今月の短歌 ~窪田空穂の歌の魅力をご紹介します~

 〔12月の歌〕


冬の木立1

  冬空の澄み極まりし青きより

           現はれいでて雪の散り来る

  (ふゆぞらのすみきわまりしあおきより
           あらわれいでてゆきのちりくる)

                  歌集『泉のほとり』所収

 

大正6年、空穂40歳の作品。「雪きたる」と題して詠まれた二首のひとつです。

冬の空を仰ぎ見てたたずむ空穂の姿があります。
寒風が吹きつのるにつれて、空はいよいよ青く澄みわたり、遠く深く感じられるようになります。その青い空から雪が舞い降りてくるという珍しい情景を詠んでいます。強い風が遥かかなたの雪雲から雪を運んでくるのですね。青い空も白い雲も清浄な美の極致として見る者を楽しませています。
言葉の調べが心地よく、今年の初雪の日には口ずさんでみたくなるかもしれません。

  吹く風のふきのつのりに天つ空いよいよ澄みて遥かなるかな   (歌集『泉のほとり』所収)