Vol.75 松本銭鋳造ワークショップ準備中 (R5.10.24 文責:宮下)

松本市立博物館の3階常設展示室で、江戸時代に使われていた当時のお金を展示しています。「寛永通宝松本銭」という名で展示しているこの古銭は、当時全国で流通していたお金ですが、展示してある資料はちょっと変わったところがあります。製作途中のものや失敗作が見られるのです。実は、松本には銭座という寛永通宝を鋳造する場所があったため、通常では見られない失敗作などが残っています。

寛永通宝松本銭(枝銭)。左側には、金属を流し込む通り道(湯道)の形が残されています。

寛永通宝松本銭(枝銭)。左側には、金属を流し込む通り道(湯道)の形が残されています。

当館では、松本で作られたこの松本銭を石こうで鋳造するというワークショップを準備中です。元になる資料を立体的に計測して作られた原型を使って型を作り、この型に水で溶かした石こうを流し込むことで松本銭の鋳造を体験するというものです。

石こう用の型。大きな穴から石こうを流し込み、固まった後に真ん中から開きます。

石こう用の型。大きな穴から石こうを流し込み、固まった後に真ん中から開きます。

型の内側には、松本線の形が見られます

型の内側には、松本銭の形が見られます

 

展示品と同じ大きさだと壊れやすいため、製作品は一回り大きくしていますが、細かい凹凸などは忠実に再現され、展示しているものとほぼ同様の松本銭を手にすることができます。また、固まった石こうには、色を塗ることができるので展示品と同様の見た目にすることも可能です。

石こうで作られた松本銭

石こうで作られた松本銭

10月21日には、来館した地域の子どもたちや保護者の方々にこの鋳造体験にチャレンジしてもらいました。開いた型の中からキレイに固まった松本銭が現れた際の嬉しそうな参加者の顔が印象的でした。また、出来上がった松本銭への色付けでは、黄色やブロンズ色を用いて自分だけの松本銭作りが見られるなど、想像力豊かに取り組んでいる姿が見られました。

好きな色での着色が可能。写真は、ブロンズ色で塗った松本銭です。

好きな色での着色が可能。写真は、ブロンズ色で塗った松本銭です。

一方、型の中にしっかり石こうが入らず形にできなかった方も出るなど、課題も見られました。今後も準備を重ね、松本市立博物館ならではの体験をお楽しみいただけるよう取り組んでいきます。