Vol.099 年越し新春刀剣展 ( R6 .12.28 文責:高木 )
今月20日から「年越し新春刀剣展~我が家の名刀・刀装具」を、日本美術刀剣保存協会長野県南支部と共同で開催しています。
2階特別展示室の半分のスペースですが、刀身46振り、刀装具など合わせて約100点を展示しています。名刀ぞろいの大変見ごたえのある展示になりましたが、これらは1点を除いてすべて、南支部会員の各家庭で大切に保管され、手入れされているものです。鎌倉初期に作られた刀もあります。ということは、800年近く、誰かが大切に手入れを続けてきたから今ここに展示されているということになります。
刀は手入れを怠ればさび付いてその輝きを失ってしまいます。また、武器として荒々しい戦いに使用されたものは残りません。長い年月、その美しさを誰かが愛でてきたから鑑賞に堪える美術品として博物館に展示されているのです。
姿、鍛え肌、刃文など刀剣のみどころはたくさんあります。解説には専門用語が多く難しく感じてしまうかもしれません。もし、刀を見るのは初めてという初心の方でしたら、ぜひ会場を一回りして自分のお気に入りを見つけてみてください。
姿がかっこいい、刃文がきれい、そう思っていただけるだけで大切にされてきた刀の輝きは一層増すように感じます。何できれいなんだろうと疑問を持ち帰っていただけるとさらにうれしいです。
今年も残り少なくなりました。いつも博物館活動への理解とご協力に感謝しています。来年もよろしくお願いいたします。
新春刀剣展は元旦午前10時から午後3時まで特別開室いたします。また、11日(土)から13日(祝)には現代刀匠の最高峰にある宮入法廣氏を招いて座談会など関連事業も開催しますのでぜひお立ち寄りください。
Vol.098 特別展調査で拓本を取りました(R6.12.10 文責:武井)
学芸員の数多くある業務の中の一つに、特別展・企画展に向けた資料調査があります。
かくいう私も、来年度の特別展に向けて、松本市内の十王様※の調査をさせていただいています。
※ 十王とは:死後、冥界において死者の罪を裁く十人の王。皆さんご存じの閻魔大王も十王のうちの一人です。十王の裁きによって転生先が決まります。生前に「五逆罪」と呼ばれる大罪を犯すと、最下層の「阿鼻地獄」に堕とされ永劫の苦しみを受けますので注意しましょう。
松本市内の十王は、木造の丸彫り像か石造の丸彫り像に大別されますが、一点だけ、石に線刻された閻魔大王像が確認されています。
今回、この閻魔大王像の拓本を取らせていただく機会に恵まれましたので、その様子をご紹介します。今回採拓させていただいたのは、松本市波田に所在する「線彫閻魔王坐像」(松本市重要文化財)です。
大きな自然石に閻魔大王の姿と銘が刻まれています。
閻魔大王は、両手のひらを前に向けたポーズで、眉を吊り上げ、目を見開き、口を開いています。亡者に対して一喝しているのでしょうか。亡者を裁き、時として地獄に堕とす閻魔大王は恐ろしい姿で表されることが多いのですが、この閻魔大王はどことなくユーモラスで親しみを感じます。
閻魔大王の両隣には「天正二年七月吉日甲戌/本願 越前住經聖」と刻まれています。
この銘文から、天正二年(1574)、越前(福井県)の僧・經聖が建てたことが分かります。かつて波田に存在し、「信濃日光」と称された若澤寺への巡拝の際に建てられたと考えられています。
450年ほど前に建てられた石造物ですが、大きな破損や欠落もなく、現在も肉眼で線刻を確認することができます。
とはいえ、表面には地衣類が生え、光のあたり加減によってはうまく見えないこともしばしば…。そこで威力を発揮するのが「拓本」です。
拓本とは、凹凸のあるものの上に紙を乗せ、墨などでその凹凸を写し取る転写方法の一つです。表面の凹凸情報を正確に写し取ることができるため、文化財調査では欠かすことのできない記録手法です。
鉛筆や固い墨などでこすって写し取る方法を乾拓といい、紙を水で密着させ、乾ききる前に墨を乗せる方法を湿拓と言います。石造物の調査においては多くの場合湿拓が用いられます。今回の調査でも湿拓を採用しました。
今回は以下の手順で、2人で拓本を取りました(人によって流儀は異なります)。
① たわしなどで石造物表面をきれいにする。
② 画仙紙を石造物の大きさに合わせてカットする。
③ 画仙紙の位置を決めたら、霧吹きでまんべんなく濡らして固定する。
④ 丸めたタオルなどで画仙紙をたたき、凹凸にしっかり入れ込む。
⑤ 画仙紙が少し乾いたら、タンポに墨をつけもう一つのタンポとすり合わせる。
⑥ タンポで画仙紙にやさしくムラなく墨をつけていく。
⑦ 墨をつけられたら、石造物から画仙紙をはがす。
⑧ はがした画仙紙を新聞紙に挟む。
なお、作業に必死だったため、拓本中の写真はありません。
そうして出来上がった拓本がこちらです。
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2人とも5年以上ぶりの拓本で、現地では「久々の拓本の割にはうまくできたのでは?」と言い合っていましたが、博物館へ持ち帰り、乾ききった状態で見てみたところ、しわが寄ってしまっていたり、ムラができてしまっていたり、少しにじんでしまった箇所があったりと、反省点が次々と…。拓本においても日々の鍛錬が重要であることを痛感しました。
今回は時間の都合でこの一枚しか採拓できませんでしたが、機会があればもう一度チャレンジさせていただきたいと考えています。
拓本は、今回紹介した石造物だけでなく、金属や木材からも取ることができ、道具がそろえばだれでも取ることができます。興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。
※拓本を取るときは、必ず所有者に許可を得てから行ってください。
(今回は市指定文化財であるため、所有者と市文化財課に許可を取っています。)
また、傷つけたり墨で対象物が汚れたりしないよう、細心の注意を払ってください。
Vol.097 博物館で積読? ( R6.11.18 文責:岡 )
松本の散策後や展示を見た後に座って一息つきたい…そんな時は、松本市立博物館の図書情報室でゆっくり本を読むのはいかがでしょうか?
図書情報室は当館2階の特別展示室前、大名町通りを見下ろす見晴らしのいい空間にあります。名前の通り、備え付けの本棚には図書がディスプレイされていて、どなたでもご自由にお読みいただけます。(当館は2階3階でも展示室前までなら無料でお入りいただけます。)
ところでこの図書は、本棚の区画ごとにカテゴリー分けされています。このカテゴリーは松本に関連するものを中心に、「城」や「山」、「建築」、「音楽」など20種類以上が設定されていて、当館学芸員がおすすめする図書を、お手に取りやすいものから少しマニアックなものまで幅広く選出しています。カテゴリー内でも個性の違う図書を選出しているので、惹かれるジャンルがあれば、ぜひ区画単位で注目してみてください。普段読まないジャンルでも、パラパラ眺めていたら思わぬ発見があるかも…?
向かって左にあるU字の本棚には少し毛色の違う図書が並べられています。ここは主に特別展ごとにラインナップが替わる、期間限定エリアです。限られた期間ではあるものの、通常は閉架している骨太なものや少し踏み込んだものなど、特別展をさらに楽しむための図書が多く並べられています。展示を見る前や後に、ぜひ立ち寄ってみてください。
【図書情報室 基本情報】
場所 松本市立博物館2階 特別展示室前
入室時間 9:00~17:00
休室日 毎週火曜日
料金 無料
注意 ・室内は飲食禁止です。虫やカビの発生原因になりますので、
1階の飲食可能スペースをご活用ください.
・図書は元の場所に戻してください.
・図書の中には市民の方が寄贈してくださったものもあります。
ご覧の際は丁寧にお読 みください.
・本を読む以外にも、休憩や自習などにもご利用いただけます.
マナーを守ってご利用ください.
・大声で話す等、他のお客様のご迷惑になる行動はお控えください。
Vol.094 真夏の撮影大作戦 ( R6.9.26 文責:前田)
手まりモビールがゆったりとたゆたう吹き抜けの導入展示エリアが、一夜限りの撮影スタジオに様変わりしたのは8月の全館休館日のこと。この日撮影したのは横5.3m、縦4.7mもの大きさを誇る西善寺の涅槃図(詳しくはこちらVol.067)。
この文化財はその大きさゆえ重量もかなりのもので、壁にかけると資料自体に負荷がかかってしまいます。そのため床面に平らに広げ、大きな涅槃図が画角におさまる高さまでカメラ機材を引き上げ、下向きに構えてシャッターをきる作戦で準備が進められました。
描かれたものがきめ細やかに再現され、この文化財の素晴らしさがしっかり伝わる高画質のデータを残す事が今回のミッション。最新の日本美術全集のデザインも手がけているおおうちおさむアソシエイトプロデューサーのアドバイスのもと、撮影は特殊な機材と技術を携えたプロのカメラマンの方に、大切な文化財の運搬に関しては美術専門スタッフのいる輸送業者の皆さんに、そして市民の皆さんと作り上げた手まりモビールを一時撤収するための、これまた専門の業者の方々それぞれに関わってもらい、博物館職員と当日博物館実習に来ていた大学生たちも加えた総勢40人を巻き込んだ大掛かりな撮影プロジェクトとなりました。
上方から撮影した際、画角に入ってしまう手まりモビールをこの日の朝イチで撤収。一つのモビールは大小10本ほどのバトンが連なっているので、下ろす際は大勢の手で受け取るようにしました。
この涅槃図には画面いっぱいに金彩が施されています。
金の部分が綺麗に撮影できるように、下から4mの高さまで、白い壁を一時的に黒くする必要がありました。A3サイズの黒い紙を54枚、ハシゴに登ってせっせと貼り付け、黒い壁を作っていきます。
西善寺から涅槃図を借り受け、博物館へ搬入するのはこの日の夕方の予定でしたが、天気予報は雨マーク。急きょ午前中に変更してもらい、雨の心配もなく無事博物館へお迎えする事ができました。所蔵者の方のご協力にも感謝です。
撮影は外光や車のライトの影響の少ない夜8時にスタート予定。この日の撮影班はアシスタント含め4人がかり。夕方から機材が続々と設置され、博物館が撮影スタジオと化しました。
2階の図書コーナーに高所作業車を設置し、さらに上へ上がっての撮影。その高さおよそ8m!危険が伴うため、人も資料も安全第一を心がけてとにかく慎重に。
準備が整い、いよいよ涅槃図が広げられます。荘厳な場面が姿を現すと、現場の空気が一段と張り詰めました。ほどなくして渾身のシャッターがきられるのでした。
撮影途中で壁紙を黒いパターンから、白いパターンへ早変わり。金彩を施した部分をよりよく写す条件と、それ以外の絵肌の調子を写しとる条件とに分けて撮影していきます。
こうして各プロ集団の知恵と技が結集した撮影大作戦は無事終了。画像の仕上がりが楽しみです。みなさんお疲れ様でした!
次の日の朝、開館時間前に手まりモビールを元の場所へ復帰させ、何事もなかったように来館者を迎えたある夏の日の博物館の出来事でした。
冬の特別展「春を待つ涅槃図」は令和7年2月1日㈯から3月3日㈪の開催です。市内外の貴重な文化財・涅槃図を博物館で公開します。ただいま展覧会準備の真っ最中。
どこかでポスターやチラシを見かけたら、裏でこんな撮影が行われていたのだと、ちょっとでも思い返してもらえたら嬉しいです。
Vol.93 企画展「生物多様性と松本」を終えて」(R6.9 文責:内川)
先日、9月2日(月)をもちまして、企画展「生物多様性と松本―すぐとなりにあるワンダーランド―」が会期終了となりました。
松本市立博物館本館では長らく行われていなかった自然史系の展示ということで、チャレンジングな企画ではありましたが、内外からも好評をいただき、無事に終えることができました。特に、夏休み期間中ということもあり、多くの親子連れの方々が来館し、展示を楽しまれていったと伺っています。
企画展自体は終了してしまいましたが、展示で紹介したとおり松本市周辺にはさまざまな生きものたちが暮していて、その姿を観察することができます。
特に「白樺峠のタカの渡り」は今まさにシーズン真っ最中。サシバやハチクマといった普段はあまり見かけない猛禽類たちを観察できます。
松本市の自然については、アルプス公園内にある分館・山と自然博物館でも常設で展示しています。公園自体も自然豊かな環境で、特にこれから冬に向けて野鳥の観察シーズンがやってきます。
少し時間はかかってしまいますが、また本館での自然に関する展示も鋭意企画してまいります。
最後に、展示にご協力いただいた皆さまに、この場を借りてあらためてお礼申し上げます。
Vol.92 学校連携について ( R6.8.9 文責:本間 )
松本市立博物館では、地域の学校と連携した講義・講座を実施しています。ここでは、今年私が担当させていただいた事業を紹介します。
1 並柳小学校 社会科地域学習
並柳小学校3年2組の皆さんは、社会科地域学習の一環で「並柳小学校周辺の土地利用」について調べています。博物館に「並柳小学校周辺の土地の歴史について教えてほしい」というご依頼をいただきました。当日は江戸時代など昔の地図を見ながら、並柳の歴史を学びました。
小学生の皆さんから、「並柳に古墳がたくさんあるのを初めて知った。」「並柳の歴史を知れて良かった。」などの感想をいただきました。博物館資料を活用しながら、若い世代の皆さんと歴史を学べる機会となりました。
2 松本市立博物館 松本筑摩高等学校連携「文学連続講座」
松本市立博物館・松本筑摩高等学校連携事業として、「文学連続講座」を開催しました。松本高等学校(旧制)出身作家や作品をメインに、全3回の講座を実施しました。各講座の内容を紹介します。
(1) 講演会「郷土作家が書く松本」
第1回目の講座では講演会を行いました。「郷土作家が書く松本」というテーマで、「松本高等学校の紹介」や「松本高校出身作家が自身の作品で描く松本の様子」などを中心にお話しました。
松本筑摩高等学校の学生さんからは「松本高等学校はエリートのイメージがあった。しかし、学生に破天荒な一面があって驚いた。」という感想をいただきました。
また第1回目の講座のみ一般公開しました。学生の皆様や地域の皆様に、松本の文学や歴史をお伝えできる機会になったと思います。
(2) 北杜夫資料紹介
2回目の講座では、松本高等学校出身作家・北杜夫の資料紹介を行いました。北杜夫の人物像を紹介した後に、生徒の皆さんに資料現物を触っていただきました。
生徒の皆さんより、「資料に使用した痕跡が残っており面白い。」「資料から人となりが分かる。」などの感想をいただきました。生徒さんならではの感性豊かな視点で資料をご覧いただき、意見を伺うことで、私自身も勉強になりました。
(3) あがたの森散策
3回目の講座では「あがたの森散策」を実施しました。あがたの森は松本高等学校の敷地だった場所です。国指定の重要文化財である校舎・講堂が現存しています。今回は敷地内や、校舎・講堂内を巡りました。当時の写真と今の様子を見比べながら散策しました。
学生の皆さんが、校舎・講堂の内装など細部まで興味を持って見てくれていました。現地を巡りながら一緒に歴史を学ぶことができたと思います。
松本筑摩高校の皆さんとの連携講座は、今年秋にも実施予定です。今後も若い世代の皆さんに博物館や資料・文化財に触れていただく機会を作り、未来に繋げていきたいと思っています。
Vol.091 滝廉太郎「荒城の月」の編曲(R6.7.18 文責:竹藤)
今年度より新規採用となりました、竹藤(たけふじ)と申します。事業担当の一員として、本コラムの執筆をさせていただくことになりました。
学芸員の資格を持たない私ですが、大学・前職と文化芸術に携わってきましたので、今回は特に専門としている音楽(作編曲)についてお話ししたいと思います。
ちょうど最近まで、滝廉太郎《荒城の月》の編曲に取り組んでいました。音楽の教科書でもおなじみの楽曲ですが、今回は独唱から混声3部合唱(ソプラノ・アルト・男声+ピアノ)への編曲です。
楽譜が完成するまでの過程を、順を追って見ていきましょう。
まずは、編曲の方向性を確認しておきます。特に、原曲のイメージを崩すことなく、楽器編成や演奏形態のみを書き換える「トランスクリプション」なのか、編曲者の自由な発想のもと、原曲の要素を用いながら再構成していく「アレンジメント」なのかという点は重要です。
今回は後者ですが、次のようなオーダーをいただいていました。
ひとつは、男声の音域に制限があること。低い音域を出すことが難しい合唱団ということでした。また、1番は原曲のまま進行し、2番以降(4番まであります)の雰囲気を変えてほしいというご要望もありました。
内容からすると、難解な楽譜をどんどん読んでいくというよりは、比較的やさしい曲を楽しんで歌おうという合唱団と推察されます。普段からお付き合いのある団体というわけではないため、もちろん推測の域を出ませんが、少なくとも歌のパートについてはシンプルにしようと考えました。
検討の末、ピアノ伴奏に別楽曲の要素を混ぜることで、変化をつけていくアレンジとしました。具体的には《荒城の月》ということで、安易ながら「月」にまつわる楽曲をいくつか選びました。
1番については、リクエスト通り原曲の雰囲気が残っていますが、同じく滝廉太郎の名曲「花」の伴奏形を用いています。
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2番に登場するのは、C.ドビュッシー《月の光》です。
原曲は9/8拍子で、4/4拍子からはやや遠い拍感ではありますが、6連符主体のリズムへ変化することでアレンジが効いてきました。和声を《荒城の月》に合わせて変更したり、拍子の合わないところは素材を挿入したりと、断片的・複合的に使用しました。
同様の音型は後奏にも登場し、楽曲をしめくくります。
また、3番にはジャズ・スタンダードである《フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン》を引用しました。これは嬉しい誤算だったのですが、原曲のコード進行をほぼ変えることなくミックスさせることができました(《荒城の月》の旋律が《フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン》の和音に偶然合っていた)。
最後に、全体のバランスを整えます。
各回が異なるアレンジになることで、展開が唐突になってしまったり、うまく流れずまとまりのない印象になってしまったり…という危険が出てきます。それらをゆるやかにつなげるブリッジとして、間奏にはL.v.ベートーヴェン《ピアノソナタ第14番》(月光)の第3楽章の一部を用いました。クラシックからジャズへの連結を違和感なく、しかも拍感を元に戻さなければならないというところで苦心しましたが、同曲がカデンツァ(終止部の直前に入る技巧的な独奏)のような役割を果たしてくれました。
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編曲は作曲と違い、もとになる原曲があります。0から1を生み出す作業とは趣が異なりますが、やはり多くのことを考えながら進めていく大変さがあります。
今回は自己紹介も兼ねて、普段の音楽活動の一部をご紹介いたしました。身の回りに「作曲をやっている」という方はなかなかいらっしゃらないと思いますが、こうした作品の裏側の部分について、少しでも知っていただくことができれば幸いです。
まだまだ未熟ではございますが、これから自身の強みも活かしながら、博物館事業に貢献できればと思います。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。
※今回の編曲には、原則としてパブリックドメインの楽曲を使用しているほか、著作権関連の許諾が必要な場合については依頼主に一任しております。
Vol.090 収蔵資料の紹介「風也焼」( R6.6.25 文責:石井 )
「風也(ふうや)」とは水崎佐次兵衛という武士の号です。風也は犬甘城址(いぬかいじょうし)に花守として常住していた武士でした。
天保13年(1842年)に松本城主戸田光庸(みつつね)が領民から幕府領御預100年の祝賀を受け、その報謝として翌年犬甘城址に桜や楓を植樹して領民に開放しました。これが現在の城山公園(じょうやまこうえん・松本市特別名勝)の起源です。
『東筑摩郡 松本市・塩尻市誌』によると、花守となった風也は城山に窯を構え、楽焼をはじめました。茶器、七輪、コンロ、釣灯籠、壺などを作り、好評を博したそうです。住居、窯は転々としながら2代3代と続き、作った恵比寿や大黒などは飴市の際のこどもの売物にもなったそうですが、4代風也で途絶えました。
当館収蔵の風也焼のうち、松本民芸館創設者の丸山太郎氏寄贈資料を紹介します。
福禄寿とだるまです。だるまは前後と上面に葉を押し付けた跡があります。福禄寿は高さが22.5㎝あります。
郡誌にも記載のある焜炉(こんろ)です。持ち運び可能な小さな炉です。中が段になっていて、つけ外し可能な素焼きの網状のものが付属しています。網状のものの上に炭を置いて使用したようです。
朱色の釉薬が鮮やかな植木鉢です。裏面の刻書は、箱書きによると「一葉庵風也作」と読むようです。
Vol.089 大人もアソビバ! ( R6.6.12 文責:髙木 )
昨年10月7日にオープンしてから、5月までの8か月間で、アソビバ!の利用人数は18,000人を超えました。お子さんとその保護者の方々のたくさんの笑顔に支えられていることを思うと感慨深いものがあります。今日は、その笑顔の中から、撮影許可をいただいたお子さんの様子を紹介したいと思います。
写真をとっていて特に感じたのは、お母さんはもちろんお父さんたちの子どもを見守る目のやさしさです。お父さんとお子さんという組み合わせがとても多く感じます。子どもだけでなく、大人にとっても居心地の良い場所を目指していますので、大人のためのアソビバ!でもあると思ってもらえると嬉しいです。
入室時にお配りするリーフレットはスタンプカードにもなっていて、古荘風穂さん原画のスタンプが10個用意されています。1回利用ごとにスタンプを押してもらい10個の枠が全部うまったら、ささやかなプレゼントがあります。親子で笑顔になるように、ぜひ、何度でも足を運んでください。
Vol.088 展示ガイドをご利用ください ( R6.5.25 文責:會田 )
皆さんは博物館施設などで展示ガイドを利用した経験はありますか?
端末を利用して展示資料の写真を表示したり、イヤフォンで音声キャプションを聴いたり、変わり種になると展示をイメージした音楽が流れてきたり・・・各館様々な特徴がありますが、今回は当館の展示ガイドについてご紹介いたします。
ポケット学芸員を利用した展示ガイド
当館の常設展示室ではミュージアム展示ガイドアプリ「ポケット学芸員」で展示ガイドをご覧いただけます。ご自身のスマホにアプリをダウンロードした後、画面に従って展示室内にあるガイド番号を入力することで、いつでも気軽にお手元で展示ガイドをご覧いただけます。(音声なし、要ネット接続)
市民ガイドによる展示案内
昨年度の市民ガイド養成講座を修了した皆さんが、新しい博物館のオープンとともに市民ガイドとしてスタートし、連日精力的に活動しております。
「常設展示室は2回目の訪問」、「もっと違う視点で松本の歴史を知りたい」、「展示について質問したい」と思われたお客様は、ぜひ市民ガイドによる展示案内を体験してみてください。
彼らの深い知識と巧みな話術で、まるで一つの物語を聞いているかのように松本の歴史や文化、はたまた「アレ」や「コレ」を楽しく知ることができます。
市民ガイドはいうならば、「松本の物語の語り手」、ストーリーテラーです。話しに耳を傾け、時には対話することで、展示室という場で「ゆるく」つながる体験をして頂けます。
お客様の知識を深め、見どころ情報を集めて松本観光の出発点としてみてはいかがでしょうか。
展示ガイドの楽しみ方は千差万別、お客様のスタイルに合わせて楽しんでいただけるよう工夫しております。ぜひ皆様のご利用をお待ちしております!
5月に「市民ガイドによる常設展示ガイドツアー」が行われ、各日ともに大勢のお客様にご参加いただきました。その様子をお伝えします。
入口の大きな年表が物語の入口です。
メイン展示の一つ、城下町ジオラマをガイド中
展示ガイドの楽しみ方は千差万別、お客様のスタイルに合わせて楽しんでいただけるよう工夫しております。ぜひ皆様のご利用をお待ちしております!