今月の短歌 ~窪田空穂の歌の魅力をご紹介~

歌人として活躍した窪田空穂は、生涯で1万4千首以上の短歌をのこしています。
空穂の短歌は日常の一瞬を切り取ったものが多く、時代を超えて私たちの心に染みわたります。
そんな空穂の短歌を「今月の短歌」として毎月ご紹介します。

〈6月の短歌〉

 松本城高山のかこめる空の真中占め
       五層さやかに深志城立つ

(たかやまのかこめるそらのまなかしめ
        ごそうさやかにふかしじょうたつ)
                  (歌集『木草と共に』所収)

 
昭和38(1963)年、空穂86歳のときの短歌です。
「松本市を想ふ」と題してまとめた7首の内の一首で、信州の山々に囲まれた空の真ん中にたつ松本城(深志城)を思い起こして詠んでいます。
松本市和田出身の空穂は、23歳から東京に住みますが度々松本にも帰省しています。最後の帰省は77歳のときで、城山公園に空穂の歌碑がたてられ、その除幕式のための帰省でした。この歌を詠んだのはそれから約10年後。この頃は病に伏せっていたり、若いころを思い出しての歌もあったりと、いろいろな面で故郷を思い出し自分を励ましていたのかもしれません。「さやかに」とは「さわやかに」や「はっきりと」という意味があります。今も昔も、そしてどんな状況でも”さやかに”そこにたっている松本城。この短歌をよむと、松本城は変わらないその姿で私たちを励ましている気がしてきます。

この短歌の空穂直筆色紙を、窪田空穂記念館にて6月末まで展示しています。
直筆だからこそ感じ取れる空穂の想いを、ぜひご覧ください。