今月の短歌 ~窪田空穂の歌の魅力をご紹介します~

〔1月の短歌〕

 昭和3年初頭の作品。空穂51歳の時の作品です。

 
生活は一に信なり信あらば道おのずから開けゆくべし

(せいかつは いちにしんなり しんあらば みちおのずから ひらけゆくべし

                                       歌集『青朽葉』所収

02-44

 この歌は第11歌集「青朽葉」に収められています。「年加はれる子らを見て」と題する一連3首の中の1つです。20歳の長男章一郎、15歳の長女ふみに対して、さとすように伝えています。
 歌の意味は、「どのような時代になっても、生きていく上で大切なものは信である。その信があれば、生きる道は必ず開けていく」と正に歌の詞通りです。これは、空穂が自身の半生を振り返り、学んできたことをこれから世にでていく子どもたちに伝えようとしたものです。価値観が多様化し、多くの情報が溢れている現代においても、ぐっと心に響く歌であり、特に若い人たちには心に置いてほしい歌のひとつです。
 若い頃から空穂翁と呼ばれていた空穂の作品には、掲歌のように人生訓として味わえるような内容のものも多くあります。二首ほどあげてみたいと思います。


もろき器いたはるに似ていたはれと古人も教えけり君 (濁れる川)

人の為に人は生まれずその人をよしとあしきとわが為にいふな (鏡葉)

 
 空穂の実感から生まれたたくさんの人生訓は、現代の私たちの心にも響き、多くの事に気づかせてくれます。令和4年、新しい年がスタートしましたが、空穂の歌に学びながら、実り多き1年になればと願っています。