Vol.024 てまり作家のてまり (R4.4.19 文責:高木)
松本てまりプロジェクトでは、てまりモビールに使用する150個のてまりのうち約100個を市内のてまり作家さんに作ってもらいます。先日、そのてまりが納品され全てがそろいました。てまりモビール用ということで、発泡スチロール芯を使い、木製バーに固定するための軸を挿入する穴を設定してもらうなど多くの制約があり、作り手さんは大変苦労したようです。けれども今回納品された個性豊かなてまりを見て、改めててまりの素晴らしさ、一針一針に込められた、てまりを作る人のエネルギーの強さに圧倒された思いです。
まずは松本てまり保存会の海老澤さんの作品を紹介します。海老沢さんは松本市立博物館の収蔵品をもとに復活した伝統的なてまりの作り方をしっかりと守ってくださっています。てまりワークショップDコースの講師も務めていただきました。松本てまりといえばこれという、白地に八重菊のてまりは、華やかさ、文様のつくるリズムなど伝統工芸品として完成された美しさです。その他に様々なオリジナルてまりも作っています。
創業明治11年、松本城近くに店を構える「土産処たかぎ」も、昭和30年代に松本てまりを復活させ、土産物として売り出していました。今でも多くのてまりを販売し、体験教室も開いています。伝統的な模様ですが、地まりの色を黒くするなどモダンな雰囲気が特徴的です。
次に紹介するのは、てまりワークショップCコースの講師も務めていただいた、鈴木さん、森下さんに作っていただいたてまりです。8㎝から25㎝までの様々な模様のてまりで、色づかいに作り手のエネルギーを感じます。
最後に中町の「手仕事商會すぐり」が主催するてまりワークショップで研鑽する方々の作品です。15名の作り手がそれぞれ精魂込めて作ってくださいました。すぐりてまりの特徴はその使われる糸で、すべてオリジナルの草木染の木綿糸を使用しています。
今回、「てまりプロジェクト」を通して最も感じているのは、同じ糸、同じ模様でも作り手によって全く違うてまり=世界、ができあがるということでした。また、幼い子どもの手で作られたいびつなてまりも、職人の精緻な技法で作られたてまりも同様に完成されていると感じます。それはてまりが球体という完全な形であるということ、糸が繰り返し繰り返し巻かれていく時に必然的に成立する祈りのような時間が込められるということと関係するかもしれません。
伝統的な松本てまりを含め、松本市民の作り手によって個性豊かなてまりがそろいました。あとは、アートプロデュースの土屋氏・小松氏にゆだね、作り手の思いをのせて浮遊する、てまりモビールの完成を待つばかりです。