Vol.056 ワークショップはいかがですか( R5.6.6 文責:岡 )

工芸の五月も終わりに近づく5月26日(金)、博物館のポケットパークでワークショップを開催しました。その名も「ちょこっとクラフト体験 松本城百年けやきでつくるカータリストラップ」。今回のコラムでは、そのワークショップについてご紹介したいと思います。

皆さんは“カータリ”と聞いて、ピンとくるでしょうか?カータリ(川渡り)とは松本やその周辺に見られる七夕人形のひとつで、天の川が増水した際、七夕様を背負って対岸まで連れていくという伝承があります。コラムのvol.027でも取り上げたので、覚えている方もいらっしゃるかもしれません。

実は今回のワークショップは、vol.027の最後に紹介したカータリストラップのワークショップについて、試験的に実施したイベントでした。

軒先にかざられる七夕人形の様子

軒先にかざられる七夕人形の様子

このワークショップでは、松本城の百年けやきから作られたカータリに紐を通し結びながら、自分だけのカータリストラップを作ります。それだけ聞くと簡単そうに思えますが、紐を扱う作業は思った以上にコツがいります。ワークショップを開催するにあたり、碇屋漆器店様のご協力で事前講習会を開き、制作手順を学びました。

当日に備え四苦八苦しながらも手順を学びました

当日に備え四苦八苦しながらも手順を学びました

完成した十人十色のカータリストラップたち

完成した十人十色のカータリストラップたち

開催当日はゲリラ的なイベントにも関わらず、多くの方にご参加いただけました。参加者の方からは「意外と難しいけど完成すると達成感がある!」「松本に住んでいるけどカータリは知らなかったので、今回知ることができてよかった。」との声がありました。

設営した様子

設営した様子

様々なかたにご参加いただきました

様々なかたにご参加いただきました

無事ワークショップを終えてみると、安堵するのと同時に、大小さまざまな課題も見えてきたように思います。今回の反省を生かしつつ、新しい博物館がオープンする頃には、松本の文化をより発信していけるようなワークショップを開催していきたいです。

Vol.055 「松竹梅と桐紋蒔絵の女乗物」の修復 ( R5.5.30.文責:吉澤 )

今回は、新博物館の常設展示室で公開を予定している資料「松竹梅と桐紋蒔絵の女乗物」についてご紹介します。

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 女乗物とは?

「女乗物」とは、江戸時代に徳川将軍家や大名家の女性が乗り物として使っていた駕籠のことです。江戸時代、駕籠の種類は利用する人の身分や用途によって厳しく分けられていました。

駕籠のなかでも、引き戸付きで装飾がほどこされた高級なものを「乗物」といい、特に女性用の乗物を「女乗物」と呼びました。「乗物」は主に公家や武家が使用しましたが、特に「女乗物」を持つことができたのは、さらに身分の高い家に限定され、武家の中では将軍家や大名家などが使用していました。

「女乗物」は婚礼の調度品として用意されることが多く、実用性を重視した男性用の乗物よりもきらびやかなデザインが目立ちます。ただし、そのデザインや扱える素材についても、使用する女性の身分によって決められていました。

 「松竹梅と桐紋蒔絵の女乗物」はどんな資料?

今回ご紹介する「松竹梅と桐紋蒔絵の女乗物」は、江戸時代後期頃につくられたものと考えられます。当時松本藩主であった戸田家に伝来し、その奥方などが使用していたのではないかと推定されます。
昭和61年(1986)に松本市へ寄贈され、平成7年(1995)に松本市重要文化財に指定されました。
引き戸を横にひき、屋根の一部をはね上げて出入りする構造です。
唐破風の屋根を持ち、窓には御簾がかけられています。

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錆色に梨地の漆塗りがほどこされ、松、竹、梅と大きな桐紋の蒔絵が描かれています。

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内部の様子です。格天井(木を組んで格子形に仕上げた天井)の中には、金地に様々な草花の絵が描かれています。

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縁辺や隅には、飾り金具や細工物を打った華麗な装飾がほどこされ、まさに「大名道具」と呼ぶにふさわしい威厳と格式が感じられます。

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常設展示に向けて~修復とクリーニング~

松本藩主戸田家の威厳と格式を象徴する資料として、旧館の頃から長らく展示されてきた本資料ですが、塗装された漆の剥落や長年の埃などが目立つようになってきたため、保存修復作業を行いました。市文化財課などの指導のもと、地元の漆職人の方々にご協力いただきました。

 剥がれてしまった漆の欠片を一点一点確認し、剥落前の状態に丁寧に戻していきます。

修復前

修復前

修復後

修復後

細やかなクリーニングによって、鮮やかな塗装の輝きがよみがえりました。

クリーニング前

クリーニング前

クリーニング後

クリーニング後

今回ご紹介した「松竹梅と桐紋蒔絵の女乗物」は、新博物館3階の常設展示室で公開予定です。より当時に近い美しい姿で、来館された皆様をお出迎えしたいと思います!

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Vol.054 道祖神のこと ( R5.5.23 文責:石井)

道祖神とは境の神の総称で、石に文字や神の像を刻んだ碑を路傍にたてて祭られることが多いです。サエノカミ、サイノカミ、ドウロクジンなどと呼ばれる地域もあり、その存在は全国的にもみられます。

時代・地域により異なりますが、昔は村落守り神、道の神、疫病除けの神、豊作の神、子どもの守り神と多様な祈りをささげています。

松本市内の道祖神碑は600基を超え、四賀地区を筆頭に市域の東側に多い傾向がみられます。市内の道祖神のうち、4割が双体道祖神と呼ばれる男女一対の彫像で、これらは縁結びの神とされています。

江戸時代には、ムラが繫栄するとそのムラの道祖神が盗まれるということがあり、これを「道祖神の嫁入り」といいました。この道祖神を盗むと十両の結納金をいただくという意味の「帯代十両」と刻まれている道祖神もあります。

ここでは新博物館の周りにある2基の現代道祖神を紹介します。

道祖神

写真は新博物館竣工にあたり、松本石匠組合から寄贈された現代の双体道祖神「抱擁」です。博物館北東隅の大名町通り沿いに佇んでいます。

道祖神2

写真は博物館建設地にあった大手門駐車場(北棟)竣工時に建設共同企業体から寄贈された双体道祖神です。博物館建設にあたり、南側の土手小路沿いにある東洋計器大手門駐車場内広場に移設されました。

新博物館は松本まるごと博物館の起点、情報センター、市民の学びの場として活用され、博物館のにぎわいを街中へ波及させることが期待されています。「嫁入り」が心配されるくらいに博物館や周辺が繁栄するといいですね。

Vol.053 博物館の収蔵庫 (R5.5.16 文責:武井)

今回は、博物館の役割の一つである「収集保管」の根幹となる収蔵庫の設備を紹介します。

新博物館の収蔵庫

これは新博物館2階の収蔵庫です。
一見すると普通の倉庫ですが、博物館資料を末永く未来に伝えていくために様々な設備が導入されています。

 1 空調

Vol.40でもお伝えしたように、博物館資料にとって最も身近な大敵は虫とカビです。この虫・カビの繁殖を抑えるためにも、温湿度を調整してくれる空調は欠かせない設備の一つです。
博物館の空調は、収蔵庫を一定の温湿度に保つことももちろん重要ですが、それに加えて収蔵庫全体にくまなく空気を循環させることも大切です。
普通のエアコンのように、一か所の口からゴーっと空気が出るタイプの空調だと、吹き出し口近くの空間と遠くの空間で、空気の流れにムラができてしまいます。
空気の流れが悪い箇所ができてしまうと、湿度やほこりがたまり、カビの発生源や虫の住みかとなってしまう可能性があります。
そこで、新博物館収蔵庫の空調は少し変わった形になっています。先ほどの写真にも写っていますが、どれかわかりますか?

空調

正解は、天井に何本もぶら下がっている白く細長い筒です。
このもこもこした部分全体からじわーっと空気が出て、収蔵庫全体の空気を均一に循環させています。
ここから排出された空気は、壁の低い位置に設けられた吸気口に吸い込まれて出ていきます。
肌で感じることができないようなわずかな流れですが、このようにして常に空気が循環しています。

 2 壁

⑴ 珪藻土(けいそうど)の壁
写真に写っている黄土色っぽい壁はただの壁紙ではなく、珪藻土でできています。
珪藻土はバスマット等でも身近な存在で、水を垂らしても一瞬で乾いてしまう様子を見て、その吸水性に驚いたことがある人は多いのではないでしょうか。
実は、珪藻土は水分を吸収するだけでなく、外に排出もする調湿機能を持っています。
周囲の空間が多湿になっているときは水分を吸収し、逆に乾燥しているときは水分を放出してくれます。
つまり、先ほど紹介した空調設備だけでなく、収蔵庫の空間全体を覆う壁そのものも空気を調整してくれているのです。

 ⑵ 二重壁

急激な温度の変化は、結露やひび割れの原因となり、資料に大きなダメージを与えます。
それを防ぐための設備が二重壁です。
画像でお見せすることはできませんが、新博物館の収蔵庫は二重壁で囲まれており、外壁と収蔵庫の間に狭い空間が設けられています。

二十壁の仕組み

 そして、この二重壁内部の狭い空間も、空調により一定の温度に保たれています。つまり収蔵庫は、温度が一定に保たれた空気のクッションに包まれ、守られているのです。
この空気のクッションのおかげで、屋外の温度が急激に変化しても、収蔵庫内部の空気が急激に変化することはありません。

このように、表からは見えない設備が、博物館の根幹である収蔵庫を支えています。

【終了しました】令和5年度松本まるごと博物館 第12期市民学芸員養成講座を開講します

博物館職員とともに、市民の博物館の学びをリードする人材を育成します。
 

対象

全9回の講座をすべて受講でき、野外での調査等に参加できる方
 

料金

1,500円(年間資料代 3回目の講座時に一括徴収します。)
 

定員

先着10人(要予約)
 

講座の日程

6月24日(土)、7月22日(土)、8月26日(土)、9月30日(土)、10月28日(土)、11月25日(土)、12月23日(土)、1月27日(土)、2月24日(土)
 
いずれも午前10時から午後4時まで
 
※日程は、都合により変更になる場合があります。

 

会場

松本市大手公民館など
 

講座内容

江戸時代の松本藩の武士について学び、令和6年度企画展のリーフレットを作成します。
 

申し込み・問い合わせ

6月6日(火)午前9時から電話で松本市立博物館へ
TEL:0263-32-0133

 

Vol.052 博物館の照明(R5.5.9文責:原澤)

博物館の展示で一番の主役は展示資料ですが、今回は、そんな展示資料の魅力や存在を際立たせる、博物館展示室の照明器具について紹介したいと思います。

 以前の博物館では、高い天井にある照明を調整することは、非常に大変な作業でした。脚立に上り、スポットライトを設置し向き調光を行い、展示資料や展示パネルが見やすくできているかを確認するという作業を複数人で行っていました。また展示室内での脚立などを使った照明の調整は、資料を安全な場所に移動するなど、資料や展示ケースを傷つけないように大変慎重に行っていました。展示資料が沢山であったり、展示室が広いとさらに大変で、展示作業の終盤に行う作業と言うこともあって、学芸員泣かせな作業でした。

今回新しい博物館の展示室に導入された照明器具は、ライトの向きや調光だけでなく、光の色の変更や配光の角度の調整など様々なことが、スマートフォンのアプリを使い、地上にいながらできるようになりました。

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スマートフォンの操作画面

今まで照明の調整にかけていた時間を短縮することができました。また、光色や配光角度を調整できるようになったことで、様々な演出もできるようになり展示の幅も広がりました。

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光色の変更(左2700K、右5000K)

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配光角度を狭めた状態

新しい照明器具を使い、より見やすく、魅力的な展示ができるよう頑張っていきたいと思います。開館後に博物館へご来館の際は、照明なども少し気にかけていただけると嬉しいです。

 

 

 

Vol.051 市民学芸員のフィールドワーク( R5.5.2 文責:本間)

 市民学芸員の皆さんは、博物館を母体に活動し、松本の魅力を発見し学んだり発信したりしています。ここでは、そんな市民学芸員の皆さんのフィールドワークの様子を紹介したいと思います。

 1 旧町名の会(仮題)

旧町名について学び、発信していくために結成された「旧町名の会(仮題)」では、4月1日に常法寺小路・観音小路のフィールドワークを行いました。

 (1)常法寺小路

山伏の寺、常法寺がこの通りの東側下々町の角にあったことに由来する小路です。

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ア 子育地蔵(摂取院跡)

江戸時代中頃、信濃の良寛さんといわれて慕われた、摂取院の和尚さんの徳を偲んで集まった浄財で造られたお地蔵様です。

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イ 宝栄寺

明治7年の大火で本堂は類焼しましたが、城主の信仰が厚く再建されました。明治の廃仏毀釈で廃寺にならずに残った数少ない寺院の一つです。

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(2)観音小路

和泉町から分岐する二つの小路の一つ。和泉町より大安楽寺の観音堂に通じる道であったので、この名称になりました。

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 ア 大安楽寺

真言宗の寺。観音霊場信濃百番。三十三番礼所めぐりの第一番札所となっており、歴代城主の祈願所でした。

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イ 岡宮神社

県下でも有数の歴史を誇る神社。江戸時代には、北深志の総鎮守として松本歴代藩主から信仰されました。

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2 犀川通船の会

山国信州での物資輸送は、中馬などの陸上交通が主でしたが、江戸時代も中頃になると、多量の物資を輸送する通船が登場しました。
犀川通船もその一つです。犀川通船について学び、発信していくために結成された「犀川通船の会」では、4月2日に犀川通船の船着き場をめぐるフィールドワークを実施しました。

 (1) 木戸(安曇野市)

現在の木戸簡易郵便局付近。木戸の船着き場があったと思われます。

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(2)山清路(生坂村)

現在の山清路公園内。 山清路の船着き場があったと思われます。

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3 おわりに

各フィールドワークを実施後、市民学芸員の皆さんから、「楽しかった」「勉強になった」という感想がありました。
フィールドワークを通じて、楽しみながら松本の魅力を発見することができたと思います。
今後は、今回発見した魅力や楽しさを、市民学芸員の皆さんと共に発信していきたいと思っています。

 

Vol.050 身近な自然を訪ねて(R5.4.25 文責:内川)

これまで松本市の自然については分館の山と自然博物館で発信をおこなってきました。リニューアルオープンを契機に総合博物館として、本館でも積極的に取り組んでいきたいと考えています。普段は山と自然博物館のあるアルプス公園の自然を観察し紹介しているのですが、市街地である本館の近くにはどんな生き物がいるのでしょうか。

ある日、博物館の軒下で、大きな昆虫を見つけました。

マダラガガンボ

比較のために十円玉を置いて撮影してみました。

 

これはマダラガガンボ(もしくはその仲間)で、幼虫は水辺の植物の根を食べて育つようです。こんな市街地で見かけるのは意外でしたが、おそらく博物館のすぐ近くを流れる女鳥羽川から飛んできたのでしょう。他にも川辺で見られる昆虫をたくさん見つけることができました。トビケラもカワゲラも幼虫期間を水の中で過ごす昆虫です。

カゲロウの仲間

四柱神社にいたカゲロウの仲間。昆虫の中ではかなり原始的な種類で不完全変態の昆虫です。

トビケラの仲間

旧開智学校跡のサクラの樹にいたトビケラの仲間。カワゲラとは違い幼虫から蛹を経て成虫になる完全変態の昆虫です。

 

 

昆虫がいるということは、それを食べるために野鳥たちも集まってきます。ちょうど子育ての時期ですので、巣を作る姿やエサを集める姿が見られました。

セグロセキレイ

セグロセキレイは珍しい鳥ではありませんが、川辺に依存する鳥です。

セグロセキレイ(ビルの上)

沢山の餌を加えてビルの上へ。付近に巣があるのでしょう。

ハクセキレイ

よく似たハクセキレイは市街地でもよく見られます。

ツバメ

泥がたまった場所でツバメのつがいが巣材を集めていました。

ツバメの巣

すぐ近くで営巣するようです。

川という環境があることで、川独特の生き物同士のつながりが生まれます。それは自然があまり豊かでない市街地でも変わりません。今回はそのつながりに着目して紹介をしましたが、他にも様々な生物を見つけることができました。開館後は博物館を拠点に、このような身近な自然も紹介していければと考えています。

Vol.049 思いを巡らせ、語り合う場所(R5.4.18 文責:宮下)

開館まで半年を切り、新しい博物館では展示をはじめ様々な準備が佳境に入ってきました。各所に必要なものが据えられ、私たち職員も館の姿が実感できるようになってきました。

さて、今回のコラムでは、より具体的になってきた館内から、訪れた人が博物館を通じて体感したことに思いを巡らせたり、誰かと意見を交流できるような場所についてご紹介します。

 1 エントランスホールのベンチシート

建物東側(大名町通り側)の入り口を入ると、建物の1階から3階まで連なる吹き抜けのエントランスホールが広がります。このエントランスホールには、2階へと続く階段がありますが、その片側半分は階段の形を利用したベンチシートになっています。野球場の観客席のように段々になったシートは、ホールに設けられた映像コンテンツを見るのに最適。見上げれば市民と共同で製作したてまりモビールが見えるなど、広々した空間が感じられる場所です。

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2 探求の井戸

3階常設展示室の中程に、「探求の井戸」というコーナーがあります。ここには、古くから松本城下の人々に利用されてきた「源智の井戸」をモチーフとした白い8角形のイスが3基設置されています。観覧者は、展示資料を周りに置くこの井戸の縁へ座り、井戸端会議を楽しむように展示について語り合えます。また、井戸の中には、それぞれメッセージが沈んでおり、ちょっと意外な問いかけがなされています。

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3 一階北側の通路

1階の北側には、市民交流スペースという、ベンチや丸テーブルが据えられた場所があります。講堂の北側にある動線から奥まったところにある通路ですが、スペースの北側のガラス窓は天井まで届き、空の高さが感じられる空間になっています。

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紹介したもののほかに、コラムvol.41で紹介した松本民芸家具のあるドリンクコーナーなど、随所にイスやテーブルが設けられています。館内には、時に一人で、時に誰かと気持ちよく過ごせる場所がきっとあるはず。開館の際には、ぜひお気に入りの場所を探してみてください。

Vol.048 松本城ボールコースター(R5.4.11文責:高木)

新年度が始まりました。10月の新博物館オープンを目指して、引き続きこのコラムを続けていきます。今日はアソビバ!の松本城ボールコースターについてです。

 ボールコースター全体

アソビバ!の西側に、中町の土蔵、馬場家住宅、松本城、旧開智学校校舎という松本の4つの特徴的な建物をモチーフにした造作を設置しました。それぞれの空間が小さな遊び場になっていて、松本城の中はボールコースターになっています。正面の5つの入口に木のボールを入れると、鈴を鳴らしたり、武者走りのような通路を走ったり、階段のシロフォンを鳴らしたりして、最後は石垣のところに落ちてきます。松本城を守るための防御設備だった石落としから石が落ちてくるようなイメージです。ボールを入れてから落ちてくるまで目を離せません。大人でも楽しめるボールコースターです。

このコースターをデザインし、模型を作って検討してくれたのは、てまりモビールのアートプロデュースをしてくれた小松宏誠さんです。てまりモビールでも模型を作って細やかに設計してくれましたが、今回も私たちの想像を上回る、さすが美術家という楽しい、美しい、設計をしてくれました。

ボールコースター3

松本城の格子窓をイメージした中央の黒い格子部分は後ろからライトがあたるようになっていて、走り抜けていくボールの影が美しく映り幻想的です。軽やかな音が気持ちいいシロフォンの階段も城内の階段を思わせます。赤い欄干はもちろん月見櫓のイメージです。木のボールを自分だと思って見ると、城内を駆け抜けるサムライになったようでワクワクします

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先日、育休中の職員が、つたい歩きを始めた1歳3か月の男の子を連れて訪ねてきてくれました。ママに抱っこされて入れたボールが、お城の中を転がっていく様子に大喜び。松本城ボールコースターを気に入ってくれた様子です。

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さらに、一番下に設けた入口に自分自身で立ってボールが入れられるとわかると、もう夢中です。しっかりと立って、背伸びして、何度も何度もボールを入れていました。自分でできたという喜びに溢れたその姿に、見ている私たちも感動しました。

博物館がオープンすれば毎日でもこんなシーンに出会えるでしょう。松本城ボールコースターはアソビバ!の人気アイテムになりそうです。