今月の短歌 ~窪田空穂の歌の魅力をご紹介します~

〔10月の短歌〕

男体の山むらさきに秋ぞらにうねりのぼりて空のさやけき
(なんたいの やまむらさきに あきぞらに うねりのぼりて そらのさやけき)

                                       歌集『鳥声集』所収

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空穂 34歳頃の写真

 この歌は第5歌集「鳥声集」に納められています。大正4年の秋、39歳の空穂は女子美術学校の講師として、修学旅行に加わり日光へ行きました。その時に、戦場ヶ原で詠んだ一首です。山全体が紫色に映え、秋空に向かってそびえ立つ男体山の姿を印象深く詠んだ歌です。「うねりのぼりて」に力量感があります。
 空穂は、明治44年から大正4年までの5年間、家計を支えていくために、この女子美術学校で講師として、国語と英語を教えていました。大正5年からは、読売新聞社に入社し、身の上相談欄を担当しました。

 

 

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「男体の」の掛け軸

 現在記念館では収蔵資料公開展を開催しています。公開展では、空穂の軸を13点公開しており、その中に掲出の短歌の軸もあります。(左写真)他にも、中学校の教科書に掲載されたことのある「鳳仙花ちりこぼるれば小さき蟹鋏ささげておどろき走る」などの有名な短歌の軸も展示しています。その他にも、空穂と関係のある窪田五雲の日本画や島秋人の遺愛品なども展示しています。10月31日まで開催していますので、ぜひ足をお運びください。お待ちしています。

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収蔵資料公開展の様子