*コラム*【バンカラ日記/2日目】日本語?ドイツ語?旧制高等学校スラング集
皆さんはスラングという言葉をご存じでしょうか。
【スラング】とは ある階層・社会だけで用いる言葉。卑言。俗語。という意味です。
若者言葉やギャル語もスラングの一種といえるでしょう。インターネットスラングと呼ばれる掲示板やSNSでのみ使われる言葉もあったりしますね。
実はこのようなスラングは旧制高等学校にも存在していたんです!
特徴としてはドイツ語を元にした言葉が多いです。これは第一外国語、第二外国語としてドイツ語を学ぶ学生が多かったことが影響しています。旧制高等学校へは同年代男性のおよそ1%しか入ることができませんでした。ドイツ語を学び、それを使用するということが一種のエリートの証だったのだと思います。
それではさっそく紹介していきましょう。
明日から使える旧制高等学校スラング
■メッチェン 【独】 若い女性のこと。メチ公とも。
■バッチェン 【日+独】 メッチェンの派生。妙齢とは言えない女性のこと。
■シャン 【独】 美人。
■ウンシャン 【独】 シャンの反対語。
■単騎遠征 【日】 一人で食堂などにいくこと。
■でも秀 【日】 入学試験では優秀だったが、入学後成績不良の者をいう。あれでも秀逸。
■有能だ 【日】 すてきだ。「夕飯は有能だった」というふうに使った。
■ボリュームリッヒ【英+独】 分量が多いこと。
■ドッペリ 【独】 留年すること。
■裏表やる 【日】 ドッペリして同じ学年を2回やること。旧制高等学校では1学年につき1回留年す
ることができた。ドッペリと進級を手際よく繰り返せば最高6年在学することが
出来た。進んで6年在学した生徒もいたとか。
■男爵、伯爵、公爵【日】 第1学年留年した者は「男爵」第2学年も留年した者を「伯爵」第3学年も留年
した者を「公爵」と畏敬された。
■凱旋将軍 【日】 6年間いてもついに卒業できない(退学)者をこう呼んだ。
■ジー 【独】 ドイツ語の「あなた」という意だが、日本語の動詞と一緒に用いて、依頼を表す
ために用いられた、「貸してんジー」は貸してください。「待ってんジー」は
ちょっと待ってください。となる。
■ゲルピン 【独+英】 ゲルト(お金)がピンチになった状態。素寒貧。ゲル欠とも。
■ナイジャン 【日+仏】 ダルジャン(お金)と「無い」とをくっつけた言葉。お金が無いこと。
■カラマイ 【日】金無しで散歩に出かけること。「からっぽのふところで舞い戻る」の略。
■ゲルタン 【独+英】 ゲルトタンクの短縮語。ゲルピンの反対語。
■トリンケン 【独】 飲酒。
■リーベ 【独】 恋人。 愛する人。
■ジンゲル 【独】 芸者。
■ハルプ 【独】 半玉(芸者見習い)。ジンゲルやハルプを呼んで遊ぶことをジンゲル・アップと
言った。
■ベガッテン 【独】 性行為。「ベガる」という風にも使った。
■シュライベン 【独】 自慰行為。元々は「書く」というドイツ語だが、「書く」と「かく」をかけている。
■ガチ勉(ガリ勉)【日】 寸暇を惜しむ、勉強第一タイプ。試験前には重宝がられたが、その割に尊敬はさ
れなかった。
■蝋勉 【日】 消灯後、蝋燭をともして勉強すること。
■ヅクマン 【日+英】 精力、根性のある男。づくは長野県の方言で、「物事に立ち向かう気力」の
こと。松高生が使っていた言葉。
■エッ(エッエッ)【日】 「悦」の意味。極めて喜ばしい状況で発する語。重複により強調されるらし
い。「一限は休講だってよ!」「エッ!!」
「二限も休講だってさ!」「エッエッ!!」
参考文献
竹内洋(1999). 日本の近代12 学歴貴族の栄光と挫折 中央公論新社
水野潤一(1984). 旧制高校めし炊き青春譜 東洋経済新報社
正橋剛二(1991). 増補北辰詞華集 桂書房
個人的には単騎遠征がお気に入りです。今のご時世、ひとりでご飯に行くことは多いと思うので使うチャンスがあるかもしれません。
ちなみに私、高山はなかなかのボリュームリッヒです(85キロ)。がんばって痩せます…
以上で旧制高等学校スラング集の紹介を終わります。
次回は高校生の芸者遊びについて紹介していきます。お楽しみに!