学芸員雑記 須々岐水(すすきがわ)神社のお船祭り
須々岐水神社には毎年5月5日に例大祭があります。氏子9町会から、意匠を凝らした華麗なお船が曳き出され、初夏の里山辺(さとやまべ)を賑わせます。
ただし、7年目ごとに一度の御柱祭(おんばしらさい)がある年は、御柱祭が5月5日にありますので、一日早い5月4日に行います。令和5年の今年は卯年で御柱祭でしたので、お船祭りは5月4日でした。
お船祭りとは
須々岐水神社の例大祭で、氏子9町会の保有しているお船が神社に集合します。里山辺の地は、薄川(すすぎがわ)を神様が船に乗って降りてきて拓いたと伝えられ、お船はこの伝説によるものとも、祖先が舟でこの地にやってきたことによるとも言われています。
お船のサイズはそれぞれ違いますが、どれも木造二階建て、前後に幕を張って船の形に似せています。
お船は前日に船倉から出されて組み建てられ、宵祭(よいまつり)が行われます。
お船に乗れるのは町会のお囃子を担当する方々ですが、宵祭では子どもたちが乗せてもらえるそうです。
本祭の朝、各町会を出発して須々岐水神社へと集まります。お船は境内へ引き込まれ、お祓いを受けお囃子を奉納します。
境内では他にも十二名の稚児(ちご)による舞や、幣束(へいそく)をつけた神馬(しんめ)が奉納されるなど神事があります。
長野県宝のお船たち
「里山辺お船祭のお船」9基は、歴史資料として昭和61(1986)年、長野県宝に指定されました。9基とも二階建て、車輪が2輪の山車(だし)です。それぞれ見事な彫刻や漆が施されいます。古くは江戸時代中期にはお船があったと伝承されています。お船の形状など詳細は「まつもとの文化財」をご参照ください。
お船の曳行(えいこう)
朝、お船は町会を出発し、一度、旧山辺学校校舎の西の道路(県道297号兎川寺鎌田線)に集合します。神社の方角を頭に、南から薄町、湯の原、新井、下金井(しもがない)、荒町、西荒町、上金井(かみがない)、藤井、兎川寺(とせんじ)の順に並びます。
旧山辺学校校舎前を行く藤井のお船
お船は車輪が2つのため、前後に激しく揺することができます。派手に曳行して来ると迫力満点。船が大海原を航海しているように見えます。ちなみに、酔い止めを飲んで乗る人も居るとか。
集合したのち、先頭から順に鳥居前に移動します。県道は大きくて平なので、お船は大暴れして進んでいきます。
鳥居前へ向かう下金井のお船
神社の鳥居の前でお祓いを受けたのち、境内へ引き込まれます。狭い鳥居の下を勢いよく進むと、見物客から大きな拍手が起こります。
鳥居を疾走する上金井のお船
境内での神事が終わると、お船は一台ずつお祓いを受け、帰路につきます。
お船は、お祭り以外の日は船倉に仕舞われており、見ることができません。豪華な彫り物をご覧になりたい方は、ぜひお船祭りに足を運んでみてください。
(学芸員:岡野)