今月の短歌 ~窪田空穂の歌の魅力をご紹介~

歌人として活躍した窪田空穂は、生涯で1万4千首以上の短歌をのこしています。空穂の短歌は日常の一瞬を切り取ったものが多く、時代を超えて私たちの心に染みわたります。
窪田空穂記念館職員が選んだ今月の短歌をご紹介します。

【窪田空穂記念館】スタンドの 

スタンドの灯かげの狭くわれ囲み
       夏の夜のやみ深さ知られず
(スタンドのひかげのせまくわれかこみ
          なつのよのやみふかさしられず)
               歌集『卓上の灯』所収

 

 

歌集『卓上の灯』(1955年刊)に、「暑熱甚し」と題して収められた九首の一つです。
卓上のスタンドが狭い範囲を明るく照らしており、その周りには、限りもない深い闇が広がっていると詠んでいます。
他の季節と比べても一段と暗く感じられる夏の夜の闇。その中、電灯が照らすわずかな空間に自分はひとり座っている。限りなく広い天地の間に生きている微小な存在の自分に思いが及んでいたのでしょう。

ところで、この写真の机は空穂が実際に使っていたものです。愛用の筆記用具、ルーペ、時計、Peace缶(たばこ)などが置かれています。面白いのは、トランプがあることです。空穂はトランプ占いが好きでよくやっていたといいます。

 【窪田空穂記念館】スタンドの(色紙)

窪田空穂記念館では、この短歌の直筆色紙を7月末まで展示しています。
直筆だからこそ感じ取れる空穂の想いを、ぜひご覧ください。