特別展「春を待つ涅槃図」関連イベント「早春の行事食 やしょうま作り」
お釈迦さまの命日にお供えされる郷土食「やしょうま」をつくります。
日時
令和7年2月11日(火祝)午前10時から正午(予定)
会場
大手公民館 料理実習室
※無料駐車場はありません。近隣の駐車場をご利用いただくか、公共交通機関をご利用ください。
参加費
一人300円
定員
5組程度。1名でも参加可。小学生以下は保護者同伴。 申し込み多数の場合は抽選となります。
持ち物
エプロン、マスク、三角巾(バンダナなど)、ふきん、台ふきん(タオルでも可)
申し込み方法・期間
令和7年1月6日(月)~20日(月)の間にQRからお申し込みください。
21日以降、メールにて参加の可否をお知らせします。
その他
・おもな原料は米粉ですが、製粉の工程でそば、小麦、大豆が含まれる場合があります。
・ごま、クルミの入ったやしょうまの試食もあります。
特別展「年越し新春刀剣展 ~我が家の名刀・刀装具~」
会 期
2024(令和 6) 年 12 月 20 日(金)~ 2025(令和 7)年 1 月 20 日(月)
閉室日:毎週火曜日、12/29(日) ~ 1/3(金)。ただし1月1日(祝日)(午前10時 ~午後3時 (入室は午後2時30分まで))は臨時開室日となります。
会 場
松本市立博物館 2階特別展示室
開館時間
9:00 ~ 17:00(最終入室は16:30まで)
観覧料
無料
展覧会概要
今回の展示は松本市立博物館と日本美術刀剣保存協会長野県南支部の共同開催で行われ、会員の所蔵刀45点と刀装具など合わせて約100点を無料で展示公開します。各会員が厳選した愛刀の中には、「来国行」「来国俊」「来國次」といった鎌倉時代の来派の名刀や「福岡一文字」「片山一文字」といった備前の名刀、また、松本平で作られた江戸時代の名刀、工芸の粋を凝らした刀装具なども展示します。現在日本で最も優れた刀匠「宮入法廣」氏が松本城400年祭を記念して作刀した太刀も展示し、1月12日には刀匠を迎えて座談会を開きます。1月11日13日にはギャラリートークを、11日から13日には会員が常駐して刀に関する皆様の質問にもお答えします。刀剣が好きな人もそうでない人も必ず新しい発見があると思いますのでぜひ会場にお越しください。
関連イベント
座談会「刀匠に聴く」
講師 宮入法廣氏(刀匠)
日時 1月 12 日(日)午後1時 30 分~3 時
会場 松本市立博物館 講堂
定員 80名(申込み不要、先着順)
料金 無料
刀剣よろず相談所
講師 日本美術刀剣保存協会長野県南支部の会員
日時 1月 11 日(土)・12 日(日)・13 日(祝)午前10 時~正午
会場 松本市立博物館 2階特別展示室
料金 無料
ギャラリートーク
日時 ①1 月 11 日(土)午後 1 時 30 分~2 時 30 分 ②1 月 13 日(祝)午後 1 時 30 分~2 時 30 分
料金 無料
申込み 不要
お問い合わせ
松本市立博物館
TEL 0263-32-0133
FAX 0263-32-8974
Vol.098 特別展調査で拓本を取りました(R6.12.10 文責:武井)
学芸員の数多くある業務の中の一つに、特別展・企画展に向けた資料調査があります。
かくいう私も、来年度の特別展に向けて、松本市内の十王様※の調査をさせていただいています。
※ 十王とは:死後、冥界において死者の罪を裁く十人の王。皆さんご存じの閻魔大王も十王のうちの一人です。十王の裁きによって転生先が決まります。生前に「五逆罪」と呼ばれる大罪を犯すと、最下層の「阿鼻地獄」に堕とされ永劫の苦しみを受けますので注意しましょう。
松本市内の十王は、木造の丸彫り像か石造の丸彫り像に大別されますが、一点だけ、石に線刻された閻魔大王像が確認されています。
今回、この閻魔大王像の拓本を取らせていただく機会に恵まれましたので、その様子をご紹介します。今回採拓させていただいたのは、松本市波田に所在する「線彫閻魔王坐像」(松本市重要文化財)です。
大きな自然石に閻魔大王の姿と銘が刻まれています。
閻魔大王は、両手のひらを前に向けたポーズで、眉を吊り上げ、目を見開き、口を開いています。亡者に対して一喝しているのでしょうか。亡者を裁き、時として地獄に堕とす閻魔大王は恐ろしい姿で表されることが多いのですが、この閻魔大王はどことなくユーモラスで親しみを感じます。
閻魔大王の両隣には「天正二年七月吉日甲戌/本願 越前住經聖」と刻まれています。
この銘文から、天正二年(1574)、越前(福井県)の僧・經聖が建てたことが分かります。かつて波田に存在し、「信濃日光」と称された若澤寺への巡拝の際に建てられたと考えられています。
450年ほど前に建てられた石造物ですが、大きな破損や欠落もなく、現在も肉眼で線刻を確認することができます。
とはいえ、表面には地衣類が生え、光のあたり加減によってはうまく見えないこともしばしば…。そこで威力を発揮するのが「拓本」です。
拓本とは、凹凸のあるものの上に紙を乗せ、墨などでその凹凸を写し取る転写方法の一つです。表面の凹凸情報を正確に写し取ることができるため、文化財調査では欠かすことのできない記録手法です。
鉛筆や固い墨などでこすって写し取る方法を乾拓といい、紙を水で密着させ、乾ききる前に墨を乗せる方法を湿拓と言います。石造物の調査においては多くの場合湿拓が用いられます。今回の調査でも湿拓を採用しました。
今回は以下の手順で、2人で拓本を取りました(人によって流儀は異なります)。
① たわしなどで石造物表面をきれいにする。
② 画仙紙を石造物の大きさに合わせてカットする。
③ 画仙紙の位置を決めたら、霧吹きでまんべんなく濡らして固定する。
④ 丸めたタオルなどで画仙紙をたたき、凹凸にしっかり入れ込む。
⑤ 画仙紙が少し乾いたら、タンポに墨をつけもう一つのタンポとすり合わせる。
⑥ タンポで画仙紙にやさしくムラなく墨をつけていく。
⑦ 墨をつけられたら、石造物から画仙紙をはがす。
⑧ はがした画仙紙を新聞紙に挟む。
なお、作業に必死だったため、拓本中の写真はありません。
そうして出来上がった拓本がこちらです。
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2人とも5年以上ぶりの拓本で、現地では「久々の拓本の割にはうまくできたのでは?」と言い合っていましたが、博物館へ持ち帰り、乾ききった状態で見てみたところ、しわが寄ってしまっていたり、ムラができてしまっていたり、少しにじんでしまった箇所があったりと、反省点が次々と…。拓本においても日々の鍛錬が重要であることを痛感しました。
今回は時間の都合でこの一枚しか採拓できませんでしたが、機会があればもう一度チャレンジさせていただきたいと考えています。
拓本は、今回紹介した石造物だけでなく、金属や木材からも取ることができ、道具がそろえばだれでも取ることができます。興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。
※拓本を取るときは、必ず所有者に許可を得てから行ってください。
(今回は市指定文化財であるため、所有者と市文化財課に許可を取っています。)
また、傷つけたり墨で対象物が汚れたりしないよう、細心の注意を払ってください。
「松本城野鳥観察会」開催のお知らせ
松本市立博物館では「松本城野鳥観察会」を開催します。
日 時 令和7年1月11日(土)午前9時30分~午前11時00分
場 所 松本市立博物館・松本城公園(集合:松本市立博物館講堂)
講 師 松本市立博物館職員
内 容 松本城の堀で見られるカモの仲間を中心に松本城で見られる野鳥についての講義のあと、
実際にお城の周りを回りながら野鳥を観察する、初心者向けの観察会です。
参加料 無料
持ち物 野外を歩きやすい服装、筆記用具、雨具、帽子、あれば双眼鏡など
定 員 15名(応募多数の場合抽選になります)
申込み 令和6年12月6日(金)9時から26日(木)まで
以下の二次元コードかこちらの申込フォームより
Vol.097 博物館で積読? ( R6.11.18 文責:岡 )
松本の散策後や展示を見た後に座って一息つきたい…そんな時は、松本市立博物館の図書情報室でゆっくり本を読むのはいかがでしょうか?
図書情報室は当館2階の特別展示室前、大名町通りを見下ろす見晴らしのいい空間にあります。名前の通り、備え付けの本棚には図書がディスプレイされていて、どなたでもご自由にお読みいただけます。(当館は2階3階でも展示室前までなら無料でお入りいただけます。)
ところでこの図書は、本棚の区画ごとにカテゴリー分けされています。このカテゴリーは松本に関連するものを中心に、「城」や「山」、「建築」、「音楽」など20種類以上が設定されていて、当館学芸員がおすすめする図書を、お手に取りやすいものから少しマニアックなものまで幅広く選出しています。カテゴリー内でも個性の違う図書を選出しているので、惹かれるジャンルがあれば、ぜひ区画単位で注目してみてください。普段読まないジャンルでも、パラパラ眺めていたら思わぬ発見があるかも…?
向かって左にあるU字の本棚には少し毛色の違う図書が並べられています。ここは主に特別展ごとにラインナップが替わる、期間限定エリアです。限られた期間ではあるものの、通常は閉架している骨太なものや少し踏み込んだものなど、特別展をさらに楽しむための図書が多く並べられています。展示を見る前や後に、ぜひ立ち寄ってみてください。
【図書情報室 基本情報】
場所 松本市立博物館2階 特別展示室前
入室時間 9:00~17:00
休室日 毎週火曜日
料金 無料
注意 ・室内は飲食禁止です。虫やカビの発生原因になりますので、
1階の飲食可能スペースをご活用ください.
・図書は元の場所に戻してください.
・図書の中には市民の方が寄贈してくださったものもあります。
ご覧の際は丁寧にお読 みください.
・本を読む以外にも、休憩や自習などにもご利用いただけます.
マナーを守ってご利用ください.
・大声で話す等、他のお客様のご迷惑になる行動はお控えください。
Vol.096 松本で『和食展』を考える (R6.11.5 文責:川上)
現在開催されている特別展『和食―日本の自然、人々の知恵』は国立科学博物館で開催され、その後各地を巡回する展覧会です。巡回してくるからそのまま展示すればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、ただそのまま展示するだけではもったいないですよね。松本のことも少しは知りたいと思いませんか?というわけで、松本の要素を独自にプラスしようということになりました。
松本に関することを松本の和食は何か、郷土食は何かと市史などを調べると、毎日の食事が楽しみだったと語られることは少なく、「ご飯に味噌汁、漬物程度で粗末だったという話のほうが多い」などという記述があります。昭和30年代のことで、まだ多くの家庭で白米に雑穀(粟・麦など)を混ぜて食べていたそうです。それほど遠くない過去の話です。ちょっとびっくりしてしまいます。確かに今のように食べたいものがなんでも食べられる時代ではなかったとは思います。
しかし、暮らしには季節感があり、食べ物には旬がありました。質素ななかにもその季節にしか食べられないものを待つ楽しみがあり、旬のいちばんおいしい時を味わうという和食の原点ともいえるものがあったはずです。また、食材が不足する時期を見据え保存食にするという工夫。これも暮らしから生まれた和食の知恵だと思います。
毎日の食事はともあれ、冠婚葬祭、お祭り、地区の集まりや季節の行事など特別な日は、普段食べないようなものや工夫を凝らしたごちそうが並び、楽しみにされていました。このようなときに頂いたものが松本の郷土料理として今でも食卓にあがっています。
少し前になりますが、インターネットのニュース記事に訪日観光客の「日本」への本音というものがありました。便利でかわいい品物が1ドル以下で買える100円ショップやコンビニで買える弁当やスイーツ、回転ずしなどの食品にも期待を寄せ来日したそうですが、目の当たりにしたのは、母国では「足りない」とされる生活雑貨や食品は、日本には捨てるほどある、という現実でした。「日本は豊かな国だと思いますが、何もかもが必要以上にあって、SDGsの精神には全く反しており、コンビニでも売れ残った食べ物は廃棄されるときき驚いた。日本の豊かさの裏には、不都合な事実がある。だとしたら、日本のようにモノにあふれた生活はしたくないし、すべきではない」とありました。
この記事にふれて、ハッとしました。昭和30年代頃のまだ貧しいと思われる頃のほうが、違った意味で豊かであったのではないかと気づかされました。
現在の世界は、気候変動、戦争など不安要素が多くこの日本においてもいつ食料危機が起きてもおかしくありません。そんなときに和食のたどってきた道は現代人にいろいろな知恵を授けてくれるように思います。『和食展』を観ながらこれからどのように和食が発展していくのかだけでなく、綿々と受け継がれてきた知恵を生かす方法も考えていただければと思います。
Vol.095 あなたの忘れられない和食を教えてください(R6.10.11 文責:須永)
10月5日から始まった、松本市立博物館特別展「和食 ―日本の自然、人々の知恵―」。
その展示の一角に、「あなたの忘れられない和食を教えてください」というコーナーがあります。名前の通り、事前に応募いただいた和食にまつわる思い出をご紹介したり、皆さんの思い出の「和食」を付箋に書いてボードに貼っていただいたり、というコーナーです。
では、担当自身ならどんな和食の名前を書くだろうと考えると、「お年取りに食べる鰤の粕煮」だろうと思います。
松本地方を代表する年取り魚は鰤と鮭とされますが、我が家では、照り焼きではなく、粕煮の鰤が出ます。そして、家族の舌に「大晦日の鰤の味」としてインプットされているのは母方の祖母の作った「鰤の粕煮の味」なのです。
その祖母が年とともに体が不自由になり、台所に立つことが難しくなってしまってから、祖母の娘たち(=担当者の母たち)は、「母の味」をレシピ化し自分たちでも再現するべく、改めて作り方を教えてもらったことがあるそうです。
しかし、そこは家庭料理の難しさというべきでしょうか。「醤油はどれくらい?」「適当でいいだ」、「砂糖は?」「いい感じに」、というような参考になるのかならないのか分からない、祖母の長年の台所経験に基づく目分量の嵐。仕方がないので、祖母が「それくらい」といった量を見て、「これくらいなら大匙〇杯くらいかねえ」「砂糖は大匙△杯ってとこかね」と推測で大体の味付けをしてみることに。
結果はお察しのとおり。鰤の粕煮について言えば、祖母が使っていた鍋を使い、祖母が買っていたお店で鰤を買い、同じ酒粕を使っても「あの味」にはならないのです。しかも毎年味が違う…。
毎年味が違うというところに作り手の試行錯誤が窺えるようではありますが、食べる専門の作り手の子供達(祖母の孫の世代)は、「今年は(鰤が)硬い」だの「今年のは味が薄い気がする」などと好きなことを言い合うのが大晦日の恒例行事となっています。
あと何年か後には、祖母の鰤の粕煮とは少し違った味の鰤の粕煮が、我が家に定着しているのかもしれません。
以上、担当者の「忘れられない和食」について思いつくまま述べさせていただきました。
一口に「和食」と言っても、思い描く和食は本当に様々です。
2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」は、生産から消費までの過程における様々な技能や知識までも含んだ「日本人の伝統的な食文化」のことであり、特定の料理や内容を定義してはいません。
「食」はその土地その土地固有の自然や文化によって長い時間をかけて育まれてきたものであると同時に、様々な社会的な変化の影響を受けながら変容し続けています。
明治時代に海外から日本にもたらされ日本に定着した料理があるように、今は和食として認識されていない海外由来の料理が、日本独自の発展を遂げ、次の世代に和食と認識されていくこともあるでしょう。伝統的な料理であっても、お雑煮を見ても分かるように、同じ名前の料理でもその土地その土地で異なるものもあります。
そんな和食の柔軟さ、幅広さを感じていただけるのが「和食 ―日本の自然、人々の知恵―」です。
本展では、科学的・歴史的、様々な切り口で和食についてご紹介するとともに、ギャラリートークをはじめ、沢山の関連事業も開催予定です。
開催期間中、ぜひ、松本市立博物館へお越しください。
Vol.094 真夏の撮影大作戦 ( R6.9.26 文責:前田)
手まりモビールがゆったりとたゆたう吹き抜けの導入展示エリアが、一夜限りの撮影スタジオに様変わりしたのは8月の全館休館日のこと。この日撮影したのは横5.3m、縦4.7mもの大きさを誇る西善寺の涅槃図(詳しくはこちらVol.067)。
この文化財はその大きさゆえ重量もかなりのもので、壁にかけると資料自体に負荷がかかってしまいます。そのため床面に平らに広げ、大きな涅槃図が画角におさまる高さまでカメラ機材を引き上げ、下向きに構えてシャッターをきる作戦で準備が進められました。
描かれたものがきめ細やかに再現され、この文化財の素晴らしさがしっかり伝わる高画質のデータを残す事が今回のミッション。最新の日本美術全集のデザインも手がけているおおうちおさむアソシエイトプロデューサーのアドバイスのもと、撮影は特殊な機材と技術を携えたプロのカメラマンの方に、大切な文化財の運搬に関しては美術専門スタッフのいる輸送業者の皆さんに、そして市民の皆さんと作り上げた手まりモビールを一時撤収するための、これまた専門の業者の方々それぞれに関わってもらい、博物館職員と当日博物館実習に来ていた大学生たちも加えた総勢40人を巻き込んだ大掛かりな撮影プロジェクトとなりました。
上方から撮影した際、画角に入ってしまう手まりモビールをこの日の朝イチで撤収。一つのモビールは大小10本ほどのバトンが連なっているので、下ろす際は大勢の手で受け取るようにしました。
この涅槃図には画面いっぱいに金彩が施されています。
金の部分が綺麗に撮影できるように、下から4mの高さまで、白い壁を一時的に黒くする必要がありました。A3サイズの黒い紙を54枚、ハシゴに登ってせっせと貼り付け、黒い壁を作っていきます。
西善寺から涅槃図を借り受け、博物館へ搬入するのはこの日の夕方の予定でしたが、天気予報は雨マーク。急きょ午前中に変更してもらい、雨の心配もなく無事博物館へお迎えする事ができました。所蔵者の方のご協力にも感謝です。
撮影は外光や車のライトの影響の少ない夜8時にスタート予定。この日の撮影班はアシスタント含め4人がかり。夕方から機材が続々と設置され、博物館が撮影スタジオと化しました。
2階の図書コーナーに高所作業車を設置し、さらに上へ上がっての撮影。その高さおよそ8m!危険が伴うため、人も資料も安全第一を心がけてとにかく慎重に。
準備が整い、いよいよ涅槃図が広げられます。荘厳な場面が姿を現すと、現場の空気が一段と張り詰めました。ほどなくして渾身のシャッターがきられるのでした。
撮影途中で壁紙を黒いパターンから、白いパターンへ早変わり。金彩を施した部分をよりよく写す条件と、それ以外の絵肌の調子を写しとる条件とに分けて撮影していきます。
こうして各プロ集団の知恵と技が結集した撮影大作戦は無事終了。画像の仕上がりが楽しみです。みなさんお疲れ様でした!
次の日の朝、開館時間前に手まりモビールを元の場所へ復帰させ、何事もなかったように来館者を迎えたある夏の日の博物館の出来事でした。
冬の特別展「春を待つ涅槃図」は令和7年2月1日㈯から3月3日㈪の開催です。市内外の貴重な文化財・涅槃図を博物館で公開します。ただいま展覧会準備の真っ最中。
どこかでポスターやチラシを見かけたら、裏でこんな撮影が行われていたのだと、ちょっとでも思い返してもらえたら嬉しいです。
Vol.93 企画展「生物多様性と松本」を終えて」(R6.9 文責:内川)
先日、9月2日(月)をもちまして、企画展「生物多様性と松本―すぐとなりにあるワンダーランド―」が会期終了となりました。
松本市立博物館本館では長らく行われていなかった自然史系の展示ということで、チャレンジングな企画ではありましたが、内外からも好評をいただき、無事に終えることができました。特に、夏休み期間中ということもあり、多くの親子連れの方々が来館し、展示を楽しまれていったと伺っています。
企画展自体は終了してしまいましたが、展示で紹介したとおり松本市周辺にはさまざまな生きものたちが暮していて、その姿を観察することができます。
特に「白樺峠のタカの渡り」は今まさにシーズン真っ最中。サシバやハチクマといった普段はあまり見かけない猛禽類たちを観察できます。
松本市の自然については、アルプス公園内にある分館・山と自然博物館でも常設で展示しています。公園自体も自然豊かな環境で、特にこれから冬に向けて野鳥の観察シーズンがやってきます。
少し時間はかかってしまいますが、また本館での自然に関する展示も鋭意企画してまいります。
最後に、展示にご協力いただいた皆さまに、この場を借りてあらためてお礼申し上げます。
Vol.92 学校連携について ( R6.8.9 文責:本間 )
松本市立博物館では、地域の学校と連携した講義・講座を実施しています。ここでは、今年私が担当させていただいた事業を紹介します。
1 並柳小学校 社会科地域学習
並柳小学校3年2組の皆さんは、社会科地域学習の一環で「並柳小学校周辺の土地利用」について調べています。博物館に「並柳小学校周辺の土地の歴史について教えてほしい」というご依頼をいただきました。当日は江戸時代など昔の地図を見ながら、並柳の歴史を学びました。
小学生の皆さんから、「並柳に古墳がたくさんあるのを初めて知った。」「並柳の歴史を知れて良かった。」などの感想をいただきました。博物館資料を活用しながら、若い世代の皆さんと歴史を学べる機会となりました。
2 松本市立博物館 松本筑摩高等学校連携「文学連続講座」
松本市立博物館・松本筑摩高等学校連携事業として、「文学連続講座」を開催しました。松本高等学校(旧制)出身作家や作品をメインに、全3回の講座を実施しました。各講座の内容を紹介します。
(1) 講演会「郷土作家が書く松本」
第1回目の講座では講演会を行いました。「郷土作家が書く松本」というテーマで、「松本高等学校の紹介」や「松本高校出身作家が自身の作品で描く松本の様子」などを中心にお話しました。
松本筑摩高等学校の学生さんからは「松本高等学校はエリートのイメージがあった。しかし、学生に破天荒な一面があって驚いた。」という感想をいただきました。
また第1回目の講座のみ一般公開しました。学生の皆様や地域の皆様に、松本の文学や歴史をお伝えできる機会になったと思います。
(2) 北杜夫資料紹介
2回目の講座では、松本高等学校出身作家・北杜夫の資料紹介を行いました。北杜夫の人物像を紹介した後に、生徒の皆さんに資料現物を触っていただきました。
生徒の皆さんより、「資料に使用した痕跡が残っており面白い。」「資料から人となりが分かる。」などの感想をいただきました。生徒さんならではの感性豊かな視点で資料をご覧いただき、意見を伺うことで、私自身も勉強になりました。
(3) あがたの森散策
3回目の講座では「あがたの森散策」を実施しました。あがたの森は松本高等学校の敷地だった場所です。国指定の重要文化財である校舎・講堂が現存しています。今回は敷地内や、校舎・講堂内を巡りました。当時の写真と今の様子を見比べながら散策しました。
学生の皆さんが、校舎・講堂の内装など細部まで興味を持って見てくれていました。現地を巡りながら一緒に歴史を学ぶことができたと思います。
松本筑摩高校の皆さんとの連携講座は、今年秋にも実施予定です。今後も若い世代の皆さんに博物館や資料・文化財に触れていただく機会を作り、未来に繋げていきたいと思っています。