☆化石新聞第9刊☆

クジラは昔陸を歩いていた?

こんにちは!今回は化石館の主役「シガマッコウクジラ」のご紹介です!おっとその前に…クジラの種類や進化についてお話します。ここで皆さんに質問です。「クジラは昔陸を四足で歩いていたのを知っていますか?」知っていた方はクジラ通です(笑)実はクジラは今からおよそ5千万年前、陸を四足で歩いて生活していました。この頃のクジラ化石として、およそ4900万年前に生息していたパキケタスという化石がパキスタンで発見されています。この化石を見ると、パキケタスがしっかりとした四肢を持っていることが分かります。このような初期のクジラ類は、学術的にムカシクジラ類というグループに属します。

クジラの進化

化石館に展示中のパネルより抜粋

クジラのメガ進化

陸上で生活していたムカシクジラ類はやがて日本列島の誕生や海流の変化によって水中で生活するようになりました。ムカシクジラ類が絶滅するとともに、現在生息する2種類のクジラ類に進化しました。この2種類とは、口に歯が並ぶハクジラ類とクジラヒゲを持つヒゲクジラ類です。ハクジラ類の代表的な例は、水族館でよく見かけるイルカやシャチなどの比較的小型のグループです。ヒゲクジラ類の代表的な例は、世界最大のシロナガスクジラで、大きいもので体長35メートルに達するとも言われています。テレビなどでクジラを見かけたら、ヒゲクジラかハクジラかよーく観察してみて下さい。

クジラヒゲ写真

化石館に展示中のクジラヒゲ

長野県天然記念物「シガマッコウクジラ」

それでは、いよいよ化石館の主役「シガマッコウクジラ」をご紹介します。シガマッコウクジラは、およそ30年前に、地元の小学5年生(当時)が発見しました。最初は、小学生が「何かの歯の化石だろう」と大切に保管していた化石が、その後の発掘調査で大発見になりました。なんとなんと、頭から尻尾まで全身のクジラの化石が発見されたのです。このクジラ化石は、およそ1300万年前に生息したマッコウクジラ類の化石であると判明し、世界最古のクジラの全身骨格化石として、長野県の天然記念物に指定されました。松本市民の皆さんは、世界最古のクジラの化石が松本にあるんだぞと是非自慢して下さい。こんな貴重なシガマッコウクジラですが、最大の特徴があります。それは、上あごと下あごに整然と並ぶバナナ状の強靭な歯です。口だけを見ると、肉食恐竜さながらです。現在のマッコウクジラも下あごに小さな歯がありますが、シガマッコウクジラほどしっかりとしていません。対するシガマッコウクジラはその強靭な歯を使って、トドやアシカといった大型の哺乳類を食べたり、巨大なサメ「メガロドン」と戦っていたそうです。様々な研究者の間では、シガマッコウクジラは当時の長野県の海(フォッサマグナの海)で最強の動物だったと言われています。分かりやすく言えば、現在の百獣の王ライオン、鬼滅の刃で言えば鬼狩りの祖:継国縁壱みたいな存在だったということです。シガマッコウクジラといったら、「世界最古」「最強」、この二つのキーワードは是非覚えて下さいね。
     シガマッコウクジラ頭部写真