松本市内遺跡紹介⑮ 「内田地区の遺跡~エリ穴遺跡2~」
前号に引き続きエリ穴遺跡です。出土品を中心に紹介いたします。
日本一の一括出土量を誇る土製耳飾り
エリ穴遺跡で最も有名とも言えるのが“土製耳飾り”です。2,643点出土しており、一括で出土した量としては日本で一番多い数となります。
土製耳飾りは縄文時代後期の終わりから晩期の初めにかけて、甲信から西関東地方を中心に東日本の各地で出土しています。耳たぶに穴を開け、その中にはめ込んで着けていたとされ、出土した土偶にも耳飾りの装着を示すものがあります。現代のピアスに比べてとても大きく、直径が3~5cmのものが多く、中には9cmを超える大型品もあります。形は臼のような形をした臼形、リング状の環形に分けられます。精巧な彫りが施されるものから装飾の無いものと様々です。朱で赤く彩色されたものが多く、おしゃれだけではなく、儀式を行うときにも着けていたと考えられます。
エリ穴遺跡では関東地域を本場とする耳飾りも出土しており、周辺の集落だけでなく広域から人々が集まる何らかの儀式が行われていたのかもしれません。儀式後、役目を終えた耳飾りは自分たちの集落へ持ち帰らずにエリ穴の集落の廃棄場に廃棄されたのでしょうか。
耳飾り以外の特徴的な遺物
エリ穴遺跡では、耳飾り以外にも特徴的な遺物が多く出土しています。
土偶は顔面付き分銅形土偶25点を含む454点、釣手土器40点、異形台付き土器9点、香炉形土器62点、多孔底土器7点、手燭形土製品15点、人面付き土版を含む土版13点、中空動物形土製品14点と多くの出土品が確認されています。これらは信仰にかかわる祭祀具として使われていたと考えられます。
土版は四角い粘土板に文様をつけて、焼かれたもので東日本の広い範囲で出土しています。エリ穴遺跡の人面付土版は女性の全身が表された珍しい例です。体の中央で割られ、重ねられた状態で出土しました。祭祀行為に伴い破壊され、埋葬されたと考えられます。この他にも内側に仕切りのある土器や多数の穴が開いている土器、異形台がついた土器が出土していますがこれらは用途がはっきりとしていません。
土製品以外には石製品も出土しており石棒や石刀は折れているもの、火を受けた跡があるものが確認されており、これらも祭祀に使われていたのかもしれません。
コラムクイズ
内田地区には松本市重要無形民俗文化財に指定されている踊りがあります。なんでしょう。