考古博物館ニュース⑪ 学芸員のおすすめ資料「三間沢川左岸遺跡のお宝」

三間沢川左岸遺跡の出土品

 三間沢川左岸遺跡は、和田地区西原に広がる平安時代のムラの跡です。
 昭和30年代の開田工事でたくさんの土器が発見され、古代の遺跡であることがわかりました。その後昭和62・63年に工業団地の造成にあたり発掘調査が行われ、竪穴住居址130棟、掘立柱建物址10棟が検出されました。出土遺物は土師器や須恵器、灰釉陶器、緑釉陶器、銅印、銅鋺、八稜鏡、鉄器のほかに200点を超す墨書土器があります。出土品から9世紀中頃から10世紀後末頃までのほぼ150年にわたる、計画的に開発された荘園の一部であると考えられます。
 今号では、三間沢川左岸遺跡から出土した松本のお宝を紹介いたします。
※ 紹介している資料は常設展示室にて展示中です。

<銅印「長良私印」>

銅印「長良私印」

 銅で作られた古代の印鑑。松本市では初めての出土で、長野県内でも珍しい一品です。
 9世紀後半の住居址より単独出土しました。大きさは3.3cm×3.2cm、高さ2.8cm、重さ52.15g。印文は2行に「長良」「私印」と楷書風の文字で書かれ、印面には朱が残っていました。
 松本市重要文化財に指定されています。

<八稜鏡>

八稜鏡

 平安時代の鏡で、八角形をした銅鏡です。裏面の紋様は不鮮明ではありますが、瑞花双鳥文と推定されます。貴族しか持つことができなかったもので、三間沢川左岸遺跡ではこの1点が発見されました。

<海獣葡萄鏡片>

海獣葡萄鏡片

海獣葡萄鏡片

 欠損が著しく、詳細が不明ではありますが、裏面の紋様は海獣の身体と葡萄の房がみられます。

<緑釉陶器>

緑釉陶器

 緑色の釉薬をかけた緑釉陶器が237点出土し、大半を椀と皿が占めます。緑釉陶器は中国の磁器をまねて、愛知県や岐阜県で焼かれました。緑釉陶器はいったん都に献上され、その後地方の有力者に与えられたもので、三間沢川左岸遺跡の有力者は都の貴族とつながりがあったとされます。

<役人のベルト飾り>

役人のベルト飾り

 平安時代の役人は腰にベルトを締め、ベルトには四角や半円形の飾りがつけられていました。飾りには銀や銅、水晶、大理石などが使われ、材質の違いで身分を示したとされます。