発掘された松本2022⑦ 「出川南遺跡第29次調査」

 前回(発掘された松本2022⑥ 「松本城二の丸跡第9次調査」)に続き、発掘された松本2022の調査結果を紹介していきます。今回は出川南遺跡第29次調査です。

出川南遺跡第29次調査

 出川南遺跡は、南松本駅周辺から南西に広がる広い遺跡で、今までの調査で、古墳時代を中心に600軒以上の住居跡や埴輪が置かれた古墳、弘法山古墳との関連を示す東海地方の特色を持った土器が見つかっている大集落の遺跡です。
 今回の調査地は遺跡の中心部分にあたる箇所の調査でしたが、人が生活した痕跡はほとんど確認することはできませんでした。そのかわりに今回の調査では、①非常に緩やかな水の流れによって生成された湿地帯の存在、②南西から北東に向かって流れたと見られる大規模な自然流路の存在、そして湿地帯と自然流路の存在によって古墳時代の大規模集落の中心地にもかかわらず人の住めない場所になっていたことがわかりました。

第29次調査の調査地図

第29次調査の調査地図

西から見た調査地の様子

西から見た調査地の様子

 自然流路から見つかった石を調べたところ奈良井川系統であることがわかりました。また、この流路からは数は多くないものの須恵器が出土しました。流路の上流方向で古代の遺構が見つかっていることから、そこから流れてきたものの可能性があります。

流路から出土した須恵器片

流路から出土した須恵器片

 調査の結果、この自然流路は古代以前の穴田川の旧流路である可能性があることがあわかりました。現在は小さな流れの穴田川ですが、過去には幅の広い大きな川であったのではないかと考えられます。

 

※次回更新は8月1日です。8月1日号より毎月1回の更新となります。