今月の短歌 ~窪田空穂の歌の魅力をご紹介します~

〔2月の歌〕
生家雪景色4

  庭の雪けふあたたかき日かげ吸ひ

      照りふくらめり出でて踏まむか

  (にわのゆき きょうあたたかき ひかげすい
        てりふくらめり いでてふまんか)

                 歌集『冬日ざし』所収

 

 昭和14年の作品。「大雪の後」と題した三首のうちのひとつです。
 昨夜までの雪がやんだ朝。庭一面に降り積もった雪に太陽の光が降り注いでいます。空穂には、雪が日の光を吸って、ふんわりと膨らんでいるように感じられました。

 空穂は思ったのかも知れません。下駄を履いて、誰の足跡もついていない綺麗な雪を踏んでみたいと・・・。
 空穂は雪が好きで、雪の歌も多くあります。空穂64歳、子どものようで心躍る愛らしい歌です。

    木木の雪あさ日に解けぬ清くして賑はしきさまわが眼を去らず

    南(みんなみ)に向へる室(へや)にわがをれば日に解くる雪の中にかも座る

                                          歌集『冬日ざし』所収