Vol.090 収蔵資料の紹介「風也焼」( R6.6.25 文責:石井 )
「風也(ふうや)」とは水崎佐次兵衛という武士の号です。風也は犬甘城址(いぬかいじょうし)に花守として常住していた武士でした。
天保13年(1842年)に松本城主戸田光庸(みつつね)が領民から幕府領御預100年の祝賀を受け、その報謝として翌年犬甘城址に桜や楓を植樹して領民に開放しました。これが現在の城山公園(じょうやまこうえん・松本市特別名勝)の起源です。
『東筑摩郡 松本市・塩尻市誌』によると、花守となった風也は城山に窯を構え、楽焼をはじめました。茶器、七輪、コンロ、釣灯籠、壺などを作り、好評を博したそうです。住居、窯は転々としながら2代3代と続き、作った恵比寿や大黒などは飴市の際のこどもの売物にもなったそうですが、4代風也で途絶えました。
当館収蔵の風也焼のうち、松本民芸館創設者の丸山太郎氏寄贈資料を紹介します。
福禄寿とだるまです。だるまは前後と上面に葉を押し付けた跡があります。福禄寿は高さが22.5㎝あります。
郡誌にも記載のある焜炉(こんろ)です。持ち運び可能な小さな炉です。中が段になっていて、つけ外し可能な素焼きの網状のものが付属しています。網状のものの上に炭を置いて使用したようです。
朱色の釉薬が鮮やかな植木鉢です。裏面の刻書は、箱書きによると「一葉庵風也作」と読むようです。