今月の短歌 ~窪田空穂の歌の魅力をご紹介します~
たけ高き紫苑のつぼみ色づきぬ
赤とんぼの来てやとまらむ
大正10年 「青水沫」
歌集 青水沫 の「病後」と詞書の中にある歌の一つです。 紫苑(しをん)の細かい蕾が紫に色づいているのに気づきやがて赤とんぼが来る であろうと、ふと思った心の歌です。 病気が癒え、さわやかな秋の到来しているのを感じた喜びで、子供のように素直に味わう心の弾みを表現している歌です。
※詞書の病後とは、この時代スペイン風邪が流行、空穂も第8歌集「朴の葉」にて「流行感冒に羅る」という歌を載せているので、もしかしたら病後の病とはスペイン風邪のことかもしれません。
窪田空穂は松本市和田の農家に生まれ、幼い頃から野の草花に親しみ、晩年期はより多くの植物の歌を詠んでいまます。ふつうの人は植物を草花とか草木と呼びますが、空穂は「木草(きぐさ)」と独特な表現をします。平成25年には「ふるさとの草花画展」を窪田空穂記念館で開催し 空穂が植物を詠んだ短歌をパネルにしたものと柴野武夫氏が描いた植物写生画をコラボした展示を多くの方に見ていただきました。
展示後・・多くの方からの反響があり「窪田空穂記木草」という一冊の本になっています。