Vol.83 浮世絵展関連事業を終えてpart1 R6.2.27 (文責:小林)

現在、松本市立博物館では開館記念特別展第2弾として、「至極の大衆文化 浮世絵 ―酒井コレクション―」を開催中です。会期は、3月3日(日)までとなっておりますので、この機会にぜひご覧ください。

さて、本展では浮世絵が庶民に親しまれた大衆文化であったことを体験していただくため、ワークショップや講演会などの関連事業を開催しました。今回は、前期展示期間中(1月13日~2月4日)に開催したいくつかの関連事業の様子をお伝えします。

 1 遊ぶ浮世絵体験「浮世絵で遊ぼう!」【令和6年1月14日(日)午後2時~午後4時】

浮世絵は、大人だけではなく、子どもたちの間でも楽しまれていました。創意工夫を凝らした数々の「遊べる浮世絵」の内、今回は元祖ペーパークラフトとも言える「立版古(たてばんこ)」を体験していただきました。「立版古」とは、描かれた人や自然万物を切り取り、組み立てて遊ぶ浮世絵です。この講座では、日本浮世絵博物館所蔵の「和田合戦とうろふ」という作品をコピーしたものを使用しました。

特別展で展示中の立版古(完成) ※歌川豊久「和田合戦とうろふ」をもとに製作

特別展で展示中の立版古(完成)
※歌川豊久「和田合戦とうろふ」を元に製作

立版古の制作中の様子

立版古の制作中の様子

まずは、鎌倉時代の和田合戦で活躍した武士たちや背景の木々をパーツごとに切り取っていきます。これが一番難しい工程ですが、参加された皆さんの集中力と器用さは圧巻で、正確に、素早く切り取っていく姿が印象的でした。

続いて、それぞれのパーツを自立させるためのベースを作りました。上手く自立させるため、パネルや厚紙の切れ端を駆使して、それぞれのパーツに合ったベースに仕上げていきます。

最後に、背景の木々と合戦の主人公となる武士たちを思い思いに並べていきます。博物館職員が製作した見本を参考にして作る方もいれば、1対複数人の合戦場面を作る方もおり、参加された皆さんの個性が出ていて、とても楽しかったです。

「立版古」の体験を通して、浮世絵の大衆性の一端に、少しでも触れていただく機会になったかと思います。厚紙に自分の好きな絵を描き、切り取って遊べば、現代版の「立版古」を作ることができますので、ご自宅でトライしてみてはいかがでしょうか。

 

2 和紙の「行燈(あんどん)」作り講座【令和6年1月20日(土)午前9時~正午】

松本市地球温暖化防止市民ネットワーク(通称:エコネットまつもと)の皆さまを講師にお招きして、浮世絵にも描かれることが多い「行燈」作りを通して、環境や浮世絵について学ぶ体験講座を開催しました。冒頭に地球温暖化と浮世絵について勉強した後、落ち葉を使って好きな模様にデザインしたり、可愛らしい絵をあしらって、夜の風情を演出する「行燈」を作り上げました。参加された皆さんが製作された「行燈」は、1月26日(金)午後5時~8時に開催された「博物館のキャンドルナイト」にて展示され、松本市街の夜を照らしました。寒空の中、多くの方々にご来館いただきありがとうございました。

行燈製作中の様子

行燈製作中の様子

キャンドルナイトでの展示風景

キャンドルナイトでの展示風景

3 講演会「浮世絵の魅力と楽しみ方」【令和6年1月21日(日)午後1時30分~3時】

本展覧会で特別協力をいただきました日本浮世絵博物館で学芸員を務める五味あずさ氏を講師にお招きして、浮世絵鑑賞における楽しみ方を中心に、講演をしていただきました。日本浮世絵博物館や同館が所蔵する酒井コレクションについての概要にはじまり、浮世絵木版画、版本、肉筆画という浮世絵の形態や作品それぞれの鑑賞方法、楽しみ方など様々な視点でお話がありました。講演会を通して、浮世絵への興味関心が高まり、一層楽しく鑑賞できる機会になったことと存じます。会場を埋めつくすたくさんの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。

講演会の様子

講演会の様子

4 ワークショップ「浮世絵の絵本を作ろう!」【令和6年1月28日(日)午前9時~11時】

松本市在住で、絵本作家・イラストレーターとしてご活躍されている、まつしたさゆり氏を講師にお招きし、浮世絵風の絵本を作りました。浮世絵は、江戸時代初期、版本(絵入りの本)に描かれた挿絵が、一枚絵として独立し、成立したと言われています。その点で、絵本と浮世絵の関係を切り離すことができません。今回の講座は、現在多くの人々に愛されている絵本の制作を通して、大衆文化・浮世絵の親しみやすさを感じていただける時間になったと思います。

滅多に聞くことができないプロの絵本作家さんのデザインや技法のお話に、参加された皆さんも聞き入っていらっしゃる様子でした。講師の先生が浮世絵に描かれる遊女や歌舞伎役者をもとに描いた線画に、みな思い思いの色を塗り、空いたページに絵本の物語を書いていきます。カラフルな色画用紙とマスキングテープで製本し、素敵な絵本が完成しました。最後に、講師の先生から参加された皆さんの作品を一点ずつご講評いただきました。一人一人の柔軟な発想による絵本の数々を読みながら、みなの笑顔があふれる素晴らしいひと時でした。

絵本制作中の様子

絵本制作中の様子

講師の先生からの講評

講師の先生からの講評

5 浮世絵メイク講座【令和6年1月28日(日)・2月4日(日)午前10時~午後6時】

特別展チケットの半券を、ナワテ通り商店街にある「和装いろは」に持っていくと、浮世絵に描かれる遊女の和風メイクを体験できるという講座を行いました。具体的には、浮世絵美人画の顔出しパネルで写真を撮ったり遊女風の着物を着たり、メイクを体験していただきました。自分が美人画のモデルになることで、当時の浮世絵師に思いを巡らす機会になったと思います。今回体験していただいたような当時の髪型、メイクが反映された浮世絵美人画が、現在の日本のファッション誌に影響を与えている部分もあるかもしれません。

美人画の顔出しパネル

美人画の顔出しパネル

遊女風の着物

遊女風の着物

6 江戸のおもちゃ作り講座【令和6年2月4日(日)午後1時30分~4時30分】

和紙の「行燈」作り講座と同じく、エコネットまつもとの皆さまを講師にお招きして、江戸時代に親しまれたおもちゃを作りながら、環境や浮世絵について学ぶ講座を開催しました。地球温暖化や江戸時代のエコについてのお話を聞いた後、「極楽とんぼ」「からくり屏風」「立体知恵の輪」を製作しました。工作と遊びの体験を通して、楽しく勉強する機会になりました。

江戸のおもちゃ製作中の様子

江戸のおもちゃ製作中の様子

江戸のおもちゃ完成

江戸のおもちゃ完成

以上、特別展の関連事業開催の模様をお伝えしました。次回も、「関連事業を終えてpart2」として、後期展示期間中(2月10日~3月3日)に開催した関連講座の様子をお届けします。