発掘された松本2022④ 「松本城三の丸跡土居尻第15次調査」

 前回(発掘された松本2022③ 「松本城三の丸跡土居尻第14次調査」)に続き、発掘された松本2022の調査結果を紹介していきます。今回は松本城三の丸跡土居尻第15次調査です。

松本城三の丸跡土居尻第15次調査

  土居尻は、松本城三の丸のうち史跡松本城跡の南側、大名町の西側の一帯で、江戸時代には松本藩の武家屋敷地のうち中級家臣の屋敷地として利用されてきた場所です。
 第15次の調査地は、西不明門(にしあかずのもん)に隣接する屋敷地や総堀、土塁にあたります。

絵図で見る土居尻の調査位置

絵図で見る土居尻の調査位置

 調査の結果、江戸時代中頃以降に調査地一帯で盛土造成を行い、武家屋敷地として利用され始めたことがわかりました。また、屋敷を建て替える際は、整地土を削平した後に同じように整地したことがわかり、今回の調査では幕末の整地土のみが残っていました。今回の調査地から近い第6次調査でも同様の盛土造成が確認されており、土居尻地区の北西部は地形に起伏があり、屋敷地を造るためには造成工事が必要であったことがうかがえます。
 
 武家屋敷地の幕末の地面を削ると江戸時代後半のゴミ穴跡、塀の基礎、半地下状遺構、水道施設跡といった遺構が確認できました。半地下状遺構は長方形状に丁寧に掘られており、貯蔵用等のために掘った半地下状の蔵である可能性があります。松本城近辺の調査ではこうした遺構は初めて見つかりました。
 また、特筆すべき遺物として“金箔カワラケ”がゴミ穴跡から出土しました。金箔カワラケは中世の頃から饗宴の場や特別な儀式の際に使用される酒器です。全国的にも出土例は少なく、大名クラスの城・居館等での出土が確認されています。

金箔カワラケ

金箔カワラケ

 江戸時代の盛土造成土を除去すると松本城築城以前の地面が見つかり、石組みの井戸跡だけが見つかりました。この井戸跡は直径(内径)約65cm、深さ約3mで石を丁寧に積んで造っている様子がわかります。井戸の底は湧水の多い砂礫層まで掘り下げていました。井戸跡から遺物が発見できなかったためいつ造られたのかは不明ですが、周辺の調査成果から古代から中世にかけてのものと考えられます。

石組みの井戸跡

石組みの井戸跡