★時計博新聞創刊号「時計の歴史~自然時計編~」★
時計博新聞とは
こんにちは!時計博物館学芸員の小林です。今回から当ホームページにて「時計博新聞」を連載します。時計博新聞は、時計の仕組みや種類をはじめとした時計に関することから、時間やときについてまでご紹介します。人間が初めて考えた時計は、紀元前2000年頃、バビロニアで使われていたとされる日時計です。その後人間は、季節の移り変わりに伴って生活リズムを築き、やがて暦を考え、より合理的で高精度な時計を発明しました。人類の歴史や生活を知る上で切り離すことができない時間という概念を刻み続けてきた時計の魅力に思いを馳せてみてください。
時計の歴史
時計博新聞創刊号は、「時計の歴史~自然時計編~」です。人間が機械式時計を初めて発明したのは、およそ13世紀頃だと考えられています。今回は、人間が機械式時計を発明する以前、自然の力を使って考えられた時計(ここでは自然時計と表現する)の紹介をします。
初の時計「日時計」
人間が初めて考えた時計は、上述のとおり、紀元前2000年頃に使われていた日時計ですが、発掘された最古の時計は、紀元前1500年頃にエジプトで用いられたとされる日時計です。日時計は文字通り、太陽が昇って沈むことによる影の移動を利用した時計です。日時計と聞くと、下の写真のような目盛りのついた鉄板の真ん中に一本の棒が立っているものをイメージしますが、最古の日時計はT字型のシンプルな形をしています。朝、横木を東に向けることで5つの目盛りがついた縦木に影がかかり、目盛りを読んで時間を把握します。正午になったら、横木を今度は西に向けて同様に時間を把握します。日時計は限りなくシンプルですが、機械式時計の精度が向上する17世紀まで最も正確な時計だったと言われています。
水時計
太陽の出ている時間しか使用できないという日時計の弱点を克服し、続いて発明された時計は水時計です。水時計は紀元前1500年前頃の古代バビロニアで発明されたと言われています。また、紀元前250年頃には、アルキメデスが水時計の仕組みを参考にして、プラネタリウムの原型を作ったと考えられています。紀元後は、中国を中心に巨大な水時計が製作されました。日本では、671年4月25日、中大兄皇子(後の天智天皇)が漏刻という水時計を設置し、日本で初めて時報を伝えたという記録が日本書紀にあります。この日にちなんで、4月25日を新暦に換算した6月10日は時の記念日に制定されています。
砂時計
太陽が出ていない時間でも使用できる水時計ですが、水の蒸発や凍結で使用できなくなることもありました。この課題を解決したのが、水時計を応用して考えられた砂時計です。4世紀、フランスのルイトプランドによって発明されたとされています。しかし、砂時計が利用されるようになったのは、砂を収めるガラス技術が進歩した13世紀からでした。当時は教会や個人宅、船舶など、あらゆる場所で使用されていた記録が残っています。
その他の自然時計
最後に、その他の自然時計を紹介します。9世紀には、ろうそく時計、ランプ時計、火縄時計、線香時計など、燃焼系の時計が次々に発明されました。ここでは特に、当館2階展示室に展示中の線香時計(愛称:龍の時計)を説明します。下の写真のように、龍の時計の胴体の上に均一に6本の黒糸が並んでいます。その上に横たえる形で火のついた線香を置くと、順番に糸が焼き切れます。そして、糸にくくり付けられた球が下の真鍮板に落ち、時間を知らせる仕組みです。球が落ちるのはほぼ5分毎になっており、時計というよりはタイマーのようなものです。屋外に設置し、屋内にも聞こえるほど大きな音が鳴り響きます。ぜひ時計博物館にご来館いただき、間近でじっくり見てみてはいかがでしょうか。
最後に
今回は時計の歴史の中でも、自然時計の紹介をしました。次回は、機械式時計の歴史をご案内します。次回もお楽しみに。皆様のご来館をお待ちしております。