国宝旧開智学校校舎で明治時代の唱歌を再現してみました!
国宝旧開智学校校舎で活躍中のボランティアガイドの方にお願いして、明治時代の開智学校で歌っていた唱歌を再現してもらいました。その様子を撮影した動画は下記からご覧いただけます。
松本市公式YouTube 「国宝旧開智学校校舎で明治時代の唱歌を再現してみました!」はこちら
ここでは、「国宝旧開智学校校舎で明治時代の唱歌を再現してみました!」内で歌っている唱歌について紹介します。
1 虫のこえ
作詞・作曲者不明
明治43年(1910)発表
『尋常小学読本唱歌』で発表されました。虫の鳴き声を表した擬声語が多様された楽しい歌です。昭和7年(1932)の『新訂 尋常小学唱歌』において、2番の歌詞の「キリギリス」が「コオロギ」に変更されました。
「小学校唱歌科教材集」(開智学校作成)に収録されている「虫のこえ」の楽譜では、2番の歌詞は「コオロギ」となっています。この資料の中表紙には、大正15年(1926)作成と書かれています。「虫のこえ」の楽譜だけ昭和7年以降に差し替えられたのか、従来言われているより前から歌詞の変更が行われていたのか、よくわかっていません。
2 村祭り
作詞者不明、作曲:南能衛
明治45年(1912)発表
『尋常小学唱歌(三)』で発表されました。太鼓や笛によるまつりばやしの音色が歌詞になっており、とてもにぎやかな感じがする歌です。昭和17年(1942)と戦後の2度歌詞が変更されています。
3 荒城の月
作詞:土井晩翠、作曲:滝廉太郎
明治34年(1901)発表
東京音楽学校蔵版『中学唱歌』で発表された、日本を代表する唱歌です。いつの世も変わらない月に対し、栄枯盛衰を繰り返す人の世の無常を歌っています。作詞者は出身地である仙台や会津若松の城を、作曲者は父親の出身地である大分県の城をイメージして作ったと言われています。
4 二宮金次郎
作詞・作曲者不明
明治44年(1911)発表
『尋常小学唱歌 第二学年用』で発表された、二宮金次郎(尊徳)の人生をたたえる歌詞が特徴的な唱歌です。二宮の生き方は、子どもたちがお手本にすべき理想的な姿とされていたので、多くの学校に二宮金次郎の像が設置されていました。戦後、二宮の人生が必ずしも模範とされなくなったことから、像も少なくなり、この唱歌も次第に歌われなくなっていきました。
5 天長節
作詞:黒川真頼、作曲:奥好義
明治26年(1893)に制定された「祝日大祭日儀式唱歌」の一つに挙げられた唱歌です。天長節の祝賀式で歌われました。天長節とは天皇の誕生日を祝う祝日です。
6 勅語奉答(正規版)
作詞:勝安房(勝海舟)、作曲:小山作之助
明治26年(1893)に制定された「祝日大祭日儀式唱歌」の一つです。教育勅語を扱う儀式の際に歌われました。儀式中、省略することも可能であったようです。また、その難解な内容から、後に簡略化した歌詞による簡易版が作られました。
作詞は勝安房(有名な勝海舟です)、作曲は小山作之助です。小山作之助は、明治31年に完成し、現在も歌い継がれている開智学校の校歌を作曲した人物です。
7 勅語奉答(簡易版)
作詞:中村秋香
明治26年に発表された勅語奉答が難しかったため、歌詞の内容を簡単にした簡易版です。多くの学校では、こちらの簡易版を歌っていたと思われます。
8 ふるさと
作詞:高野辰之、作曲:岡野貞一
大正3年(1914)発表
『尋常小学唱歌(六)』で発表されました。作詞者の高野辰之は長野県飯山(旧豊田村)出身であり、高野自身の郷里での生活をもとに作詞したと考えられています。
【参考文献】
石井昭示『唱歌の散歩道-日本人の心のふるさと-』清流出版株式会社、2006年
村松直行『童謡・唱歌でたどる音楽教科書のあゆみ-明治・大正・昭和初中期-〈普及版〉』和泉書院、2019年