今月の短歌 ~窪田空穂の歌の魅力をご紹介します~
あご髯の白髪まばらに伸び立ちて
ほしけ薄の穂のごと
第21歌集『木草と共に』
風邪をひいて剃刀をつかわず過ごした日の歌
下句のたとえから察すると、かなり日数が経ていたことがわかります。 それにしても「ほけし薄の稲」は度がすぎているのでは・・・ と息子の章一郎氏も語っています。 残念ですが、どのようなお顔だったのかは今となっては想像するしかありません。章一郎氏もきっとユーモアを添えようと思ったのでしょうと言っています。
空穂の髯は濃くはなく「まばら」と歌にある通りだったそうです。 西洋剃刀を愛用して、石鹸を泡立てて顔に塗り、いつも一人で剃っていたようです。おそらく腕に自信があったのでしょう。
歌をユーモアに詠んでいるこの時は、体調がよくなったと思われます。
『木草と共に』
昭和35年から38年、空穂満83歳から86歳までの4年間の短歌847首がおさめられており、その中の1首です。
空穂も日々少しずつ体の衰えを感じているためか、老境へと向かっていきる空穂の心境が詠まれている作品が目にとまります。