Vol.120 アソビバ!も2周年(R7.11.20 文責:岡)
松本市立博物館が開館し、先月でちょうど2周年となりました。
皆様のお力添えで計10回近くの企画展・特別展を無事終えた当館ですが、足はお運びいただけたでしょうか?各展示の様子はこれまでのコラムでもご紹介したと思いますので、今回のコラムではもう一つの展示室である「アソビバ!」も、少し振り返っていきたいと思います。
まずアソビバ!ですがこの2年間で累計5万人以上の方にご来室いただきました。来室する度に1個押せるスタンプラリーを、10個コンプリートされた常連様は60人ほどいらっしゃったようです。中には、ひとりで5回以上コンプリートされた超常連様もいらっしゃるとか…。予想以上に多くの方に親しんでいただけて、職員としても大変嬉しく思います。本当にありがとうございます。
開館以降、新たに追加されたアイテムもありました。特別展で展示したアイテムや、それぞれのオープニングセレモニーにて使用された小道具など、当館のアソビバ!ならではのアイテムも随時追加されています。他にも、当館の学芸員が選出したミニピアノや珍しい楽器なども追加しています。
![]() 過去の特別展に関連するアイテム |
![]() 開館後、新たに導入したミニピアノ |
展示やイベントに合わせた関連イベントも開催しました。紙芝居の上演やワークショップなどをはじめ、今年の夏には七夕人形キットの配布も行いました。このキットは過去にも御紹介した市民学芸員の方々(「vol.44 学都フォーラム2023に参加しました」、「vol.77 市民学芸員「七夕の会」のステップアップ講座」)が一から作ったキットで、快く御提供いただいたものを希望者先着順で配布したものです。好評だったこともあり、6日間で各日昼過ぎには配布終了していました。
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![]() アソビバ!内で飾られている様子 |
過去にもアソビバ!の様子は御紹介しましたが(vol.89 大人もアソビバ!)、やはり実際に見ていても、大人と子どもでコミュニケーションを取りながら遊ぶ経験は、ただ学ぶこと以上の意義を持っているように思います。不定期ですが今後もアソビバ!では新たにアイテムを追加したり、イベントを開催していきたいと思います。まだまだ紹介しきれないアソビバ!の魅力を知る意味でも、ぜひ何度も足を運んで、体験していただきたいです。
【松本市立博物館 子ども体験ひろば アソビバ!】
開室時間:9:00~17:00(最終入室は16:30まで)
休室日:毎週火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
料金:無料
入室:未就学児から小学校6年生まで
※小学校3年生以下は保護者同伴でお願いします。
原則として、大人のみの入室はできません。
休日など利用人数が多くなる際は、入場制限を設ける場合があります。
vol.119 「強靭」とは「しなやか」であること (R7.11.7 文責:髙木)
10月2日より始まった特別展「日本刀は美しい Japanese Swords Are Beautiful」の会期も後半となりました。ここで会期中に行った関連事業について振り返ってみたいと思います。
10月4日に、刀剣博物館上席専門研究員・石井彰氏の講演「日本刀の魅力」を開催しました。研師の修行経験もある異色の刀剣研究家です。刀剣が出来上がるまでの解説に始まり、特に、押形(形状を拓本で写し取り刃文や働きを手書きで写生したもの)を見せていただきながらの解説は日本刀への愛が溢れる素晴らしい講演でした。
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翌5日には「刀剣乱舞online」の宣伝部長「おっきい こんのすけ」の撮影会を行いました。館の外まで希望者が並び、午前午後2回の開催で400人以上の方に参加していただきました。「ゆるバース2025」でグランプリを受賞したというこんのすけさん、動きがとっても可愛らしくてしかも凛々しく、人気の理由がわかった気がしました。
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10月12日にはこの刀剣展の図録の監修者でもある日本美術刀剣保存協会長野県南支部の会員の皆様による「日本刀の手入れ実演」が行われました。手入れの仕方から太刀と刀の違いなど分かりやすく教えていただきました。「日本刀の手入れ実演」は10月26日、11月9日にも行われました。
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13日には信州大学居合道サークルによる「夢想神伝流居合道演武」が披露されました。仮想敵を倒す動きが洗練された演武となっていますが、演者の集中力がこちらにも伝わる迫力でした。ラストにOBで五段の方が演じられましたが、真剣を使っているということで、空を切る刀の迷いのない動きの美しさを感じました。居合刀を振ってみる体験も大盛況でした。
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25日には宮入法廣刀匠による講演会「日本刀を作る~古作の再現~」を開催しました。80人の定員に対して170人以上の応募があり、熱気のある講演となりました。「反り」や「刃文」が生まれる秘密、再現模造の苦労などを余すことなく教えていただきました。
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11月1日には「日本刀の研ぎの実演」が行われました。日本美術刀剣保存協会が認定する「無鑑査」という一流の研師の称号を持つ、松本市在住の熊井光徹さんによる実演です。刀身がいくら素晴らしくても名刀となるかどうかは研ぎの出来次第だそうです。不安定な態勢で集中して行う研ぎの難しさを実感し、また、貴重な砥石も見せていただきました。
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様々な関連事業を通して、日本刀の素晴らしさ、美しさを皆さんに体感していただけたと思います。私がこれらの事業を通して特に感じたことは、日本刀に関わる一流の方々は皆さんが「靭(しな)やか」であるということでした。硬い鋼と軟らかい鋼を組み合わせることで生まれる「折れず、曲がらず、良く切れる」という強靭な日本刀の特徴と同じです。宮入刀匠や熊井研師のお人柄から、強さとは「しなやか」であることだと教えていただいたように思います。
会期も残り少なくなりました。大勢の方々の協力のもとに作り上げた展示です。一人でも多くの方に観覧していただければと願っています。
「日本刀は美しい Japanese Swords Are Beautiful」は11月16日(日)までの開催です。
Vol.118 「松本市立博物館119年の歩み 誕生から今日まで」(文責:本間)
企画展「松本市立博物館119年の歩み 誕生から今日まで」が、11月3日をもって終わりを迎えました。これは、松本市立博物館で活動している市民ガイドの皆さんが企画したものです。
さらに、企画展を開催するのにあたり様々な関連行事も実施しました。ここではその内容を紹介します。
![]() 企画展「松本市立博物館119年の歩み 誕生から今日まで」 |
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1 松本市立博物館誕生記念講演会「松本市立博物館119彩-来し方とこれから」
松本の博物館の歴史をふりかえり、郷土の文化資産を次代に伝える役割を担う市民の学びの場としての松本市立博物館を見つめなおす講演会を開催しました。
学芸員が利用者目線で対話し協働したり、市民ニーズの的確な把握をしたり、市民参加を進めたりすることが大切であるなど、博物館の歴史に加え、市民協働の重要さも分かる講演会でした。
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2 松本市立博物館誕生記念企画展スポットライトツアー
市民ガイドさんは、日頃より常設展示の解説をしています。そんな市民ガイドさんにとってお手の物である常設展ガイドに加え、企画展「松本市立博物館119年の歩み 誕生から今日まで」の解説もあわせたスぺシャルなツアーを実施しました。
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3 松本市立博物館誕生記念ミュージアムガイドウォーク「松本市立博物館119年の歩みをたどる」
企画展と常設展示を見てから、まちなかを巡るガイドツアーを実施しました。松本市時計博物館や松本市はかり資料館も見学しました。参加者の皆さんが、ガイドさんのお話を熱心に聞いたり、質問したりする様子も見られました。
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4 「松本学」研究発表勉強会
博物館を母体に活動している市民の皆さんによる、研究発表を行いました。初めての試みでしたが、大盛況で多くの方にご参加いただくことができました。廃仏毀釈、お蚕さん、あめ市など多岐に渡った発表が行われました。
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今回の企画は、展示・関連行事共々、市民ガイドさんの発案により実施されました。日頃博物館を中心に活動している市民の皆さんが、調査していることを伝えることができ、学びを深める機会になりました。市民ガイドさんの松本へ対する思いが形になった企画だったと思います。
vol.117 日本刀は美しい?
神事によって幕開けした特別展「日本刀は美しい Japanese Swords Are Beautiful」が10月2日(水)から始まりました。特別展の担当学芸員として、特に苦労したことなどこのコラムを通して共有できたらと思います。
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私は約3年前にこの刀剣展の担当となりました。当初はなんの因果で刀剣の展示を任されるのかと葛藤していましたが、考えてみれば理由は単純で、私が美術系の学芸員であったからでした。学芸員資格というのは学んだ専門分野に応じて、美術系、歴史系、自然系などと分かれています。美術系の学芸員である私が刀剣を扱うということは、とりも直さず刀剣が美術品であるということなのです。しかし、当初は日本刀が美術品であるという認識がなく、展示を見ても素通りするような、むしろ避けて通っているような状況でした。日本刀の人を斬るという血なまぐさいイメージが苦手でしたから、展示準備に向けてはゼロからスタートを切ったというよりマイナスからのスタートだったのです。
それでも担当するからには良い展示を目指したい。そこでまずは、刀を観ることから始めました。東京国立博物館、刀剣博物館、静岡の佐野美術館、茨城の徳川ミュージアム、広島のふくやま美術館、岡山の備前長船博物館など、初めて意識的に日本刀を観ました。同時に、今回の刀剣展の監修をお願いした日本美術刀剣保存協会長野県南支部の会員さんの指導を受けて、実際に刀を手に取って鑑賞する機会も設けていただき、当館の所蔵刀を用いて実際に刀を手入れする練習も行いました。R6年3月には「収蔵品刀剣展」、その年の暮れには「年越し刀剣展」と実際の展示を通して実績を積みました。
日本刀について学んでいくうちに強く思ったことがあります。それは武器として以上に日本刀が日本人の生活に強く根ざしているということでした。日本刀というものを意識して生活をしてみると、普段何気なく使っている日本語に刀を語源とするものが数多くあるということに気づかされます。「切羽詰まる」「付け焼刃」「もとの鞘に収まる」など、日常会話に刀由来の言葉がどんどん出てきます。それは刀が武士だけのものではなく庶民の暮らしにしっかりと根付いていたからこそ、今でも残っているのです。また、江戸の庶民の娯楽であった歌舞伎や落語にも刀の題材を多くみることができます。さらに、日本最古の書物と言われる「古事記」の冒頭で、イザナギとイザナミが国生みを行う際に用いた道具「あめのぬぼこ」の矛とは刀のことです。日本刀は血なまぐさい殺戮の道具としてよりも人々の畏敬の対象として、生活に必要な守り刀として、日本人の生活になくてはならないものだったのです。
当初、この展示のタイトルは「国宝で知る初めての刀剣」というものでした。「日本刀は美しい」というタイトルになったのは、様々な葛藤と試行錯誤を経て自分自身が心から「日本刀は美しい」と思えるようになってからです。そしてそう言えるようになったのはやはり、日本刀の基礎的な知識を学び、鑑賞の目が養われたからだと思います。この展示ではまず、その日本刀を観る時に必要な基本的な知識をわかりやすく展示しています。それは私自身の3年間の学びを凝縮したものになっています。30年40年と学んでいる方々に比べると「付け焼刃」の知識ではありますが、日本刀を学ぶ出発点にはなるかと思っています。
会場は「日本刀を知る」「日本刀を作る」「日本刀を観る」の3章に分かれています。まず、プロローグ「守り神としての日本刀」で四柱神社からお借りした反りのない直刀を見ていただきます。これは神宮式年遷宮のために昭和28年(1953)に当代きっての名工が古式に則って作刀したものです。20年ごとにお社も神宝も調度品もすべてを同じように新しく作り変える大行事、神宮式年遷宮は約1300年前、持統天皇の時代に始まっていますので、この直刀によって奈良時代の刀の姿を見ることができます。
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1章、2章は白い空間で構成されています。「日本刀の特徴1」では「長さを見て種類を知る」というテーマで、太刀、打刀、脇差、短刀の4種類の刀身を縦に展示しています。長さの比較はイラストを使ってパネルにして掲示するのが一般的ですが、刀身現物を縦に展示したいという私の希望を宮入法廣刀匠が汲んでくださって、オリジナルの刀掛けを設計してくださいました。特徴2~6でローケースに横たえて展示するために使っているアクリル刀置きも、刀匠の設計でオリジナルで作っていただきました。
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右側ウォールケースの日本刀の特徴のコーナーでは、日本刀に反りが生まれる過程の初期の形である「毛抜形太刀」から始まり、時代を追って刀の歴史的変化をトピックスとして取り上げています。日本刀の歴史は入り口右手にある年表でも詳しく見ることができます。
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次のコーナー、通称「辞書部屋」では刀にまつわる日本語から日本人の生活にいかに日本刀が浸透しているかを知っていただけたらと思います。「もとの鞘に収まる」「切羽詰まる」「鍔迫り合い」「懐刀」「目貫通り」の5つを特に取り上げて、言葉の由来となった鞘や鐔、目貫を紹介しています。
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第2章では「刀剣を作る」というテーマで、宮入法廣刀匠のコーナーを作りました。刀匠の作刀風景の映像と刀を作る紹介パネル、そして、宮入刀匠が作刀した、国宝骨喰藤四郎の再現模造を360度どこからでも見られるように展示しています。今回の展覧会では刀掛けの設計、図録への執筆、映像への出演とたくさんのご協力をいただきました。
刀匠が鍛冶場を構えている東御市の梅野記念絵画館で、11月15日から「刀が映す東御の歴史」を開催予定です。埼玉で発掘された「稲荷山古墳出土金錯銘鉄剣」や正倉院宝物刀子の再現模造も展示されますので、ぜひそちらにも足をお運びください。
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さて、ここまでが前半の白い空間です。後半第3章からは「日本刀を観る」と題して黒い空間が現れます。当館アソシエイトプロデューサーのおおうちおさむがオープニングで述べたように、黒という色は「終焉」や「畏敬」を暗示させるもので、日本刀の美しさを鑑賞するにふさわしい空間になっています。刀掛けに掛ける布も黒にしましたが、この布の選定には苦労しました。本来なら白の羽二重(絹)を掛けるのですが、これを黒にすると光を受けて反射してしまい刀のよさを殺してしまいます。そこで10種類以上の布を試して、マットな黒で反射の少ない綿のギャバジンという種類を使うことにしました。
黒い空間に展示された刀25振りはすべて言わずと知れた名刀ばかりです。前半の日本刀に対する知識を持って鑑賞するとそれぞれの刀が放つ底知れない美しさが見えてくると思います。
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「日本刀は美しい」というタイトルの大きさに気が引ける思いもありましたが、日本刀は美しいと言い切ることによって、会場全体にも美しさがもたらされたように思います。
どんなものにも畏敬の念を持って美しさを見出そうとする日本人の美的感性に日本刀を通して少しでも触れていただければ幸いです。この展示を通して、ただの鉄の塊にしか見えなかったものが究極の美術品に変化していくおもしろさを体験できるかもしれません。
![]() このエントランスのコーナーに立って写真を撮ると誰でも素敵に取れますのでぜひ。 |
令和7年度特別展「日本刀は美しい Japanese Swords are Beautiful」
■会期 令和7年10月2日(木)~11月16日(日)
■開館時間 9時~17時(入館は16時30分まで)
■閉室日 毎週火曜日(祝日の場合は翌平日)
■会場 松本市立博物館2階特別展示室
■観覧料
単独券 一般1,100円(900円)、大学生700円(600円)
常設展とのセット券 一般1,300円 (1,100円)、大学生800円 (700円)
高校生以下無料 ()内団体料金
令和7年度秋の特別展「日本刀は美しい Japanese Swords Are Beautiful」
第3章 日本刀を観る
Chapter 3 View the Japanese swords
62・63 刀 無銘 一文字・太刀 銘 守次 Katana Unsigned Ichimonji・Tachi Signed Moritsugu
64 短刀 銘 来国俊 Tantō Signed Rai Kunitoshi
65 国宝 太刀 銘 国行(号 明石国行)National Treasures Tachi Signed Kuniyuki (Akashi Kuniyuki)
66 国宝 短刀 銘 左 筑州住(号 じゅらく(太閤左文字))National Treasures Tantō Signed Sa Chikushū jū(Juraku(Taikō Samonji))
67 重要美術品 太刀 銘 長谷部国信(号 からかしわ)Important works of fine arts Tachi Signed Hasebe kuninobu (Karakashiwa)
68 重要美術品 太刀 銘 国俊 Important works of fine arts Tachi Signed Kunitoshi
69 重要美術品 太刀 銘 来国俊 元享元年十二月日 Important works of fine arts Tachi Signed Rai Kunitoshi December 1321
70 重要文化財 太刀 銘 正恒 Important Cultural Properties Tachi Signed Masatsune
71 小太刀 銘 一 Kodachi Signed Ichi
72 小太刀 銘 長光 Kodachi Signed Nagamitsu
76 太刀 銘 備州長船倫光 Tachi Signed Bishū Osafune Tomomitsu
78 刀 無銘 行光 Katana Unsigned Yukimitsu
79 脇差 無銘 大進房 Wakizashi Unsigned Daishinbō
黒呂色塗鞘竹に雀紋金具献上拵 Uesugi family Daishō Koshirae
80 刀掛 黒呂色三葉葵紋枝菊蒔絵刀掛 Katana kake Uesugi family sword rack
81_重要美術品 刀 無銘 正宗(名物 武蔵正宗)Important works of fine arts Katana Unsigned Masamune (Musashi Masamune)
82 刀 銘 村正 Katana Signed Muramasa
86 脇差 銘 (菊紋)山城守藤原国清 Wakizashi Signed Kikumon Yamashiro no kami Fujiwara Kunikiyo
87 脇差 銘 筑前守信秀 慶応三年六月日 Wakizashi Signed Chikuzen no kami Nobuhide June 1867
Vol.118 四賀化石館より、3Dで残す標本のかたち ( R7.9.25 文責:塙 )
近年、古生物学分野では3Dデータを活用した研究例や博物館活動がよく見られるようになってきました。そこで当館の貴重な化石標本も3Dデータ化し、研究や博物館の展示に活用できないかと思い、まずは「3Dでのこす標本のかたち」として3日間限定の展示を行いました!
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展示
今回の展示のメインは、3Dモデルの「体験型展示」と、3Dプリンターの「動態展示」です。
1階展示室に展示しているシガマッコウクジラ全身骨格レプリカは、標本の周りをぐるっと歩いて360°見ることはできますが、下から見上げたり、上から見下ろしたりして観察することは難しい構造の展示になっています。ならばデータ上で、はたまた手のひらの上で、じっくり観察してほしい!ということで、タブレット画面でくるくる動かせる3Dデータや、3Dプリンターで出力したモデルを触れる、「体験型展示」を行いました。
タブレットでは1階展示室のシガマッコウクジラ全身骨格レプリカのスキャンデータを実際に動かして好きな角度から見ることができます。
また、このモデルを4分割してそれぞれのパーツを実際の10分の1の大きさで出力したものなど、いろいろな3Dモデルをハンズオンで観察してもらえるコーナーも作りました。
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さらに、3Dプリンターが実際に稼働する様子(「動態展示」)をご覧いただきました。
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3Dプリンターは近年普及が急速に拡大し、現在では家庭用として2万円ほどで手に入る時代になっています。それでも、普段なかなか目にする機会はないもので、特に大人の方がよく熱心に見て行ってくださった印象です。
今回展示したのは、熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling)といって、樹脂を熱で溶かしてノズルから押し出し、一層ずつ積み重ねることで造形する方式のプリンターです。
3Dプリントはまず印刷したい3Dデータを用意し、それを一層ずつ出力するためにスライサーソフトで印刷用のスライスデータにして、プリンターから出力します。印刷時、積層方式では空中に浮いた部分はうまく描くことができません。そのため、サポート材という支柱を一緒に付けて印刷することで、複雑な立体のデータも出力できるようにします。このサポート材は、比較的簡単に外れるように印刷されますが、サポート材の付け方を工夫しないと、外している最中に本体の細い部分が折れてしまうこともあります。実際、シガマッコウクジラの頭部を印刷したときには上顎と下顎が外れてしまい、胴部を印刷した際にはその肋骨のほとんどが取れてしまいました。どの向きで印刷するか、どんな種類のサポート材をどのように配置して印刷するか・・・準備期間から数日間3Dプリンターと向き合った私は、3Dプリントの世界は大変奥が深いなと、自宅への購入を本気で検討しました。そのうち四賀化石館の展示室の一角が、学芸員オリジナル3Dモデルコレクションで溢れる日が訪れるかもしれません・・・。
イベント
また、展示を行った3日間、名古屋大学より岡村さんと佐野さん、京都大学より野田さんの3人の大学院生に協力していただき、3Dスキャンやフォトグラメトリの技術を使ってシガマッコウクジラの3Dスキャンを実施しました。
お三方はそれぞれ鯨類、トカゲ、両生類と、研究の分野はさまざまですが、皆さん3Dを使った研究も行っており、今回大変心強い助っ人でした。
展示の横でシガマッコウクジラ実物化石の3Dスキャンやシナノアロデスムス頭骨化石のフォトグラメトリを行い、ときには来館者からの質問に答えながら、たくさんのデータをとることができました。
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最終日には「3Dスキャン体験会」として、スマートフォンやタブレットを使ったお手軽3Dスキャンを体験できるイベントも行い、朝から夕方までたくさんの方に来ていただき、予想以上の大盛況でした。化石だけでなく、昆虫標本や剥製標本なども用意し、たくさんの方に楽しんでいただけたと思います。
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本展示は今後1階ロビーにて展示したいと考えています。研究へ活用していけるのも楽しみです。そして、今回「3D」をきっかけに少しでも多くの方に化石へ興味を持ってもらえていれば、学芸員は大変幸せです。
次はどんな楽しいことをしようかな・・・?
【ご協力(敬称略)】
信州大学SPARC事業推進事務局
岡村 太路(名古屋大学環境学研究科 博士後期課程)
佐野 瑞穂(名古屋大学環境学研究科 博士後期課程)
野田 昌裕(京都大学人間・環境学研究科 博士後期課程)
河部壮一郎(福井県立大学 教授)
Vol.115 重要文化財馬場家住宅の紹介 その2 ( R7.9.4 文責:石井 )
今回は、馬場家15代当主馬場称(しょう)徳(とく)を紹介します。
馬場称徳は明治15年(1882)に生まれ、旧制松本中学、東京外国語学校等を経て外交官となりました。
![]() 馬場称徳 |
称徳がシカゴの日本領事館に書記生として勤務していた大正3年(1914)、革命が起こっていたメキシコに派遣され、外交官の身分を隠して業務を遂行するという困難な命令を受けます。
在メキシコ公使館の安達公使からの指示は、「貴官ガ何等帝国政府ニ関係ナク官吏タル資格ヲ離レ、決シテ政府ニ累ヲ及ボサザル方法ヲ以テ交渉セラルハ可ナレドモ、然ラザル限リ不可ナリ」というものでした。
これは、日本政府が革命軍を承認していない以上、政府の交渉相手として認めるわけにはいかなかったためで、称徳はあくまで私人として革命軍と交渉することになりました。
そのような中、称徳は日本人捕虜救助と日本人移民の避難に尽力しました。
明治以来、メキシコに移民した日本人の中には、政府軍に登用され、革命軍と戦闘して捕虜となった人もいました。称徳は革命軍リーダーの一人、パンチョ・ビリャと交渉し捕虜の生命と日本人の安全を確保しました。
また、革命の動乱で困窮していた日本人移民を国境を越えて移住させ、900人以上を救いました。
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称徳の活躍は小説の題材にもなっています。
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重要文化財馬場家住宅の文庫蔵にある展示室には、称徳について紹介するコーナーがあります。
Vol.114 「地獄占い」が大好評! ( R7.8.7 文責:武井 )
現在開催中の特別展「地獄の入り口―十王のいるところ―」。
その中でひそかに好評をいただいているのがこちら!
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「地獄占い」(全8種)です。
地獄の入り口(展示室)で多くの十王様にお目見えした後、あなたにはどのような裁きが下されるのか…!というコンセプトで展示室出口に設置しているおみくじで、地獄しか出ないにもかかわらず多くの方々に楽しんでいただいております。
そこで今回は、地獄占いに使用した8つの地獄、「八大地獄」について、より詳しくご紹介したいと思います。まだ展示をご覧になっていない方は観覧前の予習として、すでに展示をご覧いただいた方は、自分が引いた地獄が具体的にどのような場所なのか、ぜひ思いをはせてみてください。
1 等活(とうかつ)地獄 ― 殺生を犯した者が堕ちる
刑期※:1兆6653億1250万年
刑罰:亡者同士が鋭い鉄の爪で傷つけあう。獄卒に包丁のような刃物で細かく切り刻まれる。亡者は死んでも、獄卒が「活々」と唱えたり、涼しい
風が吹いたりすると元通り蘇り、責め苦を受け続ける。
◇主な小地獄(各地獄に16ずつ付属している)
①刀輪処(とうりんしょ)
他人を傷つけた者が堕ちる。熱せられた鉄や刀が雨のように降ってくる。
②屎泥処(しでいしょ)
小動物を殺したりいじめたりした者が堕ちる。煮えたぎる糞尿の池に落とされ、糞尿を食わされたり、固いくちばしを持つ虫に食われたりする。
![]() 『和字絵入往生要集』より 等活地獄 |
2 黒縄(こくじょう)地獄 ― 殺生のほか、盗みを犯した者が堕ちる
刑期:13兆3225億年
刑罰:焼けた鉄縄で身体に線を引かれ、その線に沿ってのこぎりなどで切り裂かれる。柱に張られた熱い鉄縄を渡らされる。下には煮えたぎる釜が
待ち構えており、落ちると砕かれ煮られる。
◇主な小地獄
①等喚受苦処(とうかんじゅくしょ)
真面目に働かず嘘の教えを説いた者が堕ちる。熱い鉄縄で縛られ、高い崖から刀が突き出す熱い地面へと落とされ、そこでは鉄の牙を持ち炎を吐
く狗(いぬ)に食われる。
②畏熟処(いじゅくしょ)
食べ物を盗み他人を餓死させた者が堕ちる。刀や弓矢を持った獄卒に昼夜を問わず追いかけられ続ける。
![]() 『和字絵入往生要集』より 黒縄地獄 |
3 衆合地獄 ― 殺生、盗みのほか、みだらな行いをした者が堕ちる
刑期:106兆5800億年
刑罰:牛頭・馬頭などの獄卒に鉄山の間に追い込まれ、その山が押し寄せてきてすりつぶされる。鉄の臼・杵で搗かれたり、獣や鳥に体を食われた
りする。赤銅の川の中に突き落とされ、亡者は天に向かって泣き叫ぶ。
◇主な小地獄
①悪見処(あくけんしょ)
他人の子どもを虐待したり淫行を犯した者が堕ちる。他人の子どもが受けた苦しみと同等の責め苦を、自分の子どもが受けるところをひたすら見
せられる。
②忍苦処(にんくしょ)
他人の妻を奪った者が堕ちる。鉤を体に打ち込まれ木に吊るされ、炎でゆっくりと焼かれる。
![]() 『和字絵入往生要集』より 衆合地獄 |
4 叫喚地獄 ― 殺生、盗み、みだらな行いのほか、飲酒の罪を犯した者が堕ちる
刑期:852兆6400億年
刑罰:獄卒に追い込まれ火が燃え盛る室に押し込められ炙られる。口をこじ開けられ熱した鉄を無理やり飲まされる。
◇主な小地獄
①火雲霧処(かうんむしょ)
他人に無理やり酒を飲ませて笑いものにした物が堕ちる。獄卒に抱えられ、高さ90mにもなる炎の中に投げ込まれる。
②火末虫処(かまつちゅうしょ)
水で薄めた酒や盗んできた酒を売った者が堕ちる。人類を死滅させるほどの恐ろしい404種の病気に苦しめられた上に虫に食われる。
![]() 『和字絵入往生要集』より 叫喚地獄 |
5 大叫喚地獄 ― 殺生、盗み、みだらな行い、飲酒のほか、嘘をついた者が堕ちる
刑期:6821兆1200億年
刑罰: 猛火に包まれ枯草のように焼かれ泣き叫ぶ。ここで受ける苦しみは、等活~叫喚地獄で受けた苦しみの10倍とされる。
◇主な小地獄
①受無辺苦処(じゅむへんくしょ)
獄卒に舌や目を抜かれるが、すぐに再生し、また抜かれ続ける。また刀で体を削られる。これらはすべて嘘をついた報いである。
②受鋒苦処(じゅほうくしょ)
お布施を受けたのに受けていないと嘘をついたり、逆にお布施をしていないのにしたと嘘をついた者が堕ちる。木に縛り付けられ、熱した針で舌
と口を縫い合わせられ泣き叫ぶこともできない。
![]() 『和字絵入往生要集』より 大叫喚地獄
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6 焦熱地獄 ― 殺生、盗み、みだらな行い、飲酒、嘘つきのほか、邪見の罪を犯した(仏教の教えに背いた)者が堕ちる
刑期:5京4568兆9600億年
刑罰:巨大な鉄の串で頭から足までを貫かれ、鉄網の上で串焼きのように焼かれる。あまりの火の強さに、体のあらゆる穴から炎が吹き出す。焦熱
地獄の炎を一粒でも現世に置くとすべてを焼き尽くしてしまうといわれる。
◇主な小地獄
①闇火風処(あんかふうしょ)
仏教の無常の教えを認めず、邪説を説いて回った者が堕ちる。激しい暴風のなかで、亡者の体は粉々になりそこらじゅうに飛び散る。
②分荼梨迦処(ぶんだりかしょ)
「飢えて死ねば天に昇れる」と邪説を説いた者が堕ちる。分荼梨迦とは白い蓮のこと。「この先に分荼梨迦の池があり水も木陰もある」という声 につられ池に入ると、分荼梨迦が燃え上がり焼き尽くされる。
![]() 『和字絵入往生要集』より 焦熱地獄 |
7 大焦熱地獄 ― 殺生、盗み、みだらな行い、飲酒、嘘つき、邪見のほか、尼僧を汚した者が堕ちる
刑期:半中劫(中劫の半分 ※中劫=永遠にも等しい歳月)
刑罰:猛烈な炎の中に落とされ、獄卒に「お前は炎ではなく自身が犯した罪に焼かれているのだ。火を消すことはできてもお前の罪を消すことはで
きない」といって責められる。
◇主な小地獄
①普受一切資生苦悩処(ふじゅいっさいししょうくのうしょ)
尼僧に酒を飲ませてたぶらかした者が堕ちる。剣で体中の皮を剥がれ、そのまま灼熱の地に置かれ、熱鉄を注がれる。
![]() 『和字絵入往生要集』より 大 焦熱地獄
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8 阿鼻地獄 ― 五逆罪(殺母・殺父・殺阿羅漢・出仏身血・破和合僧)を犯した者が堕ちる
刑期:中劫(永遠にも等しい歳月)
描写:阿鼻城という城があり、その四隅には銅でできた巨大な番犬がいて、すべての毛穴から猛火を噴き出していて、その煙は比べるものがないほ
どの悪臭である。獄卒は18匹いる。目が全身に64個あり、上向きに曲がった牙の高さは4由旬(44.8km~57.6km)もあり、その先端から
火が噴き出し、阿鼻城には炎が満ちている。城を囲う壁の間には8万4千匹の蛇と500億の虫がいて、それらが吐き出す火が雨のように降っ
ている。
刑罰:亡者は2,000年かけてここまで落ちてくる。獄卒に口をこじ開けられ、鉄の塊を無理やり飲まされる。獄卒に舌を引き伸ばされ杭を打たれ
る。炎に満ちた城で、さまざまな獄卒からの責め苦を受け、無数の大蛇や虫や、それらが放つ悪臭に苦しめられる。
◇主な小地獄
①鉄野干食処(てつやかんじきしょ)
寺院に火をつけ仏像を焼いたり僧侶を焼き殺した者が堕ちる。雨のように降りしきる鉄の瓦に体を砕かれ、その身を犬に食われる。
②閻婆度処(えんばどしょ)
川を汚染したりして自然環境を破壊した者が堕ちる。閻婆度という巨大な鳥についばまれ、地獄の底に落とされて粉々になる。
※刑期
八大地獄において、1日の長さは一様ではありません。1等活地獄~6焦熱地獄までは、それぞれ六欲天※での寿命を1日の長さの基準としています。
各地獄の基準となる六欲天や刑期をまとめると次の表のようになります。
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これだけではわかりづらいので、一番刑期が短い等活地獄を例に刑期を計算してみます(1年を365日として計算しています)。
等活地獄の基準となる四王天の1日は人間界の50年です。つまり、四王天での1年を人間界の年数に置き換えると、
50年×365日=18,250年となります。
等活地獄における1日は、四王天の500年に相当するので、500年×18,250年=9,125,000年です。
これを基に等活地獄の1年を算出すると9,125,000年×365日=3,330,625,000年となります。
そして等活地獄の刑期は500年なので、500年×3,330,625,000年=1,665,312,500,000年、これが人間界の年数に置き換えた等活地獄の刑期となります。
※六欲天…欲望に束縛されている6つの天界、またそれらに属する神々のこと。
いかがでしたでしょうか。
江戸時代に刊行された『和字絵入往生要集』のイラストとともに各地獄を紹介いたしました。
「地獄占い」は、この『和字絵入往生要集』を使ったオリジナルデザインのおみくじとなっております。
ご観覧の記念にぜひ引いてみてください。
皆さまのご来館をお待ちしております!
<特別展情報>
「地獄の入り口―十王のいるところ―」
・会 期:令和7年7月5日(土)~令和7年9月1日(月)
・開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
・会 場:松本市立博物館 2階特別展示室
・料 金:【特別展単独券】大人:1,100円、大学生等:800円
【常設展・特別展セット券】大人:1,300円、大学生等:1,000円
高校生以下無料
・閉 室 日:毎週火曜日(祝日の場合は翌平日)
Vol.113 モミジの七夕 ( R7.8.5 文責:前田 )
行事食を調査しています
フィールドワークなどを通じて松本のすばらしさを再発見し、その魅力を発信してくださっている市民学芸員。今年も新たに市民学芸員の養成講座がスタートしました。第14期となる今回のテーマは「行事食」。このほど受講者の皆さんとともに、田川地区と安曇地区へ、主に七夕にまつわる食べ物の調査を行ってきました。その成果については、養成講座の集大成として、今後受講生の皆さんに発表していただく予定です。どうぞお楽しみに。
その前振りに、今回聞くことができた安曇地区の前田隆之さん(79歳)の少年時代のお話がとても素敵だったので、少し紹介させてください。
![]() 前田さんの興味深いお話に聞き入る受講者のみなさん |
![]() 青々としたモミジの葉に色とりどりの飾りがきれいな七夕飾り |
七夕の思い出
風穴で有名な稲核(いねこき)では、七夕飾りに青竹ではなくモミジ(カエデ)が昔から使われます。
生まれも育ちも稲核の前田さんは、小中学生の頃、8月6日にモミジの枝を伐り出してきて、七夕飾りをしました。そして七夕の次の日(8月8日)の朝にはその飾りを持って、5歳下の妹さんと梓川の岸辺へいき「七夕さま、あばよ。また来いよ」と言いながら川へ流しました。
七夕流しの後は、集まった子どもたちとともに、パンツ一枚になって川で泳いだり、お手製の水中めがね「水面(すいめん)」と魚を突くヤスを使ってカジカを獲ったりしました。
お腹がすくと河原の流木で焚火(たきび)をし、旬のジャガイモやササゲを飯盒で煮て食べました。この「芋煮」の味付けは自家製の味噌を使い、出汁(だし)として獲ったばかりのカジカを入れたそうです。
こうして河原で一日過ごした後、来た時のズボンにはき替え、川遊びでぬれたパンツはヤスにひっかけて、家に帰っていきました。家に着くころにはパンツもすっかり乾いていたそうです。
大人たちは養蚕で大忙しの時期、子どもたちはその手伝いからしばし解放され、友だちとのびのびと遊ぶ8月8日が、とても楽しみだったそうです。1960年頃から始まる安曇3ダムの建設工事にともない、七夕流しが行われていた河原はダムに沈んでしまいました。それでも、前田さんのように当時の子どもたちにとっての七夕は、楽しい夏の思い出として、地元の方々の心に刻まれているようです。
時は流れて
ところで現在の稲核の七夕はどんな様子なのでしょう。
今年度のPTA役員の方のご協力で「七夕焼き」を取材させていただきました。ここ最近は第1土曜日に開催されており、今年は8月2日に行われました。七夕を片付けるにはすこし早いと思われますが、伝統行事を継続していくためには柔軟に取り組んでいくことも大事なのかなと考えます。
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七夕焼きの朝、小中学生のいる4家庭がそれぞれの七夕飾りを手に、安曇保育園の庭へ集まりました。消防団のお父さんも2名いらっしゃいます。
この七夕飾りは、事前にモミジの木のあるお宅のお父さんが、4軒分を伐ってきて、各家庭に配ってくれたものだそうです。
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午前8時、園庭に積み上げられた七夕飾りに火が点けられました。燃えた短冊が煤(すす)となり、煙とともに天に舞い上がっていくのを皆さんが見守ります。
七夕焼きの片付けが終わると、もう一つお楽しみ企画が待っていました。この後皆さんで奈川地区へ行き、シャワークライミングという川遊びをするとのことです。70年前、梓川の河原で繰り広げられたのと同じように、清冽な川の水しぶきに子どもたちの歓声が響く夏の一日となったことでしょう。
稲核の七夕の習わしは時代の流れとともに変わってきましたが、自然豊かな山ふところに育つ子たちがいつか思い出すであろう七夕の原風景は、変わらずに残ってほしいと思いました。
Vol.112 「知りたい!」に応えたい~博物館資料の調べ方(R7.7.8文責:會田)
「資料特別観覧」という言葉をご存じでしょうか。聞きなれない言葉で初めて知る方も多いと思います。「資料特別観覧」は学芸員の業務の一つで、多くの博物館美術館施設等では、収蔵庫に保管されている資料、また展示室に展示している資料を調査、閲覧できる制度があります。(事前申請要、許可制/有償※減免の場合あり)
当館では、松本市立博物館条例第7条で定めており、「学術研究者やその他教育を目的とした事由で閲覧ができる」としています。研究の最前線で調査をしている学術研究者や教育関係者が、論文に掲載したい、画像を学校教材として利用したいなど、調査研究・教育のために、学芸員の立会いのもと当館収蔵資料を閲覧利用できる制度を設けています。
「資料特別観覧」は条件がありますが、「松本市立博物館にどんな資料があるのか知りたい!」と思ったときには、実は誰でもネット上で調べることができます。
このコラムのページ内の「収蔵品検索」のアイコンを押していただくと、検索画面が表示されます。キーワードを入力すれば、該当資料の画像や資料名、制作年代などが閲覧できます。
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全国の博物館美術館施設などでは、近年収蔵資料情報のデータ化が進められており、当館もいち早く取り組みを始めています。
眺めていると、まるで“仮想世界のミュージアム”のようですよね。
「こんなものも収蔵されているんだ」「これは何だろう?」など様々な発見があるかもしれません。どなたでもご利用いただけますので、ぜひ覗いてみてください。

























































