Vol.060 雑草という名の草はない( R5.7.4 文責:内川 )

今年度前半のNHK朝の連続テレビ小説「らんまん」の主人公は植物学者の牧野富太郎がモデルです。『日本植物学の父』とも呼ばれる人物がモデルということで、植物学というものが世間から注目される良い機会になっていると思います。

さて、前回(Vol.50)の引き続きで博物館周辺の自然を記事に、と思い立ったとき牧野博士が言ったとされる「雑草という草はない」という言葉を思い出しました。そこで、博物館周辺の『雑草』を調べてみることにしました。

『雑草』の定義は観点によって違いますが、性質としてはおおまかには「日当たりのいい整備された場所で、急速に成長する植物たち」です。昨年の建設地の様子の記事を見ると、博物館前の植込みなどは7月以降に整備された様です。作られてまだ1年、定期的に手入れがされている場所(今回見つけた雑草もそのうち抜かれてしまうでしょう)でも、たくましい『雑草』たちはどこからか入り込んで成長します。

 

イネ科の『雑草』

メヒシバ

メヒシバ

いたるところに生えているので、誰もが一度は目にしたことがあると思います。

スズメノテッポウ

スズメノテッポウ

どちらの種も花が咲いているところです。イネ科の植物は花びらのない地味な花を咲かせます。イネ科に属する『雑草』はとても多く、他にもイネ科の植物がありましたが、穂が出ていない状態では私には判断が難しかったです。 

キク科の『雑草』

イネ科の『雑草』とともによく見かけるのがセイヨウタンポポやヒメジョオン、ハルジオンなどのキク科の植物ですが、今回は目立つものでは1種しか見つけられませんでした。

ハキダメギク

ハキダメギク

ハキダメギクという名前は牧野博士が世田谷区の掃き溜めで見つけたことからついた名前だとか。

ハキダメギク筒状花

コゴメギクというよく似た種がいて(どちらも外来種)、正確に確認するには花を解体して、赤い矢印の部分に毛があるかを調べる必要があります。

カタバミの仲間

カタバミは果実が熟すとはじけて種子を飛ばすうえ、種子にエライオソームというアリが好む部分があるため、アリに運ばれて様々なところに拡散します。

カタバミ

カタバミ 

在来種の野草で、道端など様々なところで見られる黄色の小さな花とハート形の三つ葉が特徴的な可愛らしい植物です。通常カタバミというと葉が緑色ですが、変異が大きく、写真は少し赤みがかっています。葉が赤いのはアカカタバミ、その中間型はウスアカカタバミとも呼ばれます。

オッタチカタバミ

オッタチカタバミ

カタバミによく似た外来種で、カタバミは普通地面を這うように成長するのに対して上に伸びるように成長するためこの名がついています。ただし、カタバミの中にも上に伸びる成長をするものがいるため、より正確に見分けるには葉の根本や毛など、細かい部分を確認する必要があります。

 

他にも名前が分かるものもすぐには分からないもの、様々な『雑草』が見つかりました。解説のとおり、名前を調べるためには非常に細かい部分を調べる必要があることも多く、ドラマの中でも図版で細かい部分まで描写する必要があるために印刷技術を学ぶ場面が描かれています。こうやって『雑草』の名前を調べることができるのも、牧野博士をはじめ先人たちの努力があったからこそです。