旧松本区裁判所庁舎が国の重要文化財に指定されました

旧松本区裁判所庁舎国の重要文化財に指定されました

煉瓦造の正門と建物正面

煉瓦造の正門と建物正面

車寄が付く玄関

車寄が付く玄関

 平成29年11月28日の官報告示号外256号(文部科学省告示第177号)により、旧松本区裁判所庁舎(長野県宝 旧長野地方裁判所松本支部庁舎)が新たに重要文化財に指定されました。

旧松本区裁判所庁舎とは
 旧松本区裁判所庁舎は、明治41年(1908)に松本城二の丸御殿跡に建てられました。設計は司法省とみられ、施工は坂巻儀平ら7名の地元の大工が担当しています。区裁判所は戦前の裁判所組織の名称で、現在の簡易裁判所にあたります。旧松本区裁判所庁舎には、区裁判所の機能とともに長野地方裁判所松本支部の機能も置かれ、建物内に区訟廷と支部訟廷の2つの法廷が設置されていました。戦後、名称が長野地方裁判所松本支部・松本簡易裁判所に変わりましたが、建物は昭和52年(1977)に新庁舎に機能が移転するまで、約70年に渡り市民に親しまれてきました。

明治41年の竣工直前

明治41年の竣工直前

右奥に松本城天守がそびえる(昭和52年)

松本城天守がそびえる(昭和52年)

   

市民が守った文化財
 新庁舎に機能が移転した翌年には、旧庁舎の解体工事が始まりました。いよいよ庁舎本館を残すだけとなったとき、「貴重な建物を後世に残して活用したい」という市民の熱心な運動が起こり、その結果、移築して保存することが決まりました。保存運動を行った市民は、建物を保存公開するために財団法人日本司法博物館を設立し、昭和57年、移築復元された建物は博物館施設として生まれ変わりました。昭和60年には文化財としての価値が評価され、旧長野地方裁判所松本支部庁舎として長野県宝に指定されています。その後、平成13年に松本市に譲渡され、翌年「松本市歴史の里」に改称しました。

保存を訴える市民パレード

保存を訴える市民パレード

建物の特徴
 木造平屋建の建物は、主体部の南北両端に翼部を付した左右対称のH形平面で、主体部の正面中央に玄関を突出させ、さらに車寄を付けています。内部は、南翼部に支部訟廷、北翼部に区訟廷をそれぞれ置き、訟廷は、外部から石廊下を通って入廷する被告人・弁護士等と、建物内から入廷する判事・検事等との動線を明確に分けています。また、判事等の席は被告人等の席よりも上段に設置されています。
 外観は、柱を現し長押を廻らせた外壁や、入母屋屋根を組み合わせた瓦屋根により全体を和風意匠でまとめています。また、屋根正面と側面に各2所付けられたドーマ窓や、両翼部の小屋組みに採用されたキングポストトラスなど洋風の手法も併用され、近代和風建築の要素が多数みられます。

判事等の席が上段にある支部訟廷

判事等の席が上段にある支部訟廷

両側に受付のある玄関

両側に受付のある玄関

 

 

 

 

 

 

 

価値・評価
 戦前の裁判所建築は、大審院(現在の最高裁判所)や大阪・名古屋などの控訴院(現在の高等裁判所)、神戸・熊本などの大都市の地方裁判所は、洋風意匠で建てられましたが、地方都市の地方裁判所や区裁判所は、もっぱら和風意匠で建てられています。明治期の和風の裁判所建築で現存するものは、旧相川区裁判所(新潟県佐渡市、明治21年築)、旧篠山区裁判所(兵庫県篠山市、明治24年築)など、松本のほかに6件あります。
 こうしたなかで、旧松本区裁判所庁舎は、明治期後半の区裁判庁舎の典型的な特徴をよく示し、和風の裁判所建築のうちもっとも完成度が高いことから、歴史的価値が高いと評価されています。

建築講座「松本のたてもの2017~松本の近代和風建築~」

 和風建築といえば、「日本の伝統的な建物」と思われる方が多いかもしれません。
 しかし、明治期から昭和初期に建てられた和風建築は、幕末の開国や明治維新による身分制撤廃・文明開化の影響を受け、江戸時代までの伝統的な建築から大きな変化を遂げています。これを「近代和風建築」といい、洋風建築とならぶ近代建築の大きな要素として注目されています。
 そこで、この講座では、地元で活躍されている建築士の方々と協働して、松本市内に現存する近代和風建築をパネル展示でご紹介するとともに、展示説明会・講演会、まち歩き見学会を開催します。
 まちの建築を知ると、もっとまちが好きになるかも。ぜひご参加ください。
 詳細は、チラシをご覧ください。

松本のたてもの2017チラシ

料亭の大広間

料亭の大広間

明治期の蔵座敷

明治期の蔵座敷

浅間温泉の湯屋

浅間温泉の湯屋

出張展示「山本茂実」パネル展(庄内地区公民館)

 『あゝ野麦峠』の作者として知られる山本茂実は、松本市並柳で生まれ今年で生誕100年を迎えます。これを記念して、故郷である庄内地区公民館でパネル展を開催します。お近くにお寄りの際には、ぜひご覧ください。
 また、9月13日(水)には、山本茂実と『あゝ野麦峠』に関する勉強会を開催しますので、ぜひお気軽にご参加ください。

○パネル展
会 場:8月30日(水)~10月1日(日)
    ※9月27日(水)は休館日
会 場:庄内地区公民館(ゆめひろば庄内1階) 図書コーナー

○勉強会
日 時:9月13日(水)9時~10時30分
会 場:庄内地区公民館(ゆめひろば庄内1階) 視聴覚室
内 容:「山本茂実と『あゝ野麦峠』」と題し、当館学芸員が解説します。
その他:事前申し込み不要、参加費無料

 ご不明な点は、会場・アクセス等については庄内地区公民館(電話:0263-24-1811)、内容については歴史の里(電話:0263-47-4515)にお問い合わせください。

山本茂実パネル展

山本茂実パネル展

第7回戦争と平和展「非戦~木下尚江の訴え~」

木下尚江(明治45年撮影)

木下尚江(明治45年撮影)

小説『火の柱』

小説『火の柱』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不幸にして日本人は世界の好戦者なり」
「非戦論の要諦は『不義』にあり、『不利』のごときはそも末節の末節のみ」

これは、日露戦争開戦前に、松本出身の木下尚江が新聞紙上で発表した論説の一部です。
国全体が戦争一色になろうとするなか、尚江は『非戦論』を訴え続けました。

本展では、尚江の『非戦論』を通して、戦争と平和を考えます。

会場:歴史の里 展示休憩棟
会期:平成29年7月22日(土曜日)~9月3日(日曜日)
料金:通常観覧料(大人400円、中学生以下は無料)

 

松本市市制施行110周年記念 連携展「松本の近代建築」

重要文化財旧開智学校校舎と歴史の里の2館が連携して開催する企画展です。明治初期の擬洋風建築の代表作である旧開智学校校舎と、明治期の木造裁判所庁舎の旧長野地方裁判所松本支部庁舎。全国的にも貴重な2つの建築を通して、松本の近代建築を紹介します。

歴史の里会場では、「市民が守った文化財~旧長野地方裁判所松本支部庁舎のあゆみ~」と題し、長野県宝に指定されている旧長野地方裁判所松本支部庁舎の歴史と魅力、そして、この建物を保存した市民運動について紹介します。

会 期:6月3日(土)~10月1日(日)
休館日:月曜日(休日の場合は翌日)
観覧料:通常観覧料(大人400円、中学生以下は無料)
詳細は、添付チラシをご覧ください。

松本の近代建築チラシ

 

写真展「歴史の里ってどんなとこ?」

 「歴史の里」と聞いて、どんなことをやっている博物館か分かりますか?
 皆さんに「歴史の里がどんなところか知っていただきたい」との想いから、歴史の里の活動をご紹介する写真展を企画しました!2016年の1年間に実施した「はた織り」や「みすず細工」などの体験講座、様々な企画展や建築講座などの様子を写真でご紹介します。また、保存展示している歴史的建造物がみせる、四季折々の美しい写真も展示します。体験講座に参加するも良し、建物や景色を見るも良し。ぜひ歴史の里をお楽しみください。

会期  平成29年1月28日(土曜日)~4月16日(日曜日)
    ※休館日は月曜日、休日の場合はその翌日
会場  歴史の里 展示休憩棟
料金  通常観覧料(大人400円、中学生以下は無料)

体験講座の作品と写真を展示します

体験講座の作品と写真を展示します

秋と冬の景観

秋と冬の景観

 

戦争と平和展「山本茂実と戦争」

  「あゝ野麦峠」の著者である山本茂実は、松本の農家に生まれ長男として一家を支えた体験から、一貫して歴史の陰に埋もれた庶民に目を向けてきました。本展では、山本の戦争関連資料を展示し、山本が戦争にどのように関わり、また、どのように感じていたのかをご紹介します。

会  期  平成28年8月6日(土)~9月25日(日)
      休館日は月曜日(休日の場合はその翌日)
開館時間  午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
会  場  松本市歴史の里 展示休憩棟
料  金  通常観覧料(大人400円、中学生以下は無料)

展示の様子(近衛歩兵第三連隊の写真)

展示の様子(近衛歩兵第三連隊の写真)

昭和7年の日記(上部欄外に出征のスケッチあり)

昭和7年の日記(上部欄外に出征のスケッチあり)

企画展「工女宿宝来屋と野麦街道」

 松本と飛騨高山を結ぶ野麦街道。
 急峻な北アルプスを横断するこの街道は、古くから物流の道として利用されていました。日本海で水揚げされ飛騨高山を経由して松本にもたらされるブリはその代表で、「飛騨ブリ」として松本の正月に欠かせない年取り魚になっています。また、「あゝ野麦峠」で知られるように、諏訪地方の製糸工場で働く工女たちが故郷の飛騨地方に帰る道でもありました。
 本展示では、野麦峠の麓にあった工女宿宝来屋の資料などを通して、野麦街道を行き交ったヒトとモノを紹介するとともに、現在に残る旧街道の痕跡を写真で展示します。この展示をきっかけに、野麦街道を歩いた人々に想いを馳せて旧街道を歩いたり野麦峠を訪れてみてはいかかでしょうか。

会    期  平成28年7月23日(土)~9月11日(日)
          休館日は月曜日(休日の場合は、その翌日)
開館時間  午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
会  場  松本市歴史の里 工女宿宝来屋
料  金  通常観覧料(大人400円、中学生以下は無料)
協  力  松本市ながわ観光協会、奈川地区地域づくりセンター

旧野麦街道(野麦峠)

旧野麦街道(野麦峠)

工女宿宝来屋の内部

工女宿宝来屋の内部

企画展「歴史の里コレクション展Ⅱ」

大日本帝国憲法官報号外(明治22年)

大日本帝国憲法官報号外(明治22年)

大岡仁政録(明治16年)

大岡仁政録(明治16年)

  松本市歴史の里は、県宝の長野地方裁判所松本支部庁舎などを移築した「たてもの野外博物館」として知られていますが、建築物のほかにも貴重な資料を収蔵しています。本展示では、普段は展示していない江戸時代から明治時代までの貴重な資料を展示します。

会 期
平成28年4月29日(金)~6月26日(日) 9時~17時(入館は16時30分まで)

休館日
月曜日(休日の場合はその翌日)

会 場
歴史の里 展示休憩室

展示品
江戸時代の名奉行「大岡越前守忠相」の名裁きを紹介した大岡仁政録(明治16年)や大日本帝国憲法官報号外(明治22年)など約40点