上條館長の山城案内 伊深城
伊深城 いぶかじょう(松本市岡田)
昭和42年2月1日松本市特別史跡に指定
さて、今日は伊深城です。刈谷原峠(かりやはらとうげ)を越える善光寺街道、三才山峠(みさやまとうげ)への道、安曇野方面に抜ける道などが交差する交通の要所に作られています。伊深城は岡田親義(おかだちかよし)によって築城されたという伝承があるそうです。実際は後世でしょうが、この岡田親義、「以仁王(もちひとおう)の令旨」によって挙兵した木曽義仲(きそよしなか)軍の大将格として奮戦し、倶利伽羅峠(くりからとうげ)で戦死したそうです。
この土地は後庁(ごちょう)氏が支配していましたが、赤沢氏に滅ぼされ、その後、小笠原氏の支城になっていきました。天文19年の武田氏が勝鬨(かちどき)をあげた「イヌイの城」の落城の際、林大城・深志(松本城)・岡田(伊深城)・桐原・山家の五城が自落した中の岡田の城がここのことだと考えられます。きっと、その後に小笠原貞慶(おがさわらさだよし)によって、改修されていったと思われます。
さて、道順ですが、岡田宿を越え、女鳥羽川(めとばがわ)沿いの道を北上し、洞(ほら)の信号機を左折します。
500m先を右折すると(写真えといっしょのところ)山すそにお宮が見えます。そこが若宮八幡宮です。そこを目指します。
また、信州大学の西横の田沢方面に抜ける143号線、岡田新道を北上すると六助池(ろくすけのいけ)の信号を右折します。
矢作(やはぎ)の信号を右折します。
200mほどで側道に入り
次の交差点を左折します。(若宮八幡社下)
すると急坂の向こうに若宮八幡宮が見えてきます。
鳥居の左手に大きな駐車場があります。石段を登ってもいいですし、右手に車道がありますので、そちらからでも大丈夫。車道の行き止まりが登り口です。
ここから九十九折の登山道が整備されています。見上げるとかなりの急坂です。
10回ぐらいの折れで道標が見えてきます。ここからが城内だと思われます。
まっすぐ進むと曲輪(くるわ)4になります。主郭(しゅかく)は左に曲がったところです。
曲輪4には登り土塁(のぼりどるい)らしきものがあります。きっと、いざという時、兵が出てきて追撃するものと思われます。
主郭への道を進むと笹が目立ってきますが、ここが段曲輪(だんくるわ)群だと思われます。笹を切り払うと見えてくるので整備していただけるとありがたい。
そこを抜けるとまっすぐな登城道(とじょうみち)が見えてきます。
しばらく行くと堀切(ほりきり)が見えてきます。小笠原城郭群(おがさわらじょうかくぐん)の特徴として長大な堀切があります。ここも堀切が集まり、麓まで続いています。ここを下っていくのも面白そうなので、おすすめします。
堀切を過ぎるといよいよ、城内です。まずは曲輪3.ここには石積みが少し残っています。
そして曲輪2と二段になった曲輪2‘が主郭の南と西を取り囲んでいます。きれいに削平されていています。桜の古木50本ほどが植えてあり、落ち着く場所です。
曲輪2’の北側から主郭に入っていきます。虎口(こぐち)がはっきりわかり、主郭は2段の構造です。奥には土塁が築かれています。
この主郭からは南側の市街地、木曽方面やアルプスを望みながら下の道も見ることができます。
また、曲輪4からは三才山へ抜けていく道もよくわかります。とてもいい場所に建てられたと感心します。
主郭周辺には石積みも見られます。
主郭を下りて西側の小曲輪から背後の堀切を見に行くことができます。宮坂本の東側の道は倒木もありはっきりしませんでした。
堀切から見た主郭は15mほど高さを感じます。
そこから背後に続く堀切はこれでもかというばかりに続きます。比較的緩斜面が続く北側からの侵入を恐れたものと思われます。小笠原の山城の特徴です。
帰りは曲輪4の横を通り、慶弘寺(けいこうじ)公園方面に下りていきました。よく整備されています。見上げれば急坂の斜面ですが、こちらからの方が楽に登れるかもしれません。慶弘寺公園もきれいに整備されています。
10日後、山頂の桜の様子も見たくて最登城。今回は慶弘寺公園より。
慶光寺公園は写真お:若宮八幡社下の交差点から20mほど東へ行った道祖神がある交差点を左折します。
ここから右折、左折をし、山手に向かうと公園が見えてきます。駐車場もあります。伊深館(いぶかやかた)はこちらの方面にあったので、こちらが大手道なのかもしれません。
そこに車を止めて登ります。やはり、急坂ですのでやや疲れますが、すぐに曲輪4に着きました。
帰りは堀切を下りようと歩を進めました。曲輪2‘の下に下りていくと、かなり深い堀切ケとコがあります。ここをすべるように下りました。もっと木々が茂ってくると難しいでしょうが、面白かったです。ちょうど、お宮の上におりてくることができます。
地元の方々の整備がよく見え、登りやすい城です。小笠原城跡群、北の砦です。ぜひご登城を。