Vol.027 七夕の助っ人「カータリ」 (R4.7.7 文責:高木)

七夕祭りは全国的に7月7日とされていますが、これは旧暦の日付で、松本ではひな祭り同様、月遅れの8月7日にお祝いします。現在の日本の8月7日は猛暑の真っただ中、七夕は夏の行事と認識されがちですが、暦の上ではもう立秋、俳句でも秋の季語、秋の行事になっています。そここに川辺があり、湿った土の上を歩いていた昔の日本の集落では、秋がくるのも早かったのでしょうか。風になびく笹の葉と満天の星空に浮かぶ天の川、在りし日の七夕祭りの美しさを想像すると、確かに秋の気配がします。

さて、松本市立博物館には国の重要有形民俗文化財に指定されている七夕人形コレクションがあります。その「七夕行事の変遷を究明する上で極めて重要な資料となる」45点のコレクションのなかに、「カータリ」という松本地域特有のとても変わった人形があるので紹介します。下の写真の一番左がカータリです。

重要文化財馬場家住宅の軒下に飾られた七夕人形。

重要文化財馬場家住宅の軒下に飾られた七夕人形。

 

 

 

 

 

 

 

松本では織姫と彦星の対の七夕人形を軒下に飾る風習がありますが、それと一緒に角材で作った男の人形もぶら下げます。このカータリ(川渡り)は、雨が降って天の川が増水してしまった時に織姫(または彦星)を背負って川を渡る大切な役目を担っています。年に一度しか会えない七夕様のため、着物の裾をしりっぱしょり(尻端折り)して長い足を出し、天の川のほとりで待機している人足です。この伝承の人物がどうして松本の七夕に登場するのかよくわかってはいませんが、作物のためには雨がほしい、でも、織姫と彦星が会えないのは可哀そうという、人々の複雑な願いを解決するカータリというキャラクターが松本の七夕には必要不可欠なのです。

長い足が特徴のカータリ(川渡)、アシナガ(足長)、カワコシ(川越)とも言われます。

長い足が特徴のカータリ(川渡り)、アシナガ(足長)、カワゴエ(川越え)とも言われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
松本市立博物館では数年前までこのカータリをストラップにして販売し、七夕の「恋のキューピット」としてとても人気がありました。現在は販売されていませんが、新博物館ではこのカータリストラップをワークショップとして復活させたいと思っています。胴体部には、石垣を壊すとして伐採された松本城の樹齢100年の欅(けやき)を使い、願いをこめながら結ぶ紐が手足となります。見る角度によって表情が変わる、カータリというキャラクターを生かしたかわいいストラップです。

松本城100年欅で作る カータリ君ストラップ

松本城100年欅で作る
カータリ君ストラップ

 

 

 

 

 

 

 

 

 
新博物館の常設展示だけでなく、エントランスに設置される大型イラスト、こども体験ひろばのぬりえにもカータリが登場します。この、松本特有の頼もしい助っ人「カータリ」が、織姫・彦星だけでなく、新博物館と市民との橋渡しもしてくれそうです。