Vol.094 真夏の撮影大作戦 ( R6.9.26 文責:前田)

手まりモビールがゆったりとたゆたう吹き抜けの導入展示エリアが、一夜限りの撮影スタジオに様変わりしたのは8月の全館休館日のこと。この日撮影したのは横5.3m、縦4.7mもの大きさを誇る西善寺の涅槃図(詳しくはこちらVol.067)。

この文化財はその大きさゆえ重量もかなりのもので、壁にかけると資料自体に負荷がかかってしまいます。そのため床面に平らに広げ、大きな涅槃図が画角におさまる高さまでカメラ機材を引き上げ、下向きに構えてシャッターをきる作戦で準備が進められました。
 描かれたものがきめ細やかに再現され、この文化財の素晴らしさがしっかり伝わる高画質のデータを残す事が今回のミッション。最新の日本美術全集のデザインも手がけているおおうちおさむアソシエイトプロデューサーのアドバイスのもと、撮影は特殊な機材と技術を携えたプロのカメラマンの方に、大切な文化財の運搬に関しては美術専門スタッフのいる輸送業者の皆さんに、そして市民の皆さんと作り上げた手まりモビールを一時撤収するための、これまた専門の業者の方々それぞれに関わってもらい、博物館職員と当日博物館実習に来ていた大学生たちも加えた総勢40人を巻き込んだ大掛かりな撮影プロジェクトとなりました。

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上方から撮影した際、画角に入ってしまう手まりモビールをこの日の朝イチで撤収。一つのモビールは大小10本ほどのバトンが連なっているので、下ろす際は大勢の手で受け取るようにしました。

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この涅槃図には画面いっぱいに金彩が施されています。
金の部分が綺麗に撮影できるように、下から4mの高さまで、白い壁を一時的に黒くする必要がありました。A3サイズの黒い紙を54枚、ハシゴに登ってせっせと貼り付け、黒い壁を作っていきます。

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西善寺から涅槃図を借り受け、博物館へ搬入するのはこの日の夕方の予定でしたが、天気予報は雨マーク。急きょ午前中に変更してもらい、雨の心配もなく無事博物館へお迎えする事ができました。所蔵者の方のご協力にも感謝です。

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撮影は外光や車のライトの影響の少ない夜8時にスタート予定。この日の撮影班はアシスタント含め4人がかり。夕方から機材が続々と設置され、博物館が撮影スタジオと化しました。

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2階の図書コーナーに高所作業車を設置し、さらに上へ上がっての撮影。その高さおよそ8m!危険が伴うため、人も資料も安全第一を心がけてとにかく慎重に。

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準備が整い、いよいよ涅槃図が広げられます。荘厳な場面が姿を現すと、現場の空気が一段と張り詰めました。ほどなくして渾身のシャッターがきられるのでした。

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撮影途中で壁紙を黒いパターンから、白いパターンへ早変わり。金彩を施した部分をよりよく写す条件と、それ以外の絵肌の調子を写しとる条件とに分けて撮影していきます。

 こうして各プロ集団の知恵と技が結集した撮影大作戦は無事終了。画像の仕上がりが楽しみです。みなさんお疲れ様でした!

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次の日の朝、開館時間前に手まりモビールを元の場所へ復帰させ、何事もなかったように来館者を迎えたある夏の日の博物館の出来事でした。

冬の特別展「春を待つ涅槃図」は令和7年2月1日㈯から3月3日㈪の開催です。市内外の貴重な文化財・涅槃図を博物館で公開します。ただいま展覧会準備の真っ最中。
どこかでポスターやチラシを見かけたら、裏でこんな撮影が行われていたのだと、ちょっとでも思い返してもらえたら嬉しいです。

Vol.93 企画展「生物多様性と松本」を終えて」(R6.9 文責:内川)

先日、9月2日(月)をもちまして、企画展「生物多様性と松本―すぐとなりにあるワンダーランド―」が会期終了となりました。

松本市立博物館本館では長らく行われていなかった自然史系の展示ということで、チャレンジングな企画ではありましたが、内外からも好評をいただき、無事に終えることができました。特に、夏休み期間中ということもあり、多くの親子連れの方々が来館し、展示を楽しまれていったと伺っています。

展示の様子1

展示の様子1

展示の様子2

展示の様子2

企画展自体は終了してしまいましたが、展示で紹介したとおり松本市周辺にはさまざまな生きものたちが暮していて、その姿を観察することができます。

特に「白樺峠のタカの渡り」は今まさにシーズン真っ最中。サシバやハチクマといった普段はあまり見かけない猛禽類たちを観察できます。

サシバ

サシバ

ハチクマ

ハチクマ

松本市の自然については、アルプス公園内にある分館・山と自然博物館でも常設で展示しています。公園自体も自然豊かな環境で、特にこれから冬に向けて野鳥の観察シーズンがやってきます。

秋の渡りの期間にみられるエゾビタキ

秋の渡りの期間にみられるエゾビタキ

冬になると亜高山帯から里におりてくるルリビタキ

冬になると亜高山帯から里におりてくるルリビタキ

少し時間はかかってしまいますが、また本館での自然に関する展示も鋭意企画してまいります。
最後に、展示にご協力いただいた皆さまに、この場を借りてあらためてお礼申し上げます。

Vol.92 学校連携について ( R6.8.9 文責:本間 )

松本市立博物館では、地域の学校と連携した講義・講座を実施しています。ここでは、今年私が担当させていただいた事業を紹介します。

 1 並柳小学校 社会科地域学習

並柳小学校3年2組の皆さんは、社会科地域学習の一環で「並柳小学校周辺の土地利用」について調べています。博物館に「並柳小学校周辺の土地の歴史について教えてほしい」というご依頼をいただきました。当日は江戸時代など昔の地図を見ながら、並柳の歴史を学びました。

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小学生の皆さんから、「並柳に古墳がたくさんあるのを初めて知った。」「並柳の歴史を知れて良かった。」などの感想をいただきました。博物館資料を活用しながら、若い世代の皆さんと歴史を学べる機会となりました。

 2 松本市立博物館 松本筑摩高等学校連携「文学連続講座」

松本市立博物館・松本筑摩高等学校連携事業として、「文学連続講座」を開催しました。松本高等学校(旧制)出身作家や作品をメインに、全3回の講座を実施しました。各講座の内容を紹介します。

(1) 講演会「郷土作家が書く松本」

第1回目の講座では講演会を行いました。「郷土作家が書く松本」というテーマで、「松本高等学校の紹介」や「松本高校出身作家が自身の作品で描く松本の様子」などを中心にお話しました。

松本筑摩高等学校の学生さんからは「松本高等学校はエリートのイメージがあった。しかし、学生に破天荒な一面があって驚いた。」という感想をいただきました。

また第1回目の講座のみ一般公開しました。学生の皆様や地域の皆様に、松本の文学や歴史をお伝えできる機会になったと思います。

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(2) 北杜夫資料紹介

 2回目の講座では、松本高等学校出身作家・北杜夫の資料紹介を行いました。北杜夫の人物像を紹介した後に、生徒の皆さんに資料現物を触っていただきました。

紹介した資料

紹介した資料

筑摩高校の生徒さんたち

筑摩高校の生徒さんたち

北杜夫は阪神タイガースのファンであった

北杜夫は阪神タイガースのファンであった

北杜夫がディラン山に登った際に着ていた羽毛服

北杜夫がディラン山に登った際に着ていた羽毛服

生徒の皆さんより、「資料に使用した痕跡が残っており面白い。」「資料から人となりが分かる。」などの感想をいただきました。生徒さんならではの感性豊かな視点で資料をご覧いただき、意見を伺うことで、私自身も勉強になりました。

 (3) あがたの森散策

3回目の講座では「あがたの森散策」を実施しました。あがたの森は松本高等学校の敷地だった場所です。国指定の重要文化財である校舎・講堂が現存しています。今回は敷地内や、校舎・講堂内を巡りました。当時の写真と今の様子を見比べながら散策しました。

校舎

校舎

講堂

講堂

公園内散策の様子

公園内散策の様子

学生の皆さんが、校舎・講堂の内装など細部まで興味を持って見てくれていました。現地を巡りながら一緒に歴史を学ぶことができたと思います。

  松本筑摩高校の皆さんとの連携講座は、今年秋にも実施予定です。今後も若い世代の皆さんに博物館や資料・文化財に触れていただく機会を作り、未来に繋げていきたいと思っています。

 

 

Vol.091 滝廉太郎「荒城の月」の編曲(R6.7.18 文責:竹藤)

今年度より新規採用となりました、竹藤(たけふじ)と申します。事業担当の一員として、本コラムの執筆をさせていただくことになりました。
学芸員の資格を持たない私ですが、大学・前職と文化芸術に携わってきましたので、今回は特に専門としている音楽(作編曲)についてお話ししたいと思います。

ちょうど最近まで、滝廉太郎《荒城の月》の編曲に取り組んでいました。音楽の教科書でもおなじみの楽曲ですが、今回は独唱から混声3部合唱(ソプラノ・アルト・男声+ピアノ)への編曲です。
楽譜が完成するまでの過程を、順を追って見ていきましょう。

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まずは、編曲の方向性を確認しておきます。特に、原曲のイメージを崩すことなく、楽器編成や演奏形態のみを書き換える「トランスクリプション」なのか、編曲者の自由な発想のもと、原曲の要素を用いながら再構成していく「アレンジメント」なのかという点は重要です。
今回は後者ですが、次のようなオーダーをいただいていました。

ひとつは、男声の音域に制限があること。低い音域を出すことが難しい合唱団ということでした。また、1番は原曲のまま進行し、2番以降(4番まであります)の雰囲気を変えてほしいというご要望もありました。
内容からすると、難解な楽譜をどんどん読んでいくというよりは、比較的やさしい曲を楽しんで歌おうという合唱団と推察されます。普段からお付き合いのある団体というわけではないため、もちろん推測の域を出ませんが、少なくとも歌のパートについてはシンプルにしようと考えました。
検討の末、ピアノ伴奏に別楽曲の要素を混ぜることで、変化をつけていくアレンジとしました。具体的には《荒城の月》ということで、安易ながら「月」にまつわる楽曲をいくつか選びました。

1番については、リクエスト通り原曲の雰囲気が残っていますが、同じく滝廉太郎の名曲「花」の伴奏形を用いています。

 

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2番に登場するのは、C.ドビュッシー《月の光》です。
原曲は9/8拍子で、4/4拍子からはやや遠い拍感ではありますが、6連符主体のリズムへ変化することでアレンジが効いてきました。和声を《荒城の月》に合わせて変更したり、拍子の合わないところは素材を挿入したりと、断片的・複合的に使用しました。
同様の音型は後奏にも登場し、楽曲をしめくくります。

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また、3番にはジャズ・スタンダードである《フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン》を引用しました。これは嬉しい誤算だったのですが、原曲のコード進行をほぼ変えることなくミックスさせることができました(《荒城の月》の旋律が《フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン》の和音に偶然合っていた)。

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最後に、全体のバランスを整えます。
各回が異なるアレンジになることで、展開が唐突になってしまったり、うまく流れずまとまりのない印象になってしまったり…という危険が出てきます。それらをゆるやかにつなげるブリッジとして、間奏にはL.v.ベートーヴェン《ピアノソナタ第14番》(月光)の第3楽章の一部を用いました。クラシックからジャズへの連結を違和感なく、しかも拍感を元に戻さなければならないというところで苦心しましたが、同曲がカデンツァ(終止部の直前に入る技巧的な独奏)のような役割を果たしてくれました。

 

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編曲は作曲と違い、もとになる原曲があります。0から1を生み出す作業とは趣が異なりますが、やはり多くのことを考えながら進めていく大変さがあります。
今回は自己紹介も兼ねて、普段の音楽活動の一部をご紹介いたしました。身の回りに「作曲をやっている」という方はなかなかいらっしゃらないと思いますが、こうした作品の裏側の部分について、少しでも知っていただくことができれば幸いです。

まだまだ未熟ではございますが、これから自身の強みも活かしながら、博物館事業に貢献できればと思います。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

※今回の編曲には、原則としてパブリックドメインの楽曲を使用しているほか、著作権関連の許諾が必要な場合については依頼主に一任しております。

Vol.090 収蔵資料の紹介「風也焼」( R6.6.25 文責:石井 )

「風也(ふうや)」とは水崎佐次兵衛という武士の号です。風也は犬甘城址(いぬかいじょうし)に花守として常住していた武士でした。

 天保13年(1842年)に松本城主戸田光庸(みつつね)が領民から幕府領御預100年の祝賀を受け、その報謝として翌年犬甘城址に桜や楓を植樹して領民に開放しました。これが現在の城山公園(じょうやまこうえん・松本市特別名勝)の起源です。

 『東筑摩郡 松本市・塩尻市誌』によると、花守となった風也は城山に窯を構え、楽焼をはじめました。茶器、七輪、コンロ、釣灯籠、壺などを作り、好評を博したそうです。住居、窯は転々としながら2代3代と続き、作った恵比寿や大黒などは飴市の際のこどもの売物にもなったそうですが、4代風也で途絶えました。

 

 当館収蔵の風也焼のうち、松本民芸館創設者の丸山太郎氏寄贈資料を紹介します。

福禄寿とだるま

福禄寿とだるま

だるま背面

だるま背面

福禄寿とだるまです。だるまは前後と上面に葉を押し付けた跡があります。福禄寿は高さが22.5㎝あります。

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こんろ

郡誌にも記載のある焜炉(こんろ)です。持ち運び可能な小さな炉です。中が段になっていて、つけ外し可能な素焼きの網状のものが付属しています。網状のものの上に炭を置いて使用したようです。

植木鉢

植木鉢

植木鉢裏面

植木鉢裏面

朱色の釉薬が鮮やかな植木鉢です。裏面の刻書は、箱書きによると「一葉庵風也作」と読むようです。

Vol.089 大人もアソビバ! ( R6.6.12 文責:髙木 )

昨年10月7日にオープンしてから、5月までの8か月間で、アソビバ!の利用人数は18,000人を超えました。お子さんとその保護者の方々のたくさんの笑顔に支えられていることを思うと感慨深いものがあります。今日は、その笑顔の中から、撮影許可をいただいたお子さんの様子を紹介したいと思います。

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絵本 OLYMPUS DIGITAL CAMERA
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写真をとっていて特に感じたのは、お母さんはもちろんお父さんたちの子どもを見守る目のやさしさです。お父さんとお子さんという組み合わせがとても多く感じます。子どもだけでなく、大人にとっても居心地の良い場所を目指していますので、大人のためのアソビバ!でもあると思ってもらえると嬉しいです。

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入室時にお配りするリーフレットはスタンプカードにもなっていて、古荘風穂さん原画のスタンプが10個用意されています。1回利用ごとにスタンプを押してもらい10個の枠が全部うまったら、ささやかなプレゼントがあります。親子で笑顔になるように、ぜひ、何度でも足を運んでください。

 

Vol.088 展示ガイドをご利用ください ( R6.5.25 文責:會田 )

皆さんは博物館施設などで展示ガイドを利用した経験はありますか?

端末を利用して展示資料の写真を表示したり、イヤフォンで音声キャプションを聴いたり、変わり種になると展示をイメージした音楽が流れてきたり・・・各館様々な特徴がありますが、今回は当館の展示ガイドについてご紹介いたします。

 ポケット学芸員を利用した展示ガイド

当館の常設展示室ではミュージアム展示ガイドアプリ「ポケット学芸員」で展示ガイドをご覧いただけます。ご自身のスマホにアプリをダウンロードした後、画面に従って展示室内にあるガイド番号を入力することで、いつでも気軽にお手元で展示ガイドをご覧いただけます。(音声なし、要ネット接続)

常設展示室入口に設置しているご利用の案内

常設展示室入口に設置しているご利用の案内

こちらの二次元コードからアプリをダウンロードできます

こちらの二次元コードからアプリをダウンロードできます

キャプションごとにガイド番号を掲示しています

キャプションごとにガイド番号を掲示しています

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市民ガイドによる展示案内

 昨年度の市民ガイド養成講座を修了した皆さんが、新しい博物館のオープンとともに市民ガイドとしてスタートし、連日精力的に活動しております。

「常設展示室は2回目の訪問」、「もっと違う視点で松本の歴史を知りたい」、「展示について質問したい」と思われたお客様は、ぜひ市民ガイドによる展示案内を体験してみてください。
 彼らの深い知識と巧みな話術で、まるで一つの物語を聞いているかのように松本の歴史や文化、はたまた「アレ」や「コレ」を楽しく知ることができます。
 市民ガイドはいうならば、「松本の物語の語り手」、ストーリーテラーです。話しに耳を傾け、時には対話することで、展示室という場で「ゆるく」つながる体験をして頂けます。
 お客様の知識を深め、見どころ情報を集めて松本観光の出発点としてみてはいかがでしょうか。

 展示ガイドの楽しみ方は千差万別、お客様のスタイルに合わせて楽しんでいただけるよう工夫しております。ぜひ皆様のご利用をお待ちしております!

 5月に「市民ガイドによる常設展示ガイドツアー」が行われ、各日ともに大勢のお客様にご参加いただきました。その様子をお伝えします。

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入口の大きな年表が物語の入口です。

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メイン展示の一つ、城下町ジオラマをガイド中

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展示ガイドの楽しみ方は千差万別、お客様のスタイルに合わせて楽しんでいただけるよう工夫しております。ぜひ皆様のご利用をお待ちしております!

Vol.087 「甲冑着付け体験」を実施しました ( R6.5.16 文責:吉澤 )

 松本市立博物館では「甲冑着付け体験」を令和6年4月27日(土)~29日(月・祝)、5月3日(金・祝)~6日(月・祝)の7日間にわたり実施しました。

 こちらは現在開催中の「収蔵品展 戸田家臣団―松本藩最後の武士団―」にあわせて企画した関連イベントです。

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 昨年1月に赤廣三郎氏よりご寄贈いただいた手作りの甲冑レプリカを使い、本格的な着用方法で当時の武士になりきっていただきました。

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 本物と見間違えてしまうほど精巧に作られたレプリカの甲冑たち。素材は鉄の代わりに軽いプラスチックを使用しているため、お子様でもご着用いただけます!

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 松本藩主・戸田家の甲冑は常設展にて、戸田家臣・松崎家の甲冑は企画展にてそれぞれ展示中の資料をモデルに制作していただきました。

 過去のコラムでは甲冑レプリカ贈呈式の様子をご紹介しておりますので、是非こちらもあわせてご覧ください。

 イベントを盛り上げる小道具や事前準備も手を抜きません!
より多くの方に戸田家臣たちの世界を楽しんでもらえるよう、企画展の展示資料を模した軍扇や、展示資料『御家閑集』に記された松本藩戸田家の旗や法被(はっぴ)なども再現してみました。

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職員も会場設営のほか、事前に着用手順を確認しあい、万全の準備を整えます。

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当日はゴールデンウィークということもあり、たくさんのご家族、国内外からの観光客の方々にお越しいただき、500人を超える参加者の皆様にお楽しみいただけました。

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 参加者の中には、「ずしっとした重みがあるけれど、気持ちが引き締まる感じがします。」という感想をくださった方もいらっしゃいました。

 幕末に甲冑揃えをおこなったという戸田家臣たちも、鎧に身を包みながら、この先起こる戦闘に向け気合を入れていたのかもしれません…。

 イベントを通して、当時の武士たちや展示資料の甲冑にも親しみを持っていただけたら幸いです。

 今回のイベントで活躍した甲冑や小道具の実物も展示されている「収蔵品展 戸田家臣団―松本藩最後の武士団―」は令和6年6月17日(月)まで開催中です。新館開館後初の収蔵品展。150年以上にわたって松本藩を支え続けた戸田家臣団の軌跡とともに、当館自慢の資料をぜひご覧ください!

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Vol.086 第4回博物館まつりを開催しました(R6.4.26 文責:武井)

 令和6年3月17日、第4回博物館まつりが開催されました。
 博物館まつりとは、松本市立博物館やその分館を母体として活動されている市民の皆さんによる成果発表イベントです。
 新博物館が開館してから初めての博物館まつりということもあり、博物館まつり実行委員会の皆さんを中心に試行錯誤しながら準備が進められてきました。

今回は、博物館まつり当日の賑わいをご紹介します。

 1 まる博deウォーキング

 「城下町の名残を探しに行こう」をテーマに、松本城の南東コースと北コースに分かれ、2時間半ほどのウォーキングを実施しました。
 どちらのコースもほぼ定員いっぱいのお申し込みをいただき、大所帯でのウォーキングとなりました。
 同行した学芸員は、「予定時刻ぴったりに博物館に帰ってこられてすごい!」と、市民学芸員の皆さんによる手慣れたガイドに驚いていました。

ウォーキング南東コースの様子

ウォーキング南東コースの様子

ウォーキング北コースの様子

ウォーキング北コースの様子

2 ワークショップ

 今回の博物館まつりでは、市民学芸員オリジナルワークショップの「七夕人形・カータリ人形ワークショップ」、「松本だるま大當ワークショップ」の2つと、友の会主導で講師をお招きした「竹細工ワークショップ」を実施しました。
 いずれのワークショップも好評で、竹細工ワークショップは満員御礼、七夕人形・カータリ人形、松本だるま大當も大勢のお客様にお越しいただき、準備していたキットが午前中に終了してしまったものもありました。
 反省会では、「もっとワークショップを増やして、たくさんのお子さんに来てもらいたい」という意見が出ました。次回の博物館まつりではもっとたくさんのワークショップをお楽しみいただけるかも…?

七夕人形・カータリ人形ワークショップ

七夕人形・カータリ人形ワークショップ

松本だるま大當ワークショップ

松本だるま大當ワークショップ

竹細工ワークショップ

竹細工ワークショップ

3 報告会・ギャラリートーク

 市民学芸員の皆さんによる調査研究の成果発表を行いました。今回、報告会・ギャラリートークの形で成果発表したのは犀川通船グループ、化石グループ、まつもと六地蔵調査会の3グループです。
 反省会では「もっと会場の皆さんと意見交換する時間を設ければよかった」「どうすればより多くの人に関心を持ってもらえるのか、考えるのが難しい」といった反省が出ましたが、いずれも次回の発表会を見据えた前向きな意見でした。
 「想像以上に多くの方にお越しいただいて嬉しかった」という感想もあり、今後の調査研究や発表に向けて大きな活力となったのではないでしょうか。

講堂での発表の様子

講堂での発表の様子

4 戦争紙芝居読み聞かせ

 2階の図書情報室において、戦争紙芝居のレプリカ展示、関連絵本の展示等と合わせて、友の会の皆さんによる戦争紙芝居の読み聞かせが行われました。
 戦時中、軍の宣伝のために作られた紙芝居で、内容は子ども向けですが、「大人の参加者が多かったのが印象的だった」という感想が反省会で出されました。
 展示しているレプリカや絵本をじっくりと読むお客様の姿も多くみられました。

紙芝居読み聞かせの様子

紙芝居読み聞かせの様子

5 常設展示クイズ

 友の会の皆さんオリジナルの常設展示クイズを実施し、解答者にはオリジナルの松本藩主家紋缶バッジをプレゼントしました。
 準備していた缶バッジはほぼすべてなくなりましたが、中でも松平氏の葵紋と、石川氏の笹竜胆紋が人気だったようです。「ドラマの影響で石川氏が人気だろうから、多めに作っておこう」という友の会の推測が見事当たった形となりました。

クイズ受付の様子

クイズ受付の様子

6 ポスター展示

 市民学芸員の皆さんによる調査・研究の成果や、友の会の皆さんによる活動紹介を、ポスター展示にて発表しました。
 今回ポスター展示を実施したのは、犀川通船グループ、化石グループ、お蚕組、七夕人形グループ、戦争紙芝居グループ、城下町町名の会、まつもと六地蔵調査会、友の会古文書部会の8グループで、ポスターデザインやレイアウト等も各グループが一から検討し、展示しました。
 ポスターを観覧されているお客様にお声がけして解説をしたり、アンケート調査を実施したり、実物資料も一緒に展示したりと、各グループごと特色のある展示となりました。

犀川通船のポスター展示

犀川通船のポスター展示

化石の展示

化石の展示

お蚕組の展示

お蚕組の展示

七夕人形の展示

七夕人形の展示

戦争紙芝居の展示

戦争紙芝居の展示

城下町町名の展示

城下町町名の展示

六地蔵の展示

六地蔵の展示

古文書部会の展示

古文書部会の展示

7 展示解説

 松本市立博物館の常設展示および歴史の里の館内で、ガイドツアーを実施しました。
 展示ガイドは日常的に実施していただいていますが、まつり当日は集合時間を設定し、いつもよりもじっくりと時間をかけたガイドを行っていただきました。
 参加者の出身地によって解説をカスタマイズしたり、参加者のその日の予定を鑑みて内容を調整したりと、熟練のガイドさんたちによる贅沢なガイドとなりました。

 以上、第4回博物館まつりの様子をざっくりと紹介いたしました。
 手探りで進めた部分もありましたが、当日は大きなアクシデント等もなく、新博物館が開館して初めての博物館まつりということあり、たくさんのお客様にお越しいただくことができました。
 しかし、反省会では「次回はもっと多くの人に来てもらうために広報に力を入れたい」、「こどもにたくさん来てもらうためには開催時期も検討したほうが良いのでは」等々、次回に向けた反省点や改善点もたくさん出されました。
 向上心を忘れず、常に良いものを作り上げようとする皆さんの姿勢に、私も気が引き締まる思いです。
 今年も開催のお知らせができるよう準備を進めてまいります。第5回博物館まつりをお楽しみに!

 

 

Vol.085 展示に必要なあの脇役( R6.4.1 文責:岡 )

 突然ですが皆さん、博物館の学芸員というとどのような仕事内容をイメージするでしょうか?収蔵品や展示品について説明や紹介をしているイメージ?それとも展示や発表に向けて日々研究しているイメージでしょうか?あるいはこの学芸員コラムをご覧の方なら、今までご紹介した内容について思い浮かべたかもしれません。

もちろん、それらは貴重な資料の保存・研究・展示を生業にしている学芸員にとって、重要な使命の一つと言えます。ですが雑芸員(ざつげいいん)とも揶揄される通り、学芸員と一口に言っても日々の業務は多岐にわたります。今回のコラムではその内の一つ、特に展示前になると忙しくなるあの仕事についてご紹介します。

博物館や美術館へ訪れた経験のある方なら、こんなパネルに見覚えがありませんか?

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これらのパネルは掲載内容によって、章パネル・解説パネル・キャプションなどと呼ばれていて、当館では特別な理由を除き基本的に学芸員が全て手作りしています。(材質や大きさによっては業者に発注する場合もあります。)展示の規模にもよりますが、大小様々なパネルが数十枚単位で作成され、昨年度行われたまつもと博覧会展では合計200枚以上のパネルが用意されました。

パネル作成では主に以下のようなものが使われます。茶色い板状のものはのり付きパネルと言って、片面に粘着力があり、紙を貼り付けられます。

用意するもの:原稿、のり付きパネル、カッター、定規、 カッターマット

用意するもの:原稿、のり付きパネル、カッター、定規、
カッターマット

パネルは基本的に以下の手順で作成しています。
① 原稿を手頃なサイズに切る
② のり付きパネルを原稿より一回り大きく切り落とす

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③ 一部粘着面を切り出して原稿が中心にくるように貼りつける

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④ 原稿全体をのり面に貼り付ける

たわみや気泡が入らないように慎重に貼り付けるのが ポイント!

たわみや気泡が入らないように慎重に貼り付けるのが
ポイント!

⑤ 余計な部分を切り落とす

 
目安の枠線からズレないように切る

目安の枠線からズレないように切る

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完成!

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一見簡単そうに見えますが、学芸員でもコツが掴めるまでなかなか苦戦します。手慣れた人だと形やスピードが洗練されているので、パネル切りならあの人に任せよう!となる場合もあります。ですが大きな展示前には学芸員総出で作業をすることが多いです。

大型のパネルを作成する様子

大型のパネルを作成する様子

 

定規や目安がズレるときれいな長方形パネルにならないので、力加減を調整しながら、全身を使って作業します。

完成したパネルはミリ単位で何度も調整しながら、なるべく鑑賞の妨げにならないよう整然と並べていきます。(過去のコラムでは展示照明についても紹介しています。

Vol.052 博物館の照明(文責:原澤)(2023.5.9更新)

博物館や美術館と言えば、美しい資料や興味深い内容へ目が行きがちですが、脇役のパネルにも学芸員のこだわりが詰まっています。次に訪れた際はそんなことも意識しながら鑑賞してみるのはいかがでしょうか?