Vol.109 学芸員の仕事道具って?( R7.5.22 文責:岡 )

学芸員は日々多くの博物館資料と接しますが、そんな“学芸員の仕事道具”について皆さんはご存じですか?おそらく考えた事もない方が大半だと思いますが、漠然と“資料に害を与えない道具”を使っているのは想像できると思います。

博物館では破損や汚損、カビや虫害などに繋がるものは可能な限り排除します。今回のコラムではそんな博物館で日々使われている仕事道具について、具体例を示しながら一部をご紹介したいと思います。

1 手袋
資料の材質によっては布製の白手袋や薄手のゴム手袋を利用します。
ただ指先に力が伝わりにくいなど不便な面もあるため、清潔を保った上で、素手のまま作業する機会も多いです。

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2 マスク
唾などの飛沫が付着しないよう、あらかじめマスクを装着しながら作業します。

3 鉛筆
軽量で先端が尖っておらず、ボールペンのインクと異なり付着物の除去が可能なため、筆記用具の中では推奨されています。

4 計測道具
金属製よりも布製や木製のものが頻繁に使用されます。

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5 ライト
暗所での作業や、透かして資料状態を観察する場面で重宝します。落下を防止するためにも、紐付きのものが好まれます。

6 薄葉紙
薄くて破れにくい和紙です。通気性や柔軟性などに優れるため、資料と接するもの(緩衝材や包みや紐)は基本的に全て薄葉紙から作られます。

薄葉紙

7 綿布団
綿を薄葉紙で包んで作るクッションです。使用頻度は高く、多くは学芸員が手作りしています。

綿布団

8 巻き段ボール(写真の下に敷いているもの)
資料を置く際の下敷きや、梱包材として使用する場合もあります。資料のあるエリアとそれ以外とを区別する役割もあります。

IMG_6673-1746756892875 巻ダンボール

9 テンバコ
安定して積み上げられるように定型の箱が使用されています。

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ご覧いただいた通り、私たちが日々使用する道具に特別珍しいものはありません。ですが、何か問題が起きたとしても被害が最小限になるよう、細かなところで気を配っています。硬い材質より柔らかい材質、付着したとしても取り除きやすい材質、軽量な材質、資料に接しても影響が少ない材質…など、どんな道具を使うにしても、なるべく資料に影響を与えないことが優先されています。

また道具ではありませんが、資料を取り扱う前には落下の危険があるアクセサリーや腕時計は外し、ボタンやチャックがある服装はなるべく避けるなど、身支度にも気を付けます。これも、資料を破損させないように意識されていることの一つです。

資料の多くはそれぞれが館を信頼してご寄贈いただいたものです。そんな大切な財産を保管している以上、仕事道具をはじめとして学芸員が意識すべきことは少なくありません。

今回は一例の紹介に留めましたが、そんな視点も交えながら学芸員コラムを見ていただけると、新たな発見があるかもしれません。