Vol.115 重要文化財馬場家住宅の紹介 その2 ( R7.9.4 文責:石井 )

 今回は、馬場家15代当主馬場称(しょう)徳(とく)を紹介します。
 馬場称徳は明治15年(1882)に生まれ、旧制松本中学、東京外国語学校等を経て外交官となりました。

馬場称徳

馬場称徳

 称徳がシカゴの日本領事館に書記生として勤務していた大正3年(1914)、革命が起こっていたメキシコに派遣され、外交官の身分を隠して業務を遂行するという困難な命令を受けます。
 在メキシコ公使館の安達公使からの指示は、「貴官ガ何等帝国政府ニ関係ナク官吏タル資格ヲ離レ、決シテ政府ニ累ヲ及ボサザル方法ヲ以テ交渉セラルハ可ナレドモ、然ラザル限リ不可ナリ」というものでした。
 これは、日本政府が革命軍を承認していない以上、政府の交渉相手として認めるわけにはいかなかったためで、称徳はあくまで私人として革命軍と交渉することになりました。

 そのような中、称徳は日本人捕虜救助と日本人移民の避難に尽力しました。

 明治以来、メキシコに移民した日本人の中には、政府軍に登用され、革命軍と戦闘して捕虜となった人もいました。称徳は革命軍リーダーの一人、パンチョ・ビリャと交渉し捕虜の生命と日本人の安全を確保しました。
 また、革命の動乱で困窮していた日本人移民を国境を越えて移住させ、900人以上を救いました。 

略年表
地図

 称徳の活躍は小説の題材にもなっています。

本

 重要文化財馬場家住宅の文庫蔵にある展示室には、称徳について紹介するコーナーがあります。