今月の短歌 ~窪田空穂の歌の魅力をご紹介します~
【3月の短歌】
花の枝に来ては見下ろす庭雀
さがす物ありて汝れら忙しき
歌集「木草と共に」所収
冬の去らない庭に雀が忙しく餌を求めている
様子詠んでいます。
雀は身を守ることに敏感で、木の枝に来ては地上を
見下ろしまわりを伺っています。
この短歌を詠んだ空穂は80代半ば、足腰も不自由になり足もとがおぼつ かないため歩くことにも注意をするような生活を送っていました。四畳半の小書斎に籠り、ガラス戸の外に忙しく働いている雀の動作を細かく眺めるところに、老をしみじみ感じていることを味わいとることができる作品です。
空穂の書斎の前の空地には、小庭があり石が置かれ木や草が植えられていて老の身の疲れやすい目を遊ばせるのに十分でした。
空穂はなぜ「木草と共に」を刊行したのでしょう・・・
昭和39年、空穂はいわゆる米寿にあたっており、この年
諸友から祝賀の会を開いていただいています。そこで、自分でも自祝のを心持って何か記念になることをしたいと思い、老の心やりに詠んできた短歌を編んだのです。
(米寿の祝賀の会写真)