学芸員雑記 山辺地域の御柱(おんばしら)祭
山辺地域には、卯(う)年と酉(とり)年(7年目ごと)に御柱を立てる神社があります。
4月29日は入山辺(いりやまべ)の大和合(おおわごう)神社、宮原神社、橋倉諏訪神社、5月3日に里山辺の千鹿頭(ちかとう)社、5月5日には里山辺の須々岐水(すすきがわ)神社で御柱祭があり、5社とも松本市重要無形民俗文化財に指定されています。
全国的には諏訪大社の御柱が有名ですが、諏訪は寅(とら)年と申(さる)年に行われ、松本の御柱の前年です。年は違いますが、山辺の5社も諏訪系の神社です。
須々岐水神社の御柱
旧山辺学校校舎の近くには須々岐水神社があります。須々岐水神社には御柱が4本ありますが、7年目ごとに新調するのは一ノ御柱(いちのおんばしら)と二ノ御柱(にのおんばしら)の2本です。
一ノ御柱は本殿から見て左側(拝殿の南)、二ノ御柱は右側(拝殿の北)に立てます。
氏子は現在10地区あり、一ノ御柱は須々岐水神社のある薄町(すすきまち)が親郷(おやこ)となって全5地区、二ノ御柱は上金井(かみがない)が親郷となって全5地区が担当します。
御柱が立つまで
令和五年卯年の一ノ御柱の場合、次のように進みました。
- 見立(みたて) 2022年8~11月
御柱となる木の選定。 - 手締(てじめ)、節(せつ) 2022年11月
御柱に内定した木の所有者に結納の品などを納める。
節を結納ともいう。 - ねじそ、てこ棒作り 2022年12月
御柱を引く道具を作る。 - 大鳥居注連縄(しめなわ)作り 2023年1月
薄町が7年目ごとに大鳥居の注連縄を作りかえる。 - 綱縒(よ)り 2023年2月
御柱を引く綱を作る。 - 采配(さいはい)とぼんでん作り 2023年2月
斧頭(ゆきがしら)や木遣(きや)り師が 持つ道具を作る。
- 根堀り 2023年3月
御柱の根元を太くするため地面下の根から伐採する。
根があらわになるまで土を掘る。 - 山出し・中出し 2023年3月
御柱の伐採、山から里の御柱置場(おきば)へ
木を引く。 - 御柱を立てる 2023年5月
作業時期はそれぞれの神社ごとに違っており、御柱を前の年に切り出して置場に置いている神社もあります。
御柱の高さ、道具の作り方や担当者など、作法は細かく決まっています。
三之御柱(さんのおんばしら)と四之御柱(よんのおんばしら)
一ノ御柱・二ノ御柱は新しく切り出してきますが、三ノ御柱と四ノ御柱は前回の一ノ御柱・二ノ御柱のうら(先端のほう)が使われ、それぞれ一ノ御柱・二ノ御柱の東側(本殿の南と北)に立てなおされます。前回の三之御柱・四之御柱は根槌(ねづち)に使われます。根槌とは、御柱を立てる際に地面を打って固めるための大きな木槌です。
御柱立(おんばしらたて) (令和5年5月10日追記)
須々岐水神社の御柱立は5月5日に行われました。置場から神社境内まで曳いて行き、木を建てます。表参道(一ノ御柱曳行ルート)、裏参道(二ノ御柱曳行ルート)とも沢山の見物客でにぎわいました。
一ノ御柱は午前7時半に始まりました。御柱が置き場を出発する前に神事と儀式、木遣り師や御柱総代(そうだい)による木遣り唄の奉納があり、その後、神社へと木を曳いていく里引きが始まりました。
午前中に神社の大鳥居前まで運びます。途中で3回、木遣り唄の奉納がありました。
午後は御柱建て位置まで境内を曳いたのち、曳き綱を外す儀式、曳いた木の化粧直しの儀式などした後、木を建てます。以前は「神楽桟(かぐらさん)」と呼ばれる人力のウインチで木を立てましたが、現在はクレーンを使います。
一ノ御柱、二ノ御柱とも、午後4時過ぎに立ち上がりました。
松本市では他にも、神田の千鹿頭(ちかとう)神社、島立(しまだち)の沙田(いさごだ)神社も同じ卯年と酉年に御柱を立てます。やはり松本市の重要無形民俗文化財に指定されています。
(学芸員:岡野)