Vol.114 「地獄占い」が大好評! ( R7.8.7 文責:武井 )
現在開催中の特別展「地獄の入り口―十王のいるところ―」。
その中でひそかに好評をいただいているのがこちら!
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「地獄占い」(全8種)です。
地獄の入り口(展示室)で多くの十王様にお目見えした後、あなたにはどのような裁きが下されるのか…!というコンセプトで展示室出口に設置しているおみくじで、地獄しか出ないにもかかわらず多くの方々に楽しんでいただいております。
そこで今回は、地獄占いに使用した8つの地獄、「八大地獄」について、より詳しくご紹介したいと思います。まだ展示をご覧になっていない方は観覧前の予習として、すでに展示をご覧いただいた方は、自分が引いた地獄が具体的にどのような場所なのか、ぜひ思いをはせてみてください。
1 等活(とうかつ)地獄 ― 殺生を犯した者が堕ちる
刑期※:1兆6653億1250万年
刑罰:亡者同士が鋭い鉄の爪で傷つけあう。獄卒に包丁のような刃物で細かく切り刻まれる。亡者は死んでも、獄卒が「活々」と唱えたり、涼しい
風が吹いたりすると元通り蘇り、責め苦を受け続ける。
◇主な小地獄(各地獄に16ずつ付属している)
①刀輪処(とうりんしょ)
他人を傷つけた者が堕ちる。熱せられた鉄や刀が雨のように降ってくる。
②屎泥処(しでいしょ)
小動物を殺したりいじめたりした者が堕ちる。煮えたぎる糞尿の池に落とされ、糞尿を食わされたり、固いくちばしを持つ虫に食われたりする。
![]() 『和字絵入往生要集』より 等活地獄 |
2 黒縄(こくじょう)地獄 ― 殺生のほか、盗みを犯した者が堕ちる
刑期:13兆3225億年
刑罰:焼けた鉄縄で身体に線を引かれ、その線に沿ってのこぎりなどで切り裂かれる。柱に張られた熱い鉄縄を渡らされる。下には煮えたぎる釜が
待ち構えており、落ちると砕かれ煮られる。
◇主な小地獄
①等喚受苦処(とうかんじゅくしょ)
真面目に働かず嘘の教えを説いた者が堕ちる。熱い鉄縄で縛られ、高い崖から刀が突き出す熱い地面へと落とされ、そこでは鉄の牙を持ち炎を吐
く狗(いぬ)に食われる。
②畏熟処(いじゅくしょ)
食べ物を盗み他人を餓死させた者が堕ちる。刀や弓矢を持った獄卒に昼夜を問わず追いかけられ続ける。
![]() 『和字絵入往生要集』より 黒縄地獄 |
3 衆合地獄 ― 殺生、盗みのほか、みだらな行いをした者が堕ちる
刑期:106兆5800億年
刑罰:牛頭・馬頭などの獄卒に鉄山の間に追い込まれ、その山が押し寄せてきてすりつぶされる。鉄の臼・杵で搗かれたり、獣や鳥に体を食われた
りする。赤銅の川の中に突き落とされ、亡者は天に向かって泣き叫ぶ。
◇主な小地獄
①悪見処(あくけんしょ)
他人の子どもを虐待したり淫行を犯した者が堕ちる。他人の子どもが受けた苦しみと同等の責め苦を、自分の子どもが受けるところをひたすら見
せられる。
②忍苦処(にんくしょ)
他人の妻を奪った者が堕ちる。鉤を体に打ち込まれ木に吊るされ、炎でゆっくりと焼かれる。
![]() 『和字絵入往生要集』より 衆合地獄 |
4 叫喚地獄 ― 殺生、盗み、みだらな行いのほか、飲酒の罪を犯した者が堕ちる
刑期:852兆6400億年
刑罰:獄卒に追い込まれ火が燃え盛る室に押し込められ炙られる。口をこじ開けられ熱した鉄を無理やり飲まされる。
◇主な小地獄
①火雲霧処(かうんむしょ)
他人に無理やり酒を飲ませて笑いものにした物が堕ちる。獄卒に抱えられ、高さ90mにもなる炎の中に投げ込まれる。
②火末虫処(かまつちゅうしょ)
水で薄めた酒や盗んできた酒を売った者が堕ちる。人類を死滅させるほどの恐ろしい404種の病気に苦しめられた上に虫に食われる。
![]() 『和字絵入往生要集』より 叫喚地獄 |
5 大叫喚地獄 ― 殺生、盗み、みだらな行い、飲酒のほか、嘘をついた者が堕ちる
刑期:6821兆1200億年
刑罰: 猛火に包まれ枯草のように焼かれ泣き叫ぶ。ここで受ける苦しみは、等活~叫喚地獄で受けた苦しみの10倍とされる。
◇主な小地獄
①受無辺苦処(じゅむへんくしょ)
獄卒に舌や目を抜かれるが、すぐに再生し、また抜かれ続ける。また刀で体を削られる。これらはすべて嘘をついた報いである。
②受鋒苦処(じゅほうくしょ)
お布施を受けたのに受けていないと嘘をついたり、逆にお布施をしていないのにしたと嘘をついた者が堕ちる。木に縛り付けられ、熱した針で舌
と口を縫い合わせられ泣き叫ぶこともできない。
![]() 『和字絵入往生要集』より 大叫喚地獄
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6 焦熱地獄 ― 殺生、盗み、みだらな行い、飲酒、嘘つきのほか、邪見の罪を犯した(仏教の教えに背いた)者が堕ちる
刑期:5京4568兆9600億年
刑罰:巨大な鉄の串で頭から足までを貫かれ、鉄網の上で串焼きのように焼かれる。あまりの火の強さに、体のあらゆる穴から炎が吹き出す。焦熱
地獄の炎を一粒でも現世に置くとすべてを焼き尽くしてしまうといわれる。
◇主な小地獄
①闇火風処(あんかふうしょ)
仏教の無常の教えを認めず、邪説を説いて回った者が堕ちる。激しい暴風のなかで、亡者の体は粉々になりそこらじゅうに飛び散る。
②分荼梨迦処(ぶんだりかしょ)
「飢えて死ねば天に昇れる」と邪説を説いた者が堕ちる。分荼梨迦とは白い蓮のこと。「この先に分荼梨迦の池があり水も木陰もある」という声 につられ池に入ると、分荼梨迦が燃え上がり焼き尽くされる。
![]() 『和字絵入往生要集』より 焦熱地獄 |
7 大焦熱地獄 ― 殺生、盗み、みだらな行い、飲酒、嘘つき、邪見のほか、尼僧を汚した者が堕ちる
刑期:半中劫(中劫の半分 ※中劫=永遠にも等しい歳月)
刑罰:猛烈な炎の中に落とされ、獄卒に「お前は炎ではなく自身が犯した罪に焼かれているのだ。火を消すことはできてもお前の罪を消すことはで
きない」といって責められる。
◇主な小地獄
①普受一切資生苦悩処(ふじゅいっさいししょうくのうしょ)
尼僧に酒を飲ませてたぶらかした者が堕ちる。剣で体中の皮を剥がれ、そのまま灼熱の地に置かれ、熱鉄を注がれる。
![]() 『和字絵入往生要集』より 大 焦熱地獄
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8 阿鼻地獄 ― 五逆罪(殺母・殺父・殺阿羅漢・出仏身血・破和合僧)を犯した者が堕ちる
刑期:中劫(永遠にも等しい歳月)
描写:阿鼻城という城があり、その四隅には銅でできた巨大な番犬がいて、すべての毛穴から猛火を噴き出していて、その煙は比べるものがないほ
どの悪臭である。獄卒は18匹いる。目が全身に64個あり、上向きに曲がった牙の高さは4由旬(44.8km~57.6km)もあり、その先端から
火が噴き出し、阿鼻城には炎が満ちている。城を囲う壁の間には8万4千匹の蛇と500億の虫がいて、それらが吐き出す火が雨のように降っ
ている。
刑罰:亡者は2,000年かけてここまで落ちてくる。獄卒に口をこじ開けられ、鉄の塊を無理やり飲まされる。獄卒に舌を引き伸ばされ杭を打たれ
る。炎に満ちた城で、さまざまな獄卒からの責め苦を受け、無数の大蛇や虫や、それらが放つ悪臭に苦しめられる。
◇主な小地獄
①鉄野干食処(てつやかんじきしょ)
寺院に火をつけ仏像を焼いたり僧侶を焼き殺した者が堕ちる。雨のように降りしきる鉄の瓦に体を砕かれ、その身を犬に食われる。
②閻婆度処(えんばどしょ)
川を汚染したりして自然環境を破壊した者が堕ちる。閻婆度という巨大な鳥についばまれ、地獄の底に落とされて粉々になる。
※刑期
八大地獄において、1日の長さは一様ではありません。1等活地獄~6焦熱地獄までは、それぞれ六欲天※での寿命を1日の長さの基準としています。
各地獄の基準となる六欲天や刑期をまとめると次の表のようになります。
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これだけではわかりづらいので、一番刑期が短い等活地獄を例に刑期を計算してみます(1年を365日として計算しています)。
等活地獄の基準となる四王天の1日は人間界の50年です。つまり、四王天での1年を人間界の年数に置き換えると、
50年×365日=18,250年となります。
等活地獄における1日は、四王天の500年に相当するので、500年×18,250年=9,125,000年です。
これを基に等活地獄の1年を算出すると9,125,000年×365日=3,330,625,000年となります。
そして等活地獄の刑期は500年なので、500年×3,330,625,000年=1,665,312,500,000年、これが人間界の年数に置き換えた等活地獄の刑期となります。
※六欲天…欲望に束縛されている6つの天界、またそれらに属する神々のこと。
いかがでしたでしょうか。
江戸時代に刊行された『和字絵入往生要集』のイラストとともに各地獄を紹介いたしました。
「地獄占い」は、この『和字絵入往生要集』を使ったオリジナルデザインのおみくじとなっております。
ご観覧の記念にぜひ引いてみてください。
皆さまのご来館をお待ちしております!
<特別展情報>
「地獄の入り口―十王のいるところ―」
・会 期:令和7年7月5日(土)~令和7年9月1日(月)
・開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
・会 場:松本市立博物館 2階特別展示室
・料 金:【特別展単独券】大人:1,100円、大学生等:800円
【常設展・特別展セット券】大人:1,300円、大学生等:1,000円
高校生以下無料
・閉 室 日:毎週火曜日(祝日の場合は翌平日)