松本市内遺跡紹介⑧ 「入山辺地区の古墳~南方古墳~」
入山辺地区は、松本市街の東方に位置し、薄川の最上流域にあたります。薄川が扇状地形を作る付近から傾斜はあるものの平坦地が広がり、集落も山麓や段丘上に展開し、里山辺地区へつづきます。山の谷間に位置していることから狩猟・漁撈・植物採集といった面で恵まれていますが大きな遺跡は見つかっていません。
この谷間は諏訪地域や小県地域との交通路にもあたるため、人々の往来があったことを示す遺跡が点在しています。交通路のためか中世には中入城や桐原城など多くの山城が構築されています。
南方古墳
南方古墳は入山辺南方集落西側の薄川左岸の段丘上に位置しています。ほ場整備中に偶然発見された古墳です。
石室の西側側壁の大半は重機により破壊されてしまいましたが、残存している奥壁、東側側壁、西側側壁と羨道の一部や土層の様子から、自然地形(段丘)を利用した横穴式石室と考えられ、おそらく胴張りの片袖式石室だったと推測されます。また、周溝のごく一部が確認され、形状から考えると径24mの円墳と考えられます。
玄室の最大幅は2mほどとみられます。奥壁には最大幅約0.9m、長さ1.2m以上の円礫・角礫が、側壁や床面には河原石が使われていました。
豊富な副葬品
南方古墳はその存在が知られていないこともあり未盗掘で多くの副葬品が見つかりました。その豊富な副葬品は、市内の他の古墳と比較しても圧倒的に多く、特に金環や勾玉の玉類を中心とした装身具は700点を超えます。他にも県内でも珍しい壺鐙を含む馬具類、直刀や刀子の武器、須恵器や銅鋺、承盤といった喪葬用の器が出土しています。土師器1点・須恵器5点は完形で、奥壁脇に横一線に置かれた状態で見つかっています。
また、圭頭柄頭(けいとうつかがしら)や倒卵形鐔(とうらんけいつば)など金銅製の儀刀は、被葬者を知る資料として重要なものです。
コラムクイズ
松本地域では2月8日を「こと始め」の日と呼び、山辺地区では藁で作った馬や蛇などを集落の外へ神送りし、焼き払うといった行事が行われます。これはなんという行事でしょう。