Vol.066 令和の「ぼんぼん・青山様」レポート(R5.8.15 文責:鈴木)
ここ数年間、コロナ禍で地域の行事が思うように実施されない状況でしたが、今年の5月以降、ようやく再開されてきました。こうした中、「松本の夏の風物詩」ともいえる「ぼんぼん・青山様」も今年は各地区で行われました。
―「ぼんぼん・青山様」については、「広報まつもと 2023年8月号」に掲載されていますので、こちらからご覧下さい。
そこで、近所の町会や中央地区で行われた「ぼんぼん・青山様」にご一緒させて頂きましたので、その模様をお伝えします。
1.下横田町(上土町と合同):7月29日(土)
町内の「鯛萬の井戸」から出発して岡宮神社を目指します。神社でお参りをしてから一旦「鯛萬の井戸」に戻って一休み。その後、下横田町会内を一回りしました。青山様のお神輿は高学年の子が4人で担ぎます。「青山様だい、わっしょいこらしょ」のかけ声を聞いた町内の方が外に出てきてお賽銭を下さることもありました。ぼんぼんの女の子は、浴衣を着て薄紙で作った花を髪に飾り、ほおづき提灯を提げた姿で歩きました。ぼんぼんの歌は保護者の方がCDプレーヤで流していました。
下横田町会での「ぼんぼん・青山様」は4年ぶりのため、4年生以下の子は初めてとのことでした。
2.桜町:7月29日(土)(28日(金)と2日間に分けて町内を回ったとのこと)
下横田町の「ぼんぼん・青山様」のあと、別の方角から青山様のかけ声が聞こえてきたため、少しだけご一緒しました。青山様のお神輿は2人で担ぎます。町内の各家々の前で青山様のかけ声に加え、笛や鐘、太鼓を鳴らします。お賽銭をもらうと、「わっしょい、わっしょい」の声とともに、お神輿を担ぎながらその家の前でぐるぐる回っていたのが驚きでした。女の子は法被姿と浴衣姿の子がいて、浴衣の子でもほおづき提灯を持たずに青山様の太鼓を持っている子がいるなど、「青山様優先、青山様・ぼんぼん混合型」でした。
この町会では、コロナ禍の間も2020年を除いて毎年青山様を続けており、コロナ禍の間は、かけ声を出せない代わりに太鼓や鐘などで賑やかさを出していたとのことです。
3.今町2丁目:8月2日(水)
この町会は「青山様」だけを行うとのことで、全員が法被姿で集合しました。町会長さんに案内されながらお神輿を担いで(担ぎ手は2人)町内の家々を1軒ずつ訪ね、家の人が外に出てきてお賽銭を下さると、青山様のかけ声のあと「わーいわーい」と言いながらお神輿を前後に揺すります。お神輿の担ぎ手は最初男の子でしたが、途中で女の子に交替しました。
今町2丁目は、町会内のマンションの子どもが小学生になって人数が増えたため、久しぶりに青山様をやることにしたそうです。このため子どもは全員初めてで、数人の保護者と町会の方の記憶だけを頼りにやることになりました。近所の方からは、「久しぶりに青山様が来てくれて嬉しい」とか「できれば続けてもらいたい」といった声が聞かれました。
4.中央地区:8月8日(火)
「中央地区縁日だよ!全員集合!」に組み込まれるかたちで「ぼんぼん・青山様」が行われました。ぼんぼんに参加する女の子は事前に公民館に集まって、「ぼんぼんの歌」を歩きながら歌えるように練習しました。また、髪に飾る花作りをし、色とりどりの花が出来ました。
当日は四柱神社に集合して、あがたの森文化会館の木下館長から「ぼんぼん・青山様」について教えてもらった後、神主さんにお祓いをしてもらいました。
松本城大手門枡形跡広場で出発式をしてから、縄手通りを抜けて上土町を通り、松本城に向かいました。松本城で記念撮影のあと、西堀、土井尻を経由して大名町を通って桝形跡ひろばに戻りました。松本城では観光客からも注目を浴びていました。「ぼんぼん・青山様」をやったことがない子どもがほとんどでしたが、青山様のかけ声やぼんぼんの歌を頑張っていました。参加した子どもは、縁日(枡形跡広場で開催)の500円券がもらえたので、終わった後は早速かき氷を食べたり、射的で遊んだりしていました。
5.ご一緒させてもらって考えたこと
青山様は町会ごとにお神輿の扱い方が少しずつ違っていて、引き継がれていく中で変わっていったようです。また、男の子の行事である青山様に女の子も加えて青山様だけを実施し、女の子限定のぼんぼんはできない町会もありました。中央地区町会合同ではぼんぼんの形にはなりましたが、歌を歌いながら歩くのは難しそうでした。
道路建設に伴う住民の転出、分譲住宅やマンションの新築に伴う子どもの増加など、町内の人員構成は増減します。また、コロナ禍でここ数年は行事を中止せざるを得ない状況でした。このような環境変化の中で伝統行事を続けることの難しさを感じたとともに、町会役員、保護者、地域住民の皆さんが、工夫を凝らしながら伝統文化を守り続けていこうとする想いに頭が下がる思いでした。
「ぼんぼん・青山様」を今後も末永く続けていくためには、いつからどのような意味で行われたものなのか、そして、松本だけで続いている行事であることなどを説明することが大切であり、博物館としてできることを、町会の方々や公民館などと連携して実施することが必要だと感じました。
6.新博物館の収蔵品(青山様のお神輿)
10月7日(土)に開館する新しい博物館には、昔使われていた青山様のお神輿が保管されています。
今後、「ぼんぼんと青山様」の説明とともに、このお神輿も常設展示室で展示される予定(開館直後ではありませんが)ですので、新しい博物館でぜひご覧頂ければと思います。