Vol.091 滝廉太郎「荒城の月」の編曲(R6.7.18 文責:竹藤)
今年度より新規採用となりました、竹藤(たけふじ)と申します。事業担当の一員として、本コラムの執筆をさせていただくことになりました。
学芸員の資格を持たない私ですが、大学・前職と文化芸術に携わってきましたので、今回は特に専門としている音楽(作編曲)についてお話ししたいと思います。
ちょうど最近まで、滝廉太郎《荒城の月》の編曲に取り組んでいました。音楽の教科書でもおなじみの楽曲ですが、今回は独唱から混声3部合唱(ソプラノ・アルト・男声+ピアノ)への編曲です。
楽譜が完成するまでの過程を、順を追って見ていきましょう。
まずは、編曲の方向性を確認しておきます。特に、原曲のイメージを崩すことなく、楽器編成や演奏形態のみを書き換える「トランスクリプション」なのか、編曲者の自由な発想のもと、原曲の要素を用いながら再構成していく「アレンジメント」なのかという点は重要です。
今回は後者ですが、次のようなオーダーをいただいていました。
ひとつは、男声の音域に制限があること。低い音域を出すことが難しい合唱団ということでした。また、1番は原曲のまま進行し、2番以降(4番まであります)の雰囲気を変えてほしいというご要望もありました。
内容からすると、難解な楽譜をどんどん読んでいくというよりは、比較的やさしい曲を楽しんで歌おうという合唱団と推察されます。普段からお付き合いのある団体というわけではないため、もちろん推測の域を出ませんが、少なくとも歌のパートについてはシンプルにしようと考えました。
検討の末、ピアノ伴奏に別楽曲の要素を混ぜることで、変化をつけていくアレンジとしました。具体的には《荒城の月》ということで、安易ながら「月」にまつわる楽曲をいくつか選びました。
1番については、リクエスト通り原曲の雰囲気が残っていますが、同じく滝廉太郎の名曲「花」の伴奏形を用いています。
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2番に登場するのは、C.ドビュッシー《月の光》です。
原曲は9/8拍子で、4/4拍子からはやや遠い拍感ではありますが、6連符主体のリズムへ変化することでアレンジが効いてきました。和声を《荒城の月》に合わせて変更したり、拍子の合わないところは素材を挿入したりと、断片的・複合的に使用しました。
同様の音型は後奏にも登場し、楽曲をしめくくります。
また、3番にはジャズ・スタンダードである《フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン》を引用しました。これは嬉しい誤算だったのですが、原曲のコード進行をほぼ変えることなくミックスさせることができました(《荒城の月》の旋律が《フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン》の和音に偶然合っていた)。
最後に、全体のバランスを整えます。
各回が異なるアレンジになることで、展開が唐突になってしまったり、うまく流れずまとまりのない印象になってしまったり…という危険が出てきます。それらをゆるやかにつなげるブリッジとして、間奏にはL.v.ベートーヴェン《ピアノソナタ第14番》(月光)の第3楽章の一部を用いました。クラシックからジャズへの連結を違和感なく、しかも拍感を元に戻さなければならないというところで苦心しましたが、同曲がカデンツァ(終止部の直前に入る技巧的な独奏)のような役割を果たしてくれました。
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編曲は作曲と違い、もとになる原曲があります。0から1を生み出す作業とは趣が異なりますが、やはり多くのことを考えながら進めていく大変さがあります。
今回は自己紹介も兼ねて、普段の音楽活動の一部をご紹介いたしました。身の回りに「作曲をやっている」という方はなかなかいらっしゃらないと思いますが、こうした作品の裏側の部分について、少しでも知っていただくことができれば幸いです。
まだまだ未熟ではございますが、これから自身の強みも活かしながら、博物館事業に貢献できればと思います。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。
※今回の編曲には、原則としてパブリックドメインの楽曲を使用しているほか、著作権関連の許諾が必要な場合については依頼主に一任しております。
講演会 「松本市のアリとくらす虫たち・その魅力と現状」
企画展「生物多様性と松本ーすぐとなりにあるワンダーランドー」関連イベント
講演会「松本市のアリとくらす虫たち・その魅力と現状」
話題の昆虫学者・小松貴氏による講演会。実際に松本市内で見つけた、アリと暮らす多様で奇妙な昆虫たちについてお話していただきます。
日時 7月20日(土)午後1時30分~午後3時
会場 松本市立博物館 講堂
定員 80名(要申込み)
料金 無料
申込み LoGo フォーム(下記 URL)より7月17日(水)までにお申込みください。
https://logoform.jp/form/N7tm/622342
※申込み多数の場合は抽選となります。
抽選となった場合の可否は18日(木)までにメールにてお知らせします。
企画展「生物多様性と松本ーすぐとなりにあるワンダーランドー」
会 期
2024(令和 6) 年 7 月 6 日(土)~ 9 月 2 日(月)
閉室日:毎週火曜日、ただし8月13日火曜日は臨時開室日となります。
会 場
松本市立博物館 2階特別展示室
開館時間
9:00 ~ 17:00(最終入室は16:30まで)
観覧料
大人 800円 (600円)
大学生・市内在住の70歳以上の方 600円 (500円)
高校生以下 無料
※( )内は団体20名以上の料金
※本展観覧券で3階常設展示室もご覧いただけます。
展覧会概要
世界にはさまざまな姿形をした生きものたちがいます。彼らは互いに食べたり、利用した
り、競合したりと影響しあいながら生活しています。このような生きもの同士の違いと、そ
のつながりを「生物多様性」といい、私たち人間はそこからさまざまな恵みを得て暮らして
います。しかし、近代以降の人間の活動により、生物多様性は急速に失われ始めました。
私たちの暮らす日本は、世界でも有数の生物多様性の高い地域「ホットスポット」です。
そして松本市とその周辺は、高山から平地まで広がる多様な環境にさまざまな生きものが
生息していることから、全国的に見ても生物多様性が高い地域、「ホットスポット」の中の
「ホットスポット」と言えます。「松本市の宝」ともいえる生物多様性を紹介する企画展示
です。
第1章 生物多様性とは
多様性(diversity)という言葉のとおり、生きものたちの姿形や性質など多種多様です。
そんな多様性がどう形作られるのかと、生物多様性を考えるうえで重要な 3 つの視点を、
国内外のさまざまな生きものを通じて紹介します。
写真家・山口大志氏による南米・アマゾンの生きものの写真作品も展示しています。
第2章 生物多様性の恵み
私たち人間は、日ごろから生きものやその生態系からさまざまな恵みを受けて生活しています。
「生態系サービス」と呼ばれるその恩恵を松本市に関係のあるものなどから紹介します。
第3章 生きものあふれる松本
松本市には具体的にどのような生態系と生きものが息づいているのでしょうか?
市内で特徴的で観察しやすい自然がある場所と、そこに暮らす生きものを紹介します。
第4章 変わりゆく環境
私たち人間の手で急速に失われつつある生物多様性。そんな変わりゆく松本市の環境・生
きものたちを紹介します。
第5章 未来に向けて
人間の営みの中で複雑に関わり合う生物多様性。では生物多様性を守るために我々がで
きることとは、どんなことでしょうか?
企画展関連イベント
講演会 1「松本市のアリとくらす虫たち・その魅力と現状」
講師 小松貴氏(昆虫学者)
日時 7月 20 日(土)午後1時 30 分~3 時
会場 松本市立博物館 講堂
定員 80名(要申込み)
料金 無料
申込み LoGo フォーム(下記 URL)より7月17日(水)までにお申込みください。
https://logoform.jp/form/N7tm/622342
※申込み多数の場合は抽選となります。
抽選となった場合の可否は18日(木)までにメールにてお知らせします。
講演会 2「生物多様性研究最前線」
講師 東城幸治氏(信州大学副学長・理学部教授)
日時 8月 17 日(土)午後1時 30 分~3 時
会場 松本市立博物館 講堂
定員 80名(要申込み)
料金 無料
申込み LoGo フォーム(下記 URL)より8月9日(金)までにお申込みください。
https://logoform.jp/form/N7tm/622406
※申込み多数の場合は抽選となります。
抽選となった場合の可否は13日(火)までにメールにてお知らせします。
自然観察会1「国蝶オオムラサキを見よう!~アルプス公園・蝶の観察会~」
日時 7 月 13 日(土)午前 8 時 30 分~10 時 30 分
集合 アルプス公園・森の入口広場
定員 15 名(要申込み)
料金 無料
申込み LoGo フォーム(下記 URL)より7月10 日(水)までにお申込みください。
https://logoform.jp/form/N7tm/622437
※申込み多数の場合は抽選となります。
抽選となった場合の可否は11日(木)までにメールにてお知らせします。
自然観察会2「空飛ぶ宝石を探そう!~8月はハチの観察会~」
日時 8月3日(土)午前9時~10 時 30 分
集合 アルプス公園・森の入口広場
定員 15 名(要申込み)
料金 無料
申込み LoGo フォーム(下記 URL)より7月 26 日(金)までにお申込みください。
https://logoform.jp/form/N7tm/622555
※申込み多数の場合は抽選となります。
抽選となった場合の可否は 30 日(火)までにメールにてお知らせします。
ギャラリートーク
日時 ①7 月 27 日(土)午後2時~3時 ②8 月 10 日(土)午後2時~3時
料金 本展観覧料
申込み 不要
お問い合わせ
松本市立博物館
TEL 0263-32-0133
FAX 0263-32-8974
10月開催『和食展』関連事業 「和食の記憶大募集!!」応募要項
あなたの、これまでの人生で忘れられない和食と、それにまつわるエピソードを教えてください。その驚きや感動、思い出を博物館の展示として共有します。
テーマ
「これまでの人生で忘れられない和食と、それにまつわるエピソードを教えてください。」
内容
忘れられない和食の名前と、なぜそれが忘れられないか、その理由となる体験や思い出、エピソードを記してください。
❖ 和菓子、郷土料理、懐石料理、すし、てんぷら、そばなどだけではなく、オムライスやナポリタン、カレー、焼き餃子、ラーメンといった日本生まれ・日本で独自に発展した洋食・中華も対象です ❖
応募要項
⑴ 日本語での作品に限らせていただきます。
⑵ 文章、絵どちらでも結構です。文章、絵とも様式は自由です。
⑶ 作品には、氏名、連絡先を明記してください。
※ 文章の場合は、本文の前か後に記載してください。
※ 絵の場合は、用紙の裏面など、作品にかからない場所に記載してください。
⑷ 文章の場合は200字程度としてください。
⑸ 絵の場合は、和食の名前と忘れられない理由を文章で補足してください。
対象
どなたでも
応募期間
令和6年7月6日(土)~7月31日(水)
作品の公開について
応募いただいた作品は、令和6年10月5日(土)から12月8日(日)まで開催する松本市立博物館特別展「和食展」の展示に使用します。
応募多数の場合は抽選により数点を展示し、その他は付属資料として来館者に配布します。
注意点等
応募にあたっては、以下の事項を予めご了承ください。
※ 日本語での応募、自作・未発表の作品に限ります。
※ 応募多数の場合の抽選結果は、「和食展」での展示をもって代えさせていただきます。
電話やメールでの抽選結果のご質問にはお答えできませんので、ご了承ください。
※ 応募に関する個人情報は、応募作品に関する連絡以外には使用しません。
※ 応募いただいた作品は返却できませんので、ご注意ください。
※ 展示・配布にあたってはイニシャルのみの記載とし、匿名で公開します。
※ 氏名、連絡先の明記が無いものは、展示・配布の対象外とします。
※ 盗作、二重投稿は固くお断りします。
※ 応募作品の使用に関する権利は松本市立博物館に帰属します。併せて、松本市立博物館の「和食展」以外の展示やインターネット上で使用したり、その他媒体で使用する場合があることをご了承いただきます。
※ 特定商品や店舗の宣伝、営利目的の応募、政治的なメッセージ、その他公序良俗に反する内容など、博物館の展示趣旨にそぐわない作品は展示および配布の対象外とします。
応募方法
松本市立博物館へFAX、メール、郵送もしくは持参により提出してください。
送付先
松本市立博物館
〒390-0874松本市大手3-2-21
電話:0263-37-1150
FAX:0263-32-8974
E-mail:mcmuse@city.matsumoto.lg.jp
Vol.090 収蔵資料の紹介「風也焼」( R6.6.25 文責:石井 )
「風也(ふうや)」とは水崎佐次兵衛という武士の号です。風也は犬甘城址(いぬかいじょうし)に花守として常住していた武士でした。
天保13年(1842年)に松本城主戸田光庸(みつつね)が領民から幕府領御預100年の祝賀を受け、その報謝として翌年犬甘城址に桜や楓を植樹して領民に開放しました。これが現在の城山公園(じょうやまこうえん・松本市特別名勝)の起源です。
『東筑摩郡 松本市・塩尻市誌』によると、花守となった風也は城山に窯を構え、楽焼をはじめました。茶器、七輪、コンロ、釣灯籠、壺などを作り、好評を博したそうです。住居、窯は転々としながら2代3代と続き、作った恵比寿や大黒などは飴市の際のこどもの売物にもなったそうですが、4代風也で途絶えました。
当館収蔵の風也焼のうち、松本民芸館創設者の丸山太郎氏寄贈資料を紹介します。
福禄寿とだるまです。だるまは前後と上面に葉を押し付けた跡があります。福禄寿は高さが22.5㎝あります。
郡誌にも記載のある焜炉(こんろ)です。持ち運び可能な小さな炉です。中が段になっていて、つけ外し可能な素焼きの網状のものが付属しています。網状のものの上に炭を置いて使用したようです。
朱色の釉薬が鮮やかな植木鉢です。裏面の刻書は、箱書きによると「一葉庵風也作」と読むようです。
Vol.089 大人もアソビバ! ( R6.6.12 文責:髙木 )
昨年10月7日にオープンしてから、5月までの8か月間で、アソビバ!の利用人数は18,000人を超えました。お子さんとその保護者の方々のたくさんの笑顔に支えられていることを思うと感慨深いものがあります。今日は、その笑顔の中から、撮影許可をいただいたお子さんの様子を紹介したいと思います。
写真をとっていて特に感じたのは、お母さんはもちろんお父さんたちの子どもを見守る目のやさしさです。お父さんとお子さんという組み合わせがとても多く感じます。子どもだけでなく、大人にとっても居心地の良い場所を目指していますので、大人のためのアソビバ!でもあると思ってもらえると嬉しいです。
入室時にお配りするリーフレットはスタンプカードにもなっていて、古荘風穂さん原画のスタンプが10個用意されています。1回利用ごとにスタンプを押してもらい10個の枠が全部うまったら、ささやかなプレゼントがあります。親子で笑顔になるように、ぜひ、何度でも足を運んでください。
Vol.088 展示ガイドをご利用ください ( R6.5.25 文責:會田 )
皆さんは博物館施設などで展示ガイドを利用した経験はありますか?
端末を利用して展示資料の写真を表示したり、イヤフォンで音声キャプションを聴いたり、変わり種になると展示をイメージした音楽が流れてきたり・・・各館様々な特徴がありますが、今回は当館の展示ガイドについてご紹介いたします。
ポケット学芸員を利用した展示ガイド
当館の常設展示室ではミュージアム展示ガイドアプリ「ポケット学芸員」で展示ガイドをご覧いただけます。ご自身のスマホにアプリをダウンロードした後、画面に従って展示室内にあるガイド番号を入力することで、いつでも気軽にお手元で展示ガイドをご覧いただけます。(音声なし、要ネット接続)
市民ガイドによる展示案内
昨年度の市民ガイド養成講座を修了した皆さんが、新しい博物館のオープンとともに市民ガイドとしてスタートし、連日精力的に活動しております。
「常設展示室は2回目の訪問」、「もっと違う視点で松本の歴史を知りたい」、「展示について質問したい」と思われたお客様は、ぜひ市民ガイドによる展示案内を体験してみてください。
彼らの深い知識と巧みな話術で、まるで一つの物語を聞いているかのように松本の歴史や文化、はたまた「アレ」や「コレ」を楽しく知ることができます。
市民ガイドはいうならば、「松本の物語の語り手」、ストーリーテラーです。話しに耳を傾け、時には対話することで、展示室という場で「ゆるく」つながる体験をして頂けます。
お客様の知識を深め、見どころ情報を集めて松本観光の出発点としてみてはいかがでしょうか。
展示ガイドの楽しみ方は千差万別、お客様のスタイルに合わせて楽しんでいただけるよう工夫しております。ぜひ皆様のご利用をお待ちしております!
5月に「市民ガイドによる常設展示ガイドツアー」が行われ、各日ともに大勢のお客様にご参加いただきました。その様子をお伝えします。
入口の大きな年表が物語の入口です。
メイン展示の一つ、城下町ジオラマをガイド中
展示ガイドの楽しみ方は千差万別、お客様のスタイルに合わせて楽しんでいただけるよう工夫しております。ぜひ皆様のご利用をお待ちしております!
Vol.087 「甲冑着付け体験」を実施しました ( R6.5.16 文責:吉澤 )
松本市立博物館では「甲冑着付け体験」を令和6年4月27日(土)~29日(月・祝)、5月3日(金・祝)~6日(月・祝)の7日間にわたり実施しました。
こちらは現在開催中の「収蔵品展 戸田家臣団―松本藩最後の武士団―」にあわせて企画した関連イベントです。
昨年1月に赤廣三郎氏よりご寄贈いただいた手作りの甲冑レプリカを使い、本格的な着用方法で当時の武士になりきっていただきました。
本物と見間違えてしまうほど精巧に作られたレプリカの甲冑たち。素材は鉄の代わりに軽いプラスチックを使用しているため、お子様でもご着用いただけます!
松本藩主・戸田家の甲冑は常設展にて、戸田家臣・松崎家の甲冑は企画展にてそれぞれ展示中の資料をモデルに制作していただきました。
過去のコラムでは甲冑レプリカ贈呈式の様子をご紹介しておりますので、是非こちらもあわせてご覧ください。
イベントを盛り上げる小道具や事前準備も手を抜きません!
より多くの方に戸田家臣たちの世界を楽しんでもらえるよう、企画展の展示資料を模した軍扇や、展示資料『御家閑集』に記された松本藩戸田家の旗や法被(はっぴ)なども再現してみました。
職員も会場設営のほか、事前に着用手順を確認しあい、万全の準備を整えます。
当日はゴールデンウィークということもあり、たくさんのご家族、国内外からの観光客の方々にお越しいただき、500人を超える参加者の皆様にお楽しみいただけました。
参加者の中には、「ずしっとした重みがあるけれど、気持ちが引き締まる感じがします。」という感想をくださった方もいらっしゃいました。
幕末に甲冑揃えをおこなったという戸田家臣たちも、鎧に身を包みながら、この先起こる戦闘に向け気合を入れていたのかもしれません…。
イベントを通して、当時の武士たちや展示資料の甲冑にも親しみを持っていただけたら幸いです。
今回のイベントで活躍した甲冑や小道具の実物も展示されている「収蔵品展 戸田家臣団―松本藩最後の武士団―」は令和6年6月17日(月)まで開催中です。新館開館後初の収蔵品展。150年以上にわたって松本藩を支え続けた戸田家臣団の軌跡とともに、当館自慢の資料をぜひご覧ください!
Vol.086 第4回博物館まつりを開催しました(R6.4.26 文責:武井)
令和6年3月17日、第4回博物館まつりが開催されました。
博物館まつりとは、松本市立博物館やその分館を母体として活動されている市民の皆さんによる成果発表イベントです。
新博物館が開館してから初めての博物館まつりということもあり、博物館まつり実行委員会の皆さんを中心に試行錯誤しながら準備が進められてきました。
今回は、博物館まつり当日の賑わいをご紹介します。
1 まる博deウォーキング
「城下町の名残を探しに行こう」をテーマに、松本城の南東コースと北コースに分かれ、2時間半ほどのウォーキングを実施しました。
どちらのコースもほぼ定員いっぱいのお申し込みをいただき、大所帯でのウォーキングとなりました。
同行した学芸員は、「予定時刻ぴったりに博物館に帰ってこられてすごい!」と、市民学芸員の皆さんによる手慣れたガイドに驚いていました。
2 ワークショップ
今回の博物館まつりでは、市民学芸員オリジナルワークショップの「七夕人形・カータリ人形ワークショップ」、「松本だるま大當ワークショップ」の2つと、友の会主導で講師をお招きした「竹細工ワークショップ」を実施しました。
いずれのワークショップも好評で、竹細工ワークショップは満員御礼、七夕人形・カータリ人形、松本だるま大當も大勢のお客様にお越しいただき、準備していたキットが午前中に終了してしまったものもありました。
反省会では、「もっとワークショップを増やして、たくさんのお子さんに来てもらいたい」という意見が出ました。次回の博物館まつりではもっとたくさんのワークショップをお楽しみいただけるかも…?
3 報告会・ギャラリートーク
市民学芸員の皆さんによる調査研究の成果発表を行いました。今回、報告会・ギャラリートークの形で成果発表したのは犀川通船グループ、化石グループ、まつもと六地蔵調査会の3グループです。
反省会では「もっと会場の皆さんと意見交換する時間を設ければよかった」「どうすればより多くの人に関心を持ってもらえるのか、考えるのが難しい」といった反省が出ましたが、いずれも次回の発表会を見据えた前向きな意見でした。
「想像以上に多くの方にお越しいただいて嬉しかった」という感想もあり、今後の調査研究や発表に向けて大きな活力となったのではないでしょうか。
4 戦争紙芝居読み聞かせ
2階の図書情報室において、戦争紙芝居のレプリカ展示、関連絵本の展示等と合わせて、友の会の皆さんによる戦争紙芝居の読み聞かせが行われました。
戦時中、軍の宣伝のために作られた紙芝居で、内容は子ども向けですが、「大人の参加者が多かったのが印象的だった」という感想が反省会で出されました。
展示しているレプリカや絵本をじっくりと読むお客様の姿も多くみられました。
5 常設展示クイズ
友の会の皆さんオリジナルの常設展示クイズを実施し、解答者にはオリジナルの松本藩主家紋缶バッジをプレゼントしました。
準備していた缶バッジはほぼすべてなくなりましたが、中でも松平氏の葵紋と、石川氏の笹竜胆紋が人気だったようです。「ドラマの影響で石川氏が人気だろうから、多めに作っておこう」という友の会の推測が見事当たった形となりました。
6 ポスター展示
市民学芸員の皆さんによる調査・研究の成果や、友の会の皆さんによる活動紹介を、ポスター展示にて発表しました。
今回ポスター展示を実施したのは、犀川通船グループ、化石グループ、お蚕組、七夕人形グループ、戦争紙芝居グループ、城下町町名の会、まつもと六地蔵調査会、友の会古文書部会の8グループで、ポスターデザインやレイアウト等も各グループが一から検討し、展示しました。
ポスターを観覧されているお客様にお声がけして解説をしたり、アンケート調査を実施したり、実物資料も一緒に展示したりと、各グループごと特色のある展示となりました。
7 展示解説
松本市立博物館の常設展示および歴史の里の館内で、ガイドツアーを実施しました。
展示ガイドは日常的に実施していただいていますが、まつり当日は集合時間を設定し、いつもよりもじっくりと時間をかけたガイドを行っていただきました。
参加者の出身地によって解説をカスタマイズしたり、参加者のその日の予定を鑑みて内容を調整したりと、熟練のガイドさんたちによる贅沢なガイドとなりました。
以上、第4回博物館まつりの様子をざっくりと紹介いたしました。
手探りで進めた部分もありましたが、当日は大きなアクシデント等もなく、新博物館が開館して初めての博物館まつりということあり、たくさんのお客様にお越しいただくことができました。
しかし、反省会では「次回はもっと多くの人に来てもらうために広報に力を入れたい」、「こどもにたくさん来てもらうためには開催時期も検討したほうが良いのでは」等々、次回に向けた反省点や改善点もたくさん出されました。
向上心を忘れず、常に良いものを作り上げようとする皆さんの姿勢に、私も気が引き締まる思いです。
今年も開催のお知らせができるよう準備を進めてまいります。第5回博物館まつりをお楽しみに!
Vol.085 展示に必要なあの脇役( R6.4.1 文責:岡 )
突然ですが皆さん、博物館の学芸員というとどのような仕事内容をイメージするでしょうか?収蔵品や展示品について説明や紹介をしているイメージ?それとも展示や発表に向けて日々研究しているイメージでしょうか?あるいはこの学芸員コラムをご覧の方なら、今までご紹介した内容について思い浮かべたかもしれません。
もちろん、それらは貴重な資料の保存・研究・展示を生業にしている学芸員にとって、重要な使命の一つと言えます。ですが雑芸員(ざつげいいん)とも揶揄される通り、学芸員と一口に言っても日々の業務は多岐にわたります。今回のコラムではその内の一つ、特に展示前になると忙しくなるあの仕事についてご紹介します。
博物館や美術館へ訪れた経験のある方なら、こんなパネルに見覚えがありませんか?
これらのパネルは掲載内容によって、章パネル・解説パネル・キャプションなどと呼ばれていて、当館では特別な理由を除き基本的に学芸員が全て手作りしています。(材質や大きさによっては業者に発注する場合もあります。)展示の規模にもよりますが、大小様々なパネルが数十枚単位で作成され、昨年度行われたまつもと博覧会展では合計200枚以上のパネルが用意されました。
パネル作成では主に以下のようなものが使われます。茶色い板状のものはのり付きパネルと言って、片面に粘着力があり、紙を貼り付けられます。
パネルは基本的に以下の手順で作成しています。
① 原稿を手頃なサイズに切る
② のり付きパネルを原稿より一回り大きく切り落とす
③ 一部粘着面を切り出して原稿が中心にくるように貼りつける
④ 原稿全体をのり面に貼り付ける
⑤ 余計な部分を切り落とす
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完成!
一見簡単そうに見えますが、学芸員でもコツが掴めるまでなかなか苦戦します。手慣れた人だと形やスピードが洗練されているので、パネル切りならあの人に任せよう!となる場合もあります。ですが大きな展示前には学芸員総出で作業をすることが多いです。
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定規や目安がズレるときれいな長方形パネルにならないので、力加減を調整しながら、全身を使って作業します。
完成したパネルはミリ単位で何度も調整しながら、なるべく鑑賞の妨げにならないよう整然と並べていきます。(過去のコラムでは展示照明についても紹介しています。
Vol.052 博物館の照明(文責:原澤)(2023.5.9更新)
博物館や美術館と言えば、美しい資料や興味深い内容へ目が行きがちですが、脇役のパネルにも学芸員のこだわりが詰まっています。次に訪れた際はそんなことも意識しながら鑑賞してみるのはいかがでしょうか?