくことを目的にしたものです。
 今回のパネル展の成果を踏まえ、新博物館の展示をより良いものにしていきます!

 

Vol.005 本物に触れる(R3.3.24 文責:千賀)

手押しポンプ

 

放水実験

放水

 旧梓村(梓川地区)で明治33年(1900)から使用された消防ポンプ。手押しのポンプを台車に載せて火災現場に向かう、100年前の消防車です。新博物館の展示資料調査として、5月の新型コロナ対策の臨時休館期間に実物を使って放水実験をしました。台車からポンプを降ろし、ホースをつなぎ、水を入れてレバーを押すと勢いよく水が噴射し、実験は大成功でした。
 しかし、準備から放水までに30分もかかり、4人の男性職員でもあっという間に体力がなくなり、レバーを押し続けることができませんでした。これが木造住宅の多い当時の火災現場だったらと思うと…。当時の消防組員の技術と体力の高さを改めて実感しました。
 貴重な資料を適切に保管することは重要ですが、それと同じくらい、「本物」に触れることで資料の構造や昔の人の暮らしぶりを体感することも大切です。新博物館では、資料を展示するだけでなく、イベント等で「本物」に触れる体験をしてもらいたいと考えていますので、お楽しみに!

 

Vol.004 レトロ玩具「すごろく」(R3.3.16 文責:高木)

 新しい博物館では「あそびはまなび」というコンセプトで、博物館でしかできないこどもの体験ひろばを設けます。体験を通して、こどもたちが楽しい時間を過ごすことはもちろん、保護者にとっても発見の喜びが共有できる、そんなモノを探しています。そこで、まず、昔の玩具に焦点をあててみました。今回は双六(すごろく)について紹介します。

商売繁栄双六

 この双六は昭和12年に「信濃日報社」が制作した「商売繁栄双六」です。現在でも続く松本の老舗の商店名が読み取れますので探してみてください。双六には遊びながら物の名前を覚えるという教育的側面がありましたが、こんな風に宣伝としても使われていたことがわかり、当時の風俗を語る歴史資料ともなっています。

すごろく年中行事
すごろく 乗り物

 他に「幼年行事双六」「乗り物双六」などが体験アイテムの候補にあがっています。
 双六は明治後半より、少年少女雑誌の正月号の定番となり普及していきました。「振り出し」から「上がり」まで、サイコロを振って駒を進める単純な遊びが、お正月という、家族の時間の一コマを作っていたのかもしれません。それももう、昭和のノスタルジーでしょうか。新博物館の展示製作はひとつひとつしっかりと駒を進めているところです。

 

Vol.003 新博物館の常設展示室の構成について(R3.3.10 文責:福沢)

 今回は、新博物館の常設展示の構成についてご紹介します。
 皆さんも博物館に行かれたときに、旧石器時代や縄文時代から江戸時代または現代まで、古い時代から順番に地域の歴史を見ていく展示をご覧になったことがあるかと思います。
 新博物館では、時代順の展示方法ではなくテーマごとの展示で皆さんをご案内します。
 松本には多様な文化・自然遺産があり、これらを大切に守ってきた人々もまた松本の特徴です。松本の多様な魅力を知るための8つのテーマにより、皆さんに様々な視点から松本を知っていただく展示構成となっています。

常設展示室のテーマ展示のイメージ図

常設展示室のテーマ展示のイメージ図

 一部をご紹介しますと、松本のシンボルの一つ松本城。そして江戸時代から商業の中心地であり、今のまちにもつながる商都松本。美ケ原や上高地に代表される自然豊かな山々。などの松本を知るうえで重要なポイントからテーマを設定しています。

松本を知るために松本城も雄大な山々も欠かせない ポイントです

松本を知るために松本城も雄大な山々も欠かせない
ポイントです

 どのテーマに一番興味をもっていただけるかは、ご覧いただく皆さんそれぞれですが、テーマごとに担当する学芸員の特徴が出てきていますので、楽しみにしていてください。

 

Vol.002 博物館基幹博物館建設担当のご紹介(R3.3.1 文責:堀井)

 今回は、どんな人たちが、新しい博物館をつくっているのかをご紹介します。
 令和2年度は、博物館の中に新しい博物館をつくるための担当が置かれ、職員7名が配置されています。課長、係長(1級建築士の技術者)、事務職員と、学芸員が4名です。

日常の一コマ。

日常の一コマ。

 それぞれ、建築工事の監理や来館者が使う備品の検討などを行って、新しい博物館の姿を具体化する仕事をしています。
 学芸員はというと、新しい博物館の展示をどうするかを日々検討し、展示製作業務の受注者と協議をしながら、展示製作の細部を詰めています。

展示に導入するコンテンツ・アイテム一つひとつを検証し、改善していきます。

展示コンテンツ・アイテムを一つずつ検証、改善します。

 学芸員4名それぞれ特徴があり、「現実派」「感覚派」「理念派」「熟考派」と、かなりタイプが違います。意見の違いもあり、激論が交わされる日もありますが、多様な来館者の方にお楽しみいただく展示づくりに向け、日々業務に励んでいます。

Vol.001 展示ができるまで(R3.2.15 文責:千賀)

 博物館の展示を考える学芸員。学芸員といえば、部屋にこもって古文書を読んだり古い物を調べているイメージがあるのではないでしょうか。それも、学芸員の仕事の一部ですが…
 今回の新博物館の展示をつくるためには、できるだけ多くの“場所・もの・できごと”を実際に現地に行って調査することを大切にしています。それは、現地で見て驚いたものや感動したものこそ、展示室でご覧いただくみなさんに驚きと感動をお伝えできると考えるからです。松本には、豊かな自然・歴史・文化が現地に残されています。展示を見たみなさんに、「現地に行ってみたい!」と思い実際に見て感動してもらいたい。そんな想いで、学芸員は松本中を飛びまわっています。

1月の年中行事「初市」はお神輿を運ぶところから始まります

1月の年中行事「初市」 今は車でお神輿を運びます

夜には街中に建てられた拝殿でお祓いを受けます

夜には街中に建てられた拝殿でお祓いを受けます


Vol.000 ロビー展示「これまで、そして、これから」展のお知らせ(R3.2.8 文責:堀井)

 今回のコラムは、「展示ができるまでの物語」の視点でお届けします。
 標記のミニ展示を松本市立博物館の1階ロビーで、3月7日(日)まで開催しています。こうした展示は、みなさんにお披露目されるまでの間、どのようにできていくのでしょうか。大きくは、企画→資料選定→解説原稿作成→展示作業という流れです。
 まずは企画・立案です。誰に、どんなことを、どんな風に伝えたいかをイメージしながら企画を練ります。今回は「卒業アルバム」を展示コンセプトとしてイメージし企画しました。
 次は、実際に展示する資料を選びます。今回はパネル展示なので写真を選びますが、「アルバム」がコンセプトなので、博物館で実施してきた色々な行事の様子をピックアップするようにしています。
 資料の選定にあわせ、その資料に語らせるメッセージを考えます。これが、博物館の展示で「解説」や「キャプション」と呼ばれるものです。今回は、パネルの中に一言コメントを入れています。
 資料の選定・解説原稿ができれば、いよいよ展示作業です。出力した写真紙を片面に糊がついたパネルに貼り付け、展示パネルを切り出して作っていきます。展示パネルを壁にピンで打ち付けて設置することで、今回のパネル展が「一旦」完成します。それぞれの作業の中に、学芸員のこだわりが見え隠れするのですが、それは今後のコラムのお楽しみにとっておきます。

出力紙の貼り付けは緊張の瞬間。「スマホに保護シールを貼り付ける」イメージです。

出力紙の貼り付けは緊張の瞬間。「スマホに保護シールを貼り付ける」イメージです。

 さて、わざわざ「一旦」完成と書いたわけですが、皆さんは卒業アルバムに、同級生から寄せ書きをしてもらいませんでしたか?今回の展示、実は皆さんからのコメントを寄せていただく、参加型のイベントを行っています。「博物館が展示をつくる→来館者が展示を見る」という一方向のものではなく、双方向の展示になっています。会期が進むにつれて「変化していく展示」、皆さんもぜひ、ご参加ください。

会期末には、どんな思い出の花が咲くのでしょうか。

会期末には、どんな思い出の花が咲くのでしょうか。